
2010年に宝塚歌劇星組が日本初演したフレンチミュージカル。
あの時
愛と死に彩られたロミオとジュリエットの物語をここに始めよう
憎しみと暴力があふれる街 ヴェローナで
という英真なおきさんのナレーションに続いて、ヴェローナ大公とともにモンタギュー、キャピュレット それぞれの一族が登場して ♪ここはヴェローナ いとしいヴェローナ 愛する代わりに 憎しみが満ちる~
と哀愁漂うメロディを唄いエネルギッシュに踊る場面を最初に観た時、背中がゾクゾクして全身に電流が走ったような衝撃を今も忘れることができません。
いても立ってもたまらず翌月博多座まで観に行き、「トウコさんの次のトップ」くらいに思っていたロミオ役の柚希礼音さんに急激にハマり、それまで比較的ゆる~く観ていた宝塚歌劇を熱意を持って観るようになったきっかけの作品です。
「ここから始まった」感ハンパない。
そして
礼真琴さんを明確に認識したのもこの作品。
「あの“愛”の子、かわいいし、ダンス上手いね~」
「まだ研2なんだって」
「男役なんだってー」
あれから11年。
ことちゃんはロミオとなって大劇場に息づいていました。
宝塚歌劇 星組公演
三井住友VISAカード ミュージカル 「ロミオとジュリエット」
Roméo & Juliette
Le spectacle musical de GÉRARD PRESGURVIC
D’après l’œuvre de WILLIAM SHAKESPEARE
原作:ウィリアム・シェイクスピア
作: ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出: 小池修一郎 演出: 稲葉太地
音楽監督・編曲: 太田健 編曲: 青木朝子
振付: 御織ゆみ乃 KAZUMI-BOY 桜木涼介 KAORIalive 鈴懸三由岐
装置: 大橋泰弘 衣装: 有村淳
出演: 礼 真琴 舞空 瞳 愛月ひかる 美稀千種 白妙なつ
天寿光希 音波みのり 輝咲玲央 夢妃杏瑠 漣レイラ
瀬央ゆりあ 綺城ひか理 有沙 瞳 天華えま 遥斗勇帆
極美 慎 希沙 薫 碧海さりお/英真なおき ほか
2021年2月14日(日) 1:00pm(A) 宝塚大劇場 1階7列下手/
2月18日(木) 3:30pm(A) 1階19列上手/
2月23日(火) 1:00pm(A) 1階15列センター/
2月25日(木) 11:00am(B) 1階21列上手
(上演時間: 3時間5分/休憩 35分)
2月14日の初日から約10日間で4回観ました。
3月前半は他の観劇予定が重なっていて小休止中(笑)。また後半たくさん観ます←
2010年 星組、2011年 雪組、2012年 月組、2013年 星組と、役替り含めてすべて観ました。
2013年星組は礼真琴さんがロミオを演じた新人公演も観劇。
その間には2011年の外部ミュージカル版初演、2012年 フランスオリジナル来日版も。
最後に観たのが2013年8月25日。
星組公演 東京宝塚劇場の大千秋楽でした。
初日の幕が上がって、愛と死がゆったりと踊り、バーンと場面が変わってヴェローナの街となり、あのイントロが流れた途端、つーっと涙が流れました。自分でも不思議な感覚。心が、初めて観た時の衝撃を思い出したのかな。ワタシ、本当にこの作品待ってた・・・と。
フィナーレを除いて、楽曲はもちろん、演出や振付も基本的に初演からのものをほぼ踏襲しているようです。
役替りの他に、100期以下の生徒2チームに分けて、約25名減員しての公演ですが、元々スタートが人数の少ない別箱公演だったこともあり、また、群舞で少人数を感じさせない振付の工夫もあって、「少ない」と感じることはなかったです。
というより、ヴェローナ市街の場面や仮面舞踏会なんて、あちこちでいろんなダンスやリフトやっていてむしろ目が足りないくらい。
「世界の王」での客席降りがないのはこの状況下で仕方ないとはいえちょっぴり残念だったなー。
美術や装置もほぼ同じ。
当時はそんなこと感じませんでしたが、「アナスタシア」の映像駆使した演出や、これでもかというくらい盆セリ使いまくる「fff」観た後ではいささか平面的な印象を受けます。もちろん作品としての持ち味の違いはありますが、やはり10年前の作品なのだなぁと。
今回新調された衣装は、制作発表やポスターの段階ではかなり不評でしたが💦、実際に舞台で動いているとさほど気になりませんでした。追放されたロミオがマントヴァに行く時に着ているコートもフードつきだったのには、「有村先生、ことちゃんにはどこまでもフーディを着せたいのか」と思いましたが。
そんな中、一番印象が変わったと感じたのはジュリエットの造形。
初日、バルコニーの場面でロミオと話している時、「お嬢様」と呼ぶ乳母に「すぐ行くわ」「今行くってばっ!」という言い方、強くてドスが効いていて笑いも起こっていました。
ここに代表されるように、この作品のジュリエットは、ただの深窓のお嬢様ではなく、勝気で自分の意志を強く持ち、それをしっかりま口にする女性に見えました。
初日後に見たインタビューで小池先生が、ジュリエットに現代の女性像を加えた」という趣旨のことをおっしゃっていて、なるほどと納得した次第。
結婚の約束をして「明日、いつどこで式を挙げるか教えて」というところも「半ば脅迫するように言いなさい」と小池先生に言われたと、礼さんがNow on Stageで笑いながら話していらっしゃるのを見たのもその後のことです。
勝気で強くて情熱的で、まるで炎のように一途に恋をして、その炎でロミオを燃やし、自分自身も燃やし尽くしてしまった、そんなジュリエット。
それを体現する舞空瞳さんのすばらしさ。
ビジュアルのかわいらしさはもちろん、豊かな表情、立ち姿の美しさ、歌唱もさらにステップが上がって、レッスンを積んだことがよくわかります。
この作品は楽曲がどの曲もとてもすばらしいのですが、そのジェラール・プレスギュルヴィックさんの楽曲の世界観を余すところなく表現する礼真琴さんの歌唱が本当に本当にすばらしい。
のびやかな声で歌唱力抜群なのはよく知られていますが、表現力も抜きんでていて、一幕と二幕で全く別物のように聞こえる「僕は怖い」をはじめ、「いつか」「世界の王」「天使の歌が聞こえる」「バルコニー」「エメ」「ひばりの歌声」「彼女無しの人生」「ロミオの嘆き」・・・どの歌唱も心揺さぶられます。あの2つの「僕は怖い」を聴くためだけに劇場に通えるレベル。
すごく上手いのに、歌を聴かせることだけに偏らず、まるで台詞のように歌うのもとてもすばらしい(ミュージカルの基本ですがそうではない人も多い)。台詞と歌の声のトーンが変わらないのも持って生まれた天賦の才でしょう。
少年っぽさを残しつつ大人の目も持っていて、繊細で、明るい笑顔のどこかに翳りを持つロミオ。
制作発表で小川理事長が「この作品を上演するのにふさわしいトップコンビの誕生を待っていた」とおっしゃっていましたが、まさしくそれだと思いました。
特に礼真琴さんにとっては、ロミオ役既定路線で「もちろん似合うはず」「できて当たり前」と言われ続けていたと思いますが、その期待と予想をはるかに超えてくるところが礼真琴の礼真琴たる所以です。
予想を超えていくといえば、話は飛びますが、フィナーレのデュエットダンス。
一つ前の公演「エル・アルコンー鷹―/Ray」のデュエットダンスでこれまでの最高更新したと思った礼・舞空カップル。
今回のデュエダンはまたその最高を軽く超えてきました。
「エメ」のフラメンコアレンジで、大階段で「エ~メ」と本編とは全く違った男っぽくパンチが効いて、かつセクシーな歌唱のことちゃんにまずヤラレます。
それに続くダンスは、愛月ひかるさんが「カミソリデュエット」と名づけたとおり、キレッキレのダンスが息つく間もなく続いて、高速で振り数もとても多いのにピタリとシンクロしている二人。
KAORIaliveさんの振付は星組としては初めてということですが、よくもまぁあんな振付したわね、そして2人もよくそれに応えたわね、と全然目が追いつかず、観終わったすぐ後に「もう1回観たい!」となったのでした。
スカイステージの稽古場レポートで天華えまさんが、初めてこのデュエダンを稽古場でみんなにお披露目した時、全員すごい拍手で「あんなに満面の笑顔で拍手している小池先生初めて見た」とおっしゃっていたのですが、そりゃ小池先生も満面笑顔になるわな、と思った次第です。
初日もこのデュエットダンスの後が一番の拍手でした。
フィナーレではもう一つ。
男役群舞の愛月ひかるさんにも目を見張りました。
礼真琴さんの「ヴェローナ(吐息)」で始まる群舞に愛ちゃんいないなぁ、後で出て来るのかなぁと思っていたところ、いつの間にか大階段降りてきた娘役さんたち周りに侍らせて0番にポーズ決めて座ってるではありませんか。それがまた超絶カッコよくて色っぽいのです。
もう、想像の遥か上を行く登場の仕方でした。

舞台全体としてもすばらしいに尽きます。
「ロミオとジュリエット」という戯曲は誰もが知っている物語ですが、フランスオリジナル版を観た時、楽曲のよさはそのままながら、どちらかといえばダンス主体でショーアップされたレヴュー要素の強い舞台だと感じました。それをここまでドラマチックなミュージカルに仕立てた小池修一郎先生の潤色力に改めて敬服しました。
「エリザベート」をはじめ、「スカーレットピンパーネル」「1789」などナド、宝塚歌劇で初演→東宝ミュージカルへという小池先生の潤色作品は何作かあって、それぞれによさがあると思いますが、「ロミオとジュリエット」に関しては、絶対に宝塚版がいい!これ、私がヅカファンということを差し引いても自信を持って断言できます。ミュージカル版しか観たことない人、ぜひこの星組の「ロミオとジュリエット」を観ていただきたい(チケットないけど)。
星組全体のパワーとエネルギーをひしひしと感じる舞台。
役名のある役は少ないですが、モンタギュー、キャピュレットの男も女も、ヴェローナの街で目一杯生きています。
A日程、B日程とも初日を観ましたが、どちらもとても完成度高くて、この先どうなっていくのだろうと楽しみでしかありません。
そして、A、Bでくっきり色合いの違う舞台となっていることにも感嘆。
ロミオ、ベンヴォーリオ、マーキューシオ 3人の関係性も、ロミオ以外のキャストが変わるとロミオの印象まで変わることに少なからずコーフンしました。Aの礼・瀬央・極美はより同世代の仲良し感が強く、Bの礼・綺城・天華ではベンヴォーリオの大人っぽさが際立って、ロミオの少年性が増したような印象。
もちろんそれは、ティボルトやパリス伯爵、死や愛といったキャストにも言えて、今回主役カップル以外はオーディションと聞いていますが、それぞれの役にこの人たちを選んで、その組み合わせも考えて、って、本当に小池先生も稲葉先生もすごい。
どちらもそれぞれよくて、B観たらA観たくなるし、A観たら今度はBを、と無限ループのよう。
どうしてくれるんだ、小池先生
パレード:
エトワール 小桜ほのか
天寿光希・有沙瞳
天華えま・綺城ひか理・極美慎
瀬央ゆりあ
愛月ひかる
舞空瞳
礼真琴
という訳でとりあえず全体感想を一旦終了。
キャストの感想等はまた書いていきたいと思います。
やっぱり宝塚の、星組のロミジュリが大好きだ のごくらく度


