
8月16日に退団する月組トップスター 珠城りょうさんのラスト前 プレサヨナラ公演。
有栖川有栖さんの同名小説が原作で、ミステリーはもちろん、恋あり笑いあり涙あり。
楽しく拝見しましたが、演出がいかにも石田先生だなぁと思って観ていたら、ラスト近くで珠城りょうさん扮する神崎が歌う
人生は舞台
一度上がった幕はいつか必ず下りるもの
自分の去り行く花道を俺は飾れたのだろうか
を聴いて胸がいっぱいになって落涙。
まさかダーイシに泣かされるとか・・・(いや、珠城さんに、です)。
宝塚歌劇 月組公演
「幽霊刑事 ~サヨナラする、その前に~」
原作: 有栖川有栖
脚本・演出: 石田昌也
作曲・編曲: 手島恭子
振付: 平澤智 衣装: 加藤真美
出演: 珠城りょう 鳳月 杏 光月るう 紫門ゆりや 白雪さち花
輝月ゆうま 晴音アキ 朝霧 真 英かおと 天紫珠李 結愛かれん
蘭世惠翔 白河りり/京 三紗 汝鳥 伶 ほか
2021年3月11日(木) 3:30pm 宝塚バウホール 5列上手
(上演時間: 2時間45分/休憩 25分)
物語: 巴東署の刑事 神崎達也(珠城りょう)は同僚の刑事 森須磨子(天紫珠李)との結婚を控えていましたが、ある日突然、上司の経堂芳郎(光月るう)に射殺されます。殺された理由に全く心当たりがない神崎は、成仏できず幽霊となってしまいますが、母親(京三紗)もフィアンセの須磨子にも自分の姿が見えない中、イタコの血を引く霊媒体質の警察学校同期の刑事 早川篤(鳳月杏)だけは神崎の姿が見え、声も聞こえます。幽霊刑事と霊媒刑事の2人がタッグを組んで事件の真相解明に乗り出します・・・。
事件の真相解明というミステリーに、神崎と早川の友情、愛する息子や婚約者を突然亡くした母 比佐子や須磨子の思い、神崎と同様にこの世に思いを残して成仏できずにいる雲井光雄老人(汝鳥伶)や聾唖の少女 愛ちゃん(白河りり)の物語、さらには上司の経堂と妻 保美(蘭世惠翔)と殺された新田克彦刑事(紫門ゆりや)の三角関係まであって、盛りだくさんなストーリー。巴東署の神崎を取り巻く人々も多彩です。
原作未読なのでどこまで脚色されているのかわからないのですが、原作に出てきたエピソードは網羅されているらしいので、それらをフィナーレ含めて2時間45分にまとめ上げて、サヨナラムードも織り込んだ石田先生はさすがベテランの手腕。
原作は2000年に発表されたということですが、多分時代設定も原作どおりなのかな。
携帯電話はガラケーだし、アテネオリンピック(2004年)なんて言葉も出てきましたが、え~っとなったのは霊が見えるという話の流れで「丹波哲郎や冝保愛子じゃあるまいし」と誰かが言ってたこと。どんな昭和やねん!と心でツッコミました。多分客席の若いお嬢さんがたは誰も知りませんよね(私はもちろん知っていますが、何か?)
ミステリーとしては、結構早い段階で「このメンバーだと犯人はまゆぽん(輝月ゆうま)しかいないじゃん」とわかってしまうのは、宝塚のスターシステムの弊害かな。
まぁ、私はそんなひねくれた見方をしてしまったのですが、女泥棒の白雪さち花さんや、副署長として赴任してきた漆原の晴音アキさん、ガンマニアの刑事 佐山の英かおとさんなどがそれぞれ怪しいかも?と観る者をミスリードしようとする名演技も楽しかったです。
珠城りょうさんは、現代もののスーツやトレンチコートが本当によくお似合い。
熱血漢で温かい心を持った青年もハマっていました。
事件が解決することは、神崎が幽霊でなくなってこの世に別れを告げることになるのですが、その最後の時に天国へ行ける2つの質問
お前は幸せに生きたか
お前は誰かを幸せにしたか
に「はいっ!」と晴れやかに答える姿に宝塚での珠城さんが重なります。
そして冒頭に書いた歌詞です。泣くよね。
もう一つ、神崎が須磨子と初めてカラオケに行った時に歌った曲が「切手のないおくりもの」で、劇中でも歌われるのですが、
わたしからあなたへ この歌を届けよう
広い世界にたったひとりの 私の好きなあなたへ
これもね~(涙)
早川篤の鳳月杏さん。
神崎にとって心身ともに「相棒」と言える人物で、「自称ではない相手役」の鳳月さんにピッタリ。
眼鏡で飄々とした雰囲気はちなつさんのこれまでのレパートリーからは珍しい役どころですが、とても楽しそうに演じていらっしゃいました。神崎の思いを須磨子に伝える時の切なそうな表情がひと際印象的で、は~、ちなつ好き

須磨子の天紫珠李さんは上背もあって刑事という役柄にも、珠城さん神崎の相手役にもお似合いです。
お芝居も歌も遜色ないのですが、何だろ?このいつもと同じ感は。ポテンシャルあると思いますので、もう一皮むけてジャンプアップしていただきたいです。
神崎のお母様の京三紗さん、妹の結愛かれんさん、女泥棒の白雪さち花さん、副署長の晴音アキさん、経堂の妻の蘭世惠翔さん、愛ちゃんの白河りりさんと娘役さんが活躍する役が多かったのも〇。
結愛かれんちゃんの亜佐子はずっとおなかが大きい妊婦さんで、「あの妹 妊婦さんにする必要あったの?原作がそうなのかな?」と原作読んだ友人に聞いたらそうではないということでしたが、フィナーレのパレードではその亜佐子さんが乳母車押して赤ちゃん抱いて出て来て「あ、生まれたんだ~」とちょっとハッピーな気分になったので、ここでもまんまとダーイシにヤラレたのかな(笑)。
結愛かれんちゃんはオープニングの「魂のカタルシス」に黒天使みたいなカルマ女で出ていてその美貌に目が惹きつけられました。
雲井老人の汝鳥伶さんをはじめ、光月るうさん、紫門ゆりやさん、輝月ゆうまさんと男役さんたちはみんな上手くて、やっぱり月組はお芝居上手い人多いなという印象ですが、今回ひと際爪痕を遺したのは英かおとくんではないかしら。今回あのビジュアルでうーちゃん堕ちした人が何人もいると聞きましたが、納得のカッコよさでした。ダーティハリーに憧れていてワイルドでちょっとやんちゃな感じもいいよね。
フィナーレは、紫門ゆりや・結愛かれん・蘭世惠翔 3人のダンスから始まり → 鳳月杏センター群舞 → 珠城りょう加わり総踊り → 複数組カップルのダンス(珠城さんのペアは天紫珠李さん) → 男役群舞 → 珠城りょう一人残る という流れ。
男役群舞 珠城さんはもちろん、鳳月杏さんのカッコよさ、色っぽさに目が釘づけでした。
珠城さん退団で、たまちなコンビも見納めなのね のごくらく地獄度



