2021年04月11日

来るんですか 来ないんですか 月組 「ダル・レークの恋」


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去るものあれば来るものありではないけれど、珠城りょうさん去りし後の月組トップコンビに決定した月城かなとさん&海乃美月さん主演公演。この公演上演中はまだ発表前でしたが、もちろん決まっていたでしょうから、プレ・プレお披露目公演といったところでしょうか。

菊田一夫さんが書き下ろし、春日野八千代さん演出・主演で1959年に初演された作品。
月組は3つのグループに分かれての公演(「幽霊刑事」と「美園さくらミュージック・サロン」とこれ)でしたが、月城さんによくぞこの演目持ってきたなと、プロデューサーに感心することしきり。


宝塚歌劇月組公演
グランド・ミュージカル 「ダル・レークの恋」
作: 菊田一夫
監修: 酒井澄夫
潤色・演出: 谷貴矢
作曲・編曲: 太田健  青木朝子  西村耕次  入江薫  鞍富真一
振付: 羽山紀代美  御織ゆみ乃  若央りさ  港ゆりか  百花沙里
殺陣: 清家三彦   装置: 國包洋子   衣装: 加藤真美
出演: 月城かなと  海乃美月  夏月 都  千海華蘭  楓 ゆき  
夢奈瑠音  蓮つかさ  佳城葵  蘭 尚樹  風間柚乃  彩音星凪  
礼華はる  きよら羽龍  詩ちづる/梨花ますみ ほか

2021年3月20日(土) 11:30am シアター・ドラマシティ 9列上手
(上演時間: 3時間/休憩 30分)



物語の舞台はカースト制度の色濃い時代のインド最北部カシミール。
ベナレス領主マハ・ラジア チャンドラ・クマール(千海華蘭)の孫娘カマラ(海乃美月)は避暑に訪れたダル湖で騎兵大尉ラッチマン(月城かなと)と恋に落ちますが、農民出身のラッチマンとの身分の違いにより周囲に反対され、祖母インディラ(梨花ますみ)の命令もあってラッチマンに心ならずも別れを告げます。そんな折、ラッチマンがヨーロッパで結婚詐欺・宝石泥棒などを働いた犯罪者ラジエンドラだという嫌疑がかかり、クマール一族に呼び出されたラッチマンは、「自分がラジエンドラだ」と認めます。ラッチマンの逮捕で彼とカマラとの交際が明るみに出れば一族の名誉が傷つくと恐れたインディラは、ラッチマンを逃がす代わりにこの国を出て、自分たちとの関係を一切口外しないよう要求します。ラッチマンはその代償として、最後にカマラとの一夜を要求、一族のためその条件を受け容れたカマラをダル湖へと連れて行きます・・・。


身分違いの恋、心と裏腹の愛想づかし、父と息子の確執、実は・・などんでん返し、といかにも古典的なメロドラマ-と感じるのは、今、私が観ているからで、62年前の初演のころは“古典的”ではなかったのかな?
「霧深きエルベのほとり」でも感じたのですが、丁寧な言葉づかいというか時代がかった口調が独特で、これが菊田一夫作品なんだなという感じ。

サイドストーリーとして出てくる、カマラの妹 リタ(きよら羽龍)とペペル(風間柚乃)の恋。
「いや、ラッチマンよりペペルの方がよっぽど胡散臭いやん。姉妹揃ってオトコを見る目ないのね」思ったらその通りだった訳ですが、リタが騙される危機を救うのがラッチマンで、ペペルこそラジエンドラで、ラッチマンはベンガルの領主マハ・ラジアの息子だったという展開は、よくできているというかでき過ぎというか。ラッチマンのスーパーヒーローぶりが際立っています。

しかしながら、“身分違い”という障壁がなくなり、カマラが手のひらを返したように「愛しています」とラッチマンに告白してめでたしめでたしのハッピーエンドとはならず、深く傷ついたラッチマンの心は戻らず、カマラを拒絶して去っていく・・・多分本心はまだカマラを愛しているのだろうけれど彼の誇りがそれを許さないのであろう、という苦い結末は好みでした。


宝塚の中でも正統派すぎるくらい正統派の男役・月城かなとさんに、このクラシカルな作品とラッチマンはとてもよく合っていました。
時に怜悧にさえ思える際立った美貌にどこか孤独の影もあって、悲しみを湛えているようにも感じる瞳。
ノーブルだけど情熱的で品と野性味を兼ね備えたラッチマン。何も言わずに立っているだけで目を惹きつけて、ターバンや軍服の似合いっぷりハンパない。そしてそのターバンをはずす時の色気ダダ洩れっぷり。
あんな目をして自信たっぷりに「来るんですか 来ないんですか」と言われて行かずにおれる女性がいるでしょうか(いやいない)。

カマラは難しい役だなぁと海乃美月さんのカマラを観ていて思いました。
いかにも苦しい胸の内を押し隠して、ラッチマンを愛しながらも冷淡に愛想づかしをするところや「来るんですか 来ないんですか」とラッチマンに言われて、理性では拒絶しながらも本能が応じてしまう切なさはとてもよかったですが、ラッチマンの本来の出自がわかった途端に「愛しています」となって、ラッチマンを探し歩いてパリの街を彷徨うとかちょっとイタイ女すぎて無理~となりました。カマラのキャラクターは海乃美月さんの責任ではないけれど、その嫌悪感を取り除く演技を見せてほしいところです。
歌はもちろん、ダンスもお得意な海乃さん。ダル湖の腰布クルクル あれぇ~なダンス(観た人はわかる)は見応えありました。

ペペルは東京と大阪で役替りで風間柚乃さん(東京は暁千星さん)。
登場の時から胡散臭さ全開でさすがの上手さ。パリのナイトクラブでもラッチマンと堂々と渡り合っていて頼もしい。
ダンスシーンは暁さんより少し難度を落としていたと聞いて、ありちゃんのペペルも観たかったなぁと思いました。

その風間さんが東京で演じたカマラの従兄弟 クリスナは夢奈瑠音さん。
とてもよかったです。
いかにも貴族らしい品のよさと立ち姿の美しさ。歌も聴かせてくれました。
それにしてもるねくん小顔。

千海華蘭さんは相変わらずいい味出してるし、蘭尚樹くんと詩ちづるちゃんの「あっつあつ」カワイイし、彩音星凪くんも礼華はるくんもそれぞれ活躍の場を与えられて・・・と観ていたら、王城の門前の広場の群舞だったか、センターで歌い踊る男役がとても上手くてカッコよくて「誰?」とオペラあげたら蓮つかささん。
「そうだ~、まだれんこんもおったやん。月組ほんとに層厚いな。3分割しててこれだもんな」と驚いた次第。
ちなみに、蓮つかささんその前のダル湖畔で酒場の亭主として出演されていたらしいのですが気づかず。2幕ではラッチマンパパのマハ・ラジアとして、千海華蘭さんとともにいい味コンビでした。


フィナーレは、風間柚乃+娘役のダンス → 海乃美月+男役のダンスからの月城かなと登場して総踊り → 若手男役・娘役のダンス → 月城かなと・海乃美月 デュエットダンス(歌手は風間柚乃)という流れ。

若手男役・娘役の場面(振付:港ゆりか)が特によかったです。
みんなイキイキ溌剌。ここぞとばかりに若さのパワーを感じました。
男役群舞もカッコよかったですが、月城さんが皆と同じように腰を落とせていないところがあって、まだ腰をかばってるのかなとちょっと心配なところではあります。

が、芝居に歌にダンスに、路線スターに別格に、本当に人材豊富で充実の月組。
次の大劇場公演も楽しみです(珠城さんとのサヨナラは寂しいけれど)。


カーテンコールの月城かなとさん。
「~ラッチマン」と語尾につけるのがこの公演中の her ブームだったようで、この日は「帰ったら、手洗い うがい ガラガラッチマン」でした



プログラムの暁千星くんのプロフィール写真がどえらくカッコいいのでやっぱり東京公演も観たかったな のごくらく地獄度 (total 2232 vs 2235 )



posted by スキップ at 23:09| Comment(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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