2021年03月31日

春はハナガタ 「三月花形歌舞伎」


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南座の三月花形歌舞伎は本当に超花形。
座長格の中村壱太郎くんが30歳。尾上右近くん、中村米吉くんが28歳、中村橋之助くんは25歳、さらには福之助くん 23歳、歌之助くん 19歳というアンダーサーティの若手ばかりで南座で16日間の興行が打てたこと、今の時期ならではとも言えますが、役者さんたちにとってはこの上ない経験となったのでは・・・「感無量」という千穐楽の尾上右近くんの言葉が物語っています。

Aプロ、Bプロ、さらにそれぞれ偶数日、奇数日で役替り。
全部観られたらいいのですが、そういう訳にもいかず、まず源九郎狐(右近/橋之助)は尾上右近くん一択でAプロ、トーク「歌舞伎の魅力」(米吉/橋之助)は米吉くんがいいなぁと考えたら行ける日が初日しかありませんでした(^^ゞ


三月花形歌舞伎
2021年3月6日(土) 12:00 南座2列下手



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1席おきに空席を設けた南座。空席にはこんな華やかな桜が。
応援の意味もこめて、奮発して一等席にしたのですが、花横は4席空けて10番11番のみ着席。1列も空席でしたので、最前列での観劇となりました。



一、 歌舞伎の魅力
出演: 中村米吉
(上演時間: 25分)


「春の京都の南座で 歌舞伎の魅力語らんと まかり出でたる中村米吉~」という義太夫に乗って花道から登場した中村米吉くん春らしい薄くスモーキーな色合いの和装です。
初日最初の回ということで些か緊張していたのでしょうか。いつもの立て板に水のごときトークというほどではないにしても、相変わらずトークはお得意のご様子です。

まずは義太夫の紹介から、と「義太夫はわかりやすく言えば『音楽付きのナレーション』とおっしゃっていました。何かやってみて、と言われた義太夫さん「今日は初日だ緊張するな~」とひと節。「そんな僕の気持ち、義太夫にしなくてもいいですっ!」とツッコむ米吉くん。その後、義太夫さんは自分で退場のセリフを語りながら引っ込まれましたが、義太夫さんが自分で語りながら退場するというアイデアを出したのは米吉くんだそうです。
ツケ打ちさんも実演付きで紹介。
定式幕が開くと、「義経線本桜」の登場人物と人間関係が書かれた大きなパネルがあって、それにそってこれから上演される「吉野山」「川連法眼館」はもとより、その前段にあたる「鳥居前」についても解説。
さらには、忠信のカツラや静御前の衣装、義経から忠信に授けられた甲冑や静御前に渡された初音の鼓なども紹介。
「この静の衣装は僕のです。この後出てくる壱太郎さんのとはまた違います。忠信も橋之助くんのです」とおっしゃっていました。
確かに、こうして続けて見てみると同じ赤姫の着物なのに全然違っていました。

スッポンや揚幕についても説明して、「揚幕は上がる時に音がして、向こうから誰か役者が出てきますので、皆さん、振り返ってみて下さい」とおっしゃっていましたが、ここは「ハハーン。源九郎狐の出を惑わそうとしているな」とおばちゃんはわかっちゃいましたよ。


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ラストは花道の出てきて、SNSで盛り上げようということで、「#南座で歌舞伎 とタグつけてたくさんSNSに上げてくだいね」と撮影タイム。
そんなの聞いてないし、開演前に電源切っていたので焦りました💦
みなみーながファンからの質問を持って登場したのですが、写真撮るのに夢中でどんな内容だったか全く頭の中に残っていません。
ちなみに、米吉くん、今回の花形メンバーの中で唯一Instagramをやっていなかったので3月から始めたのだそうですが、ストリーズにも頻繁に投稿して、今や一番活用しているのでは?


二、義経千本桜 吉野山
静御前: 中村壱太郎   
佐藤忠信実は源九郎狐: 尾上右近
     (上演時間: 40分)



出演人数を制限していることもあってか、早見藤太も花四天も出て来ない短縮バージョン 静と忠信、2人きりの吉野山を堪能しました。

浅葱幕が振り落とされると満開の桜が美しい春の吉野山。
その真ん中を流れる吉野川がローラーでくるくる回って流れていました。これを見ると「妹背山」の「吉野川」思い出してしまいます。

義経を追う静御前と忠信の姿を描く艶やかな舞踊。
壱太郎くんの静はすでに何度も演じていらして手の内のお役という感じですが、仕草や表情が細やかでたおやか。品と色気を併せ持つ静です。
鼓の音とともに現れる右近くんの忠信/源九郎狐はキレのよい動きと凛々しさ。引っ込みの狐六方もダイナミックで力強い。
踊りはもちろん両者とも高値安定。絵面的にもお似合いの華やかな2人でした。


三、義経千本桜 川連法眼館
佐藤忠信/忠信実は源九郎狐: 尾上右近
源義経: 中村橋之助  
静御前: 中村壱太郎
亀井六郎: 中村福之助   駿河次郎: 中村歌之助
川連法眼: 中村橋吾   飛鳥: 片岡千壽 ほか
(上演時間: 1時間15分)



最初に川連法眼が妻の飛鳥を試す場面からありました。
川連法眼が橋吾さん、飛鳥が千壽さんで、事前にクレジットされていませんでしたし、番附も買わなかったのでうれしい驚きでした。半ばの腰元さんたち灯りを手にお庭を見回る場面もお顔馴染みのある上方歌舞伎の役者さんたちでした。

吉野山から川連法眼館へ同じ役者さんが演じるのはやはりいいなと思いました。義経に語る静の台詞にもより説得力が感じられます。
壱太郎くんの静は「吉野山」同様、可憐ながら芯がしっかりしていて、義経に代わって狐を成敗することもできる静。動きも台詞も安定、このまま歌舞伎座にも出られるよね、と思えます。

右近くんはリアル佐藤忠信がより武人らしく、狐忠信の時との違いがきちんと出るようになればもっとよくなるだろうと思いました。
右近くんなので音羽屋さん型の四の切ですが、身体能力の高さで魅せてくれました。小柄で俊敏なところもいかにも仔狐といった趣き。
軽やかに跳びはねて、百回りも高速回転。
狐言葉がすごく自然で時にはそれと気づかないくらいだったのですが、「できていない」という評を見かけて、「そうか。自然に聞こえるということは逆に言えば狐言葉になっていないということなのか」と思った次第。私は右近くん狐の自然体の狐言葉好きでしたが、このあたりは判断に迷うところです。

初日終演後のインスタライブでは右近くん疲れ果てていましたが、さもありなん。
でも右近くんに限らず、メンバー全員すばらしい経験になったことでしょう。
来年の春もまた南座に帰ってきてくれますように。


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やっぱり米吉くんの静も義経も観たかったな(欲ばり) の地獄度 (total 2226 vs 2231 )



posted by スキップ at 16:32| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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