2021年02月13日
二人の男・密室・ゲームのような復讐劇 「スルース ~探偵~」
1970年にロンドンで初演された作品。
ブロードウェイ版はトニー賞を受賞し、映画化もされました。日本でも何度か舞台で上演されていて、直近では西岡徳馬さん主演版(2016年)が記憶に新しいところですが、いずれも未見。
「二人の男」「密室」「ゲームのような復讐劇」
と、フライヤー表面のコピーだけを事前情報に観劇しました。
「スルース ~探偵~」
作: アントニー・シェーファー
翻訳: 常田景子
演出: 吉田鋼太郎
美術・衣装: 大島広子 照明: 原田保
出演: 柿澤勇人 吉田鋼太郎
2021年2月5日(金) 7:00pm サンケイホールブリーゼ 1階G列センター
(上演時間: 2時間/休憩 20分)
物語: 著名な推理小説家アンドリュー・ワイク(吉田鋼太郎)は、妻の浮気相手であるマイロ・ティンドル(柿澤勇人)を自身の邸宅に呼び出します。不倫ヘの追及を受けるものだと思っていたマイロに対し、アンドリューは「妻の浪費家ぶりには困っている」と話し、自宅の金庫にある高価な宝石を盗み出すよう提案します。そうすることでマイロは宝石とアンドリューの妻を手に入れ、アンドリューは宝石にかけられた保険金を受け取り愛人と幸せに暮らすことができるのだ、と。提案に乗ったマイロはアンドリューに言われるまま泥棒に扮して屋敷に侵入し・・・。
若くハンサムで、アンドリューの妻に愛され自信に満ちているマイロは、アンドリューに対してアドバンテージを取っているように見えます。
ところが、アンドリューの提案に乗り、宝石泥棒をするためにアンドリューが用意したピエロの衣装を着たり、あれこれ注文をつけられてその通りに従うマイロはいかにも脇が甘く、「そんなことしてたらアンドリューの思うツボじゃん」と思っていたところ、その通りになって、アンドリューに撃たれ、階段を転げ落ちた一幕ラストで、「あー、やっぱり~」と同時に、「かっきー ここでもう死んじゃったら二幕どうなるの?」と思っていました。
が、物語はそんな単純なものでは、もちろんありませんでした。
嘘と真実、皮肉と本音が交錯する会話劇。
「まんまと騙される」という感じではないけれど、スリリングな展開で、マイロ→アンドリュー→マイロ→アンドリュー→最終的にマイロ?と二人の中の優位性が二転三転する感じが台詞の応酬で描かれて、見応え聴き応えありました。
高名で裕福で余裕たっぷり・・・に見えて年齢からくる性的なコンプレックスも持つアンドリュー。
若くてハンサムだけどお金はなく、イタリア系、ユダヤ系でイギリスの階級社会で屈折を抱えているマイロ。
アンドリューに騙され、プライドを傷つけられたマイロが二幕でアンドリューに仕掛け返す緻密で幾重にも張り巡らされた罠と冷静さを見るにつけ、「あの宝石泥棒のあたりだけがマイロの別人格」と感じないでもありません。
イギリス階級社会の“上位層”にいて、地位も名誉も知性も豊かさも、そして傲慢さも持っている吉田鋼太郎さんのアンドリュー。
マイロを騙そうという思いを秘めて丁寧に接するところ、本性を表して「イタ公め!」と罵るところ、刑事に問い詰められて焦るところ・・・折々に変わる声の表情の豊かなこと。
そして終盤、何よりも大切なプライドを傷つけられて、PC壊されたあたりからの目の狂気の宿りっぷりが尋常ではなく、「かっきー、逃げて!毛皮なんてどうでもいいから早く逃げて~、殺されるから~」と叫びたいくらいでした。
柿澤勇人さんのマイロも、アンドリューと別の意味で自信家。
少し品が良すぎるかなとも思いましたが、若くて精悍で、やんちゃなイタリア系色男がハマっていました。
他愛ない芝居の種明かしから、突如冷酷に牙を剥くという変化も見ものでした。
歌もあって美声を聴かせてくれたり、パンイチになって肉体美をさらけ出すサービスショット(?)もw
そういえば、一幕ラストの撃たれて階段を後ろ向きに下まで転がり落ちるシーン、「かっきー、すごい身体能力!!」と驚いたのですが、ここはスタントの方だったらしく、カーテンコールにピエロの衣装を着た方が登場されました。いつ入れ替わったのか全然気づかなかったワ💦
重厚感のあるつくり込まれた書斎と踊り場つきの階段があるアンドリュー邸のセット。
暗くなったり明るくなったり、時の移り変わりや心情を表した照明が印象的だなぁと後で調べたら原田保さんでした。ここにもかー、という感じ。
カーテンコール。
「出歩くな!と言われているにもかかわらず、こんなにたくさん来てくださった皆様の勇気と我々に対する思いに、もう…」と吉田鋼太郎さん
「あんな時もあったねと笑って話せる日が1日も早く来ますように」と柿澤勇人さん。
決して満員とはいえない客席でしたが、みんな目一杯の拍手を贈りました。
かっきーは、「僕は大阪という街が大好きで、いつもならおいしいお酒を飲んだりおいしいものを食べに行くんですが、絶賛ルームサービス中です」とおっしゃっていました。
次に大阪にいらっしゃる時は心おきなくのんだくれたり食いだおれたりできますように。
「もう8時はとっくに過ぎていますから一刻も早くお帰りください」 by 吉田鋼太郎 のごくらく地獄度 (total 2213 vs 2216 )
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