2021年01月27日

I Shall Be Released「チョコレートドーナツ」


anydaynow.jpg

ラスト ひとり歌うルディ。
「!」
「これ、“I Shall Be Released” じゃない!ボブ・ディランの!」
「あー、映画のタイトル、この曲の歌詞(Any day now, any day now I shall be released)から来てるのか!」と気づく(遅い💦)。

2012年に公開されたアメリカ映画「チョコレートドーナツ」(原題: ANY DAY NOW)
1970年代のアメリカの「障がいを持ち、母親に育児放棄された子どもと、家族のように過ごすゲイ」という実話をもとにしたこの映画の、世界初舞台化です。

映画は未見。
「ゲイのカップル」「ダウン症の子ども」というキーワードだけを知った上での観劇でした。


PARCO THEATER OPENING SERIES
「チョコレートドーナツ」」 ANY DAY NOW
Based on the motion pictures “Any Day Now”
原作: Travis Fine/George Arther Bloom
翻案・脚本: 谷賢一   訳詞: 及川眠子
演出:  宮本亞門
音楽監督: 横山英規   美術: 乗峯雅寛
照明: 佐藤啓   振付: 大村俊介(SHUN)
出演: 東山紀之  谷原章介  堀部圭亮  八十田勇一  妃海風  まりゑ  
高橋永/丹下開登(ダブルキャスト)  モロ師岡  高畑淳子 ほか

2021年1月22日(金) 1:00pm シアター・ドラマシティ 3列下手
(上演時間: 2時間20分/休憩 20分)



物語の舞台は1979年のアメリカ カリフォルニア。
シンガーを夢見ながらショーパブで働くドラァグクイーンのルディ(東山紀之)は客として店に来た、ゲイであることを隠して生きる地方検事のポール(谷原章介)と恋に落ちます。ルディのアパートの隣室に住む、ネグレクトを受けているらしいダウン症の少年マルコ(高橋永)の母親が逮捕され、マルコを施設に入れたくないルディはマルコを引き取り、“いとこ”同士と偽ってポールの家で共に暮らし始めました。まるで本当の両親のようにマルコを愛し、大切に育てた二人でしたが、ゲイのカップルであることを周囲に知られ、二人の関係を偽ったことが原因でマルコは家庭局に連れて行かれてしまいます。絶望の中、「今こそ世界を変える時」と、差別と偏見で奪われたマルコを取り戻すために二人は裁判に挑みます・・・。


40年以上前の話とはいえ、性的マイノリティや障がい者への偏見や差別は、あのアメリカですらこんなにも・・・と思わずにはいられませんでした。多分それは時を経て、国を変えても変わらない「今の現実」でもあると感じるのです。

ハッピーエンドとチョコレートドーナツが大好きなマルコ。
共に暮らし始めたころの三人が本当に幸せそうで楽しそうで・・・映像作品を観ているような演出が印象的でした・・・このシーンが幸せそうであればあるほど、2幕の法廷シーンの緊迫感と背筋がヒヤリとするような冷たさが一層増幅される感じ。
マルコが誰と一緒にいるのが幸せか、というのは明らかなのに、現実の厳しさはそれを許さず、“ゲイのカップル”への偏見は根強く、理で覆われた法の壁は厚く冷たい。


家庭局で実際にマルコと接している人たちや冷徹なマイヤーソン判事(高畑淳子)にも情を感じる中、ポールの上司ウィルソン(モロ師岡)がどうしてそこまで-多分、マルコの母親と司法取引をしてまで-ルディとポールを追い詰めるのかが個人的には一番理解できないところでした。ポールが在職中はポールの将来を案じたり、モニカ(妃海風)との仲を取り持とうとしていたのに。それが「ゲイ」に対する偏見というもので、可愛さ余って憎さ100倍といったところだったのでしょうか。
ランバート弁護士(堀部圭亮)も同様ですが、彼はまぁ、それが仕事ですから。

差別と偏見と法に阻まれて引き裂かれ、多分ルディのもとに戻ろうとして夜の街をさまよったマルコの死という最悪の結末を迎える物語。


絶望の淵にいながらも、「いつの日か解放されるべきなんだ いつか必ず希望が・・・」と明日への希望を信じる歌を、凛と前を見据えて大地を蹴って力強く歌うルディに涙。
Any day now, any day now I shall be released
いつの日か いつかはわからないいつの日か すべての苦しみから解き放たれるだろう


華やかショーシーン、70年代アメリカのヒットナンバーもたくさん盛り込まれた演出。
映画を観ていませんので、どれくらい潤色されているのかわかりませんが、うまく舞台化されている印象です。
ショーのダンスで「この振付、SHUN先生っぽい」と思っていたら、本当にSHUN先生が振付だったと後で知ってちょっと笑っちゃいました。


感性豊かで自分に正直で直情的な東山紀之さんのルディ。
金髪カツラでガーターベルトも色っぽく美脚を披露しながら歌い踊る艶めかしさ美しさよ。
黒皮ショートパンツのボンデージスタイルあり、ピアノの上に寝そべって歌うシーンあり、はたまた似合わないスーツ姿あり(注・リアルヒガシはスーツめちゃ素敵)。いろんなヒガシを目で耳で楽しませてくれます。
ヒガシの凛とした美しさ強さは性別や年齢を超越しているなと思いました。

そんなルディをやさしく温かく包み込み、冷静に状況を判断して時にはルディを制する谷原章介さんのポールもとてもよかったです。誠実な人柄が伝わってくるよう。谷原さん、少しふっくらされた印象ですが、相変わらずいい声ですねー。

まるで法の番人のような佇まいながら冷徹さの中に情も見せた高畑淳子さんのマイヤーソン判事、どこまでも理でルディをポールを追い詰める堀部圭亮さんのランバート弁護士、差別される側のルディたちと真逆の立場の象徴のような何の曇りもない妃海風さんのモニカも印象的でした。
モニカといえば、この声どこかで聞いたことあるな、この口跡いい台詞の声は・・・と思っていたら風ちゃんだったという・・・きゃ~、ごめんよぉ、見た目で気づかなくて💦

そして、高橋永くん。
訥々とした抑揚少な目な台詞まわしがかえってリアリティを生んでいて驚きでした。
ひたむきで懸命で可愛らしいことこの上ない。
ずい分前に仕事でダウン症の女の子としばらく関わったことがあるのですが、その子のこと思い出しちゃった。
大阪初日だったこともあってか、カーテンコールでは何度も涙をぬぐってはまた笑顔で手を振る高橋永くんの姿にもらい泣き。


ラストに客席を照らすライト。
この悲劇の行く末は、今客席にいる一人ひとりの行動に委ねられている、という亞門さんからの問いかけでしょうか。



東京公演は当初の予定より開幕遅れましたが、無事大千秋楽まで完走できますように のごくらく地獄度 (total 2208 vs 2210 )


posted by スキップ at 23:46| Comment(3) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私がチケットを持っていた日は休演になってしまいまして、元気が出ずにその後の情報を追っかけることもしませんでした。スキップさまのおかげで様子がわかって、とても嬉しいです! はぁぁ、見たかったなヒガシ。
少年隊=青山劇場、というイメージがあって(見てはいませんが、今上演してるのねということは度々)、その青山劇場・円形劇場も記憶の彼方……復活はないのか、などなど物思いにふけっちゃいました。
Posted by きびだんご at 2021年02月03日 11:04
偶然にも、こちらに書き込んだ1時間ほど後、郵便受けに「チョコレートドーナツ」の代金の払出証書が届いてました!
Posted by きびだんご at 2021年02月04日 00:47
♪きびだんごさま

東京公演は半分以上中止になってしまいましたので、観られなかった方も
多かったみたいですね。本当にコロナのやつめ!

あまりうまく感想書けなかったのですが、少しでも雰囲気が伝われば幸いです。
ヒガシは昔「覇王別姫」でも美しい女形を見せてくれましたが、今回は鍛えあげた
ボディも惜しげもなく披露されていました。

青山劇場&円形劇場 東京の劇場の中では私もよく通った場所です。
好きだったなぁ。復活を心から願っています。

>偶然にも、こちらに書き込んだ1時間ほど後、郵便受けに「チョコレートドーナツ」の代金の払出証書が届いてました!

すごいタイミングですね(*'▽')
払い戻しはもちろんありがたいですが、やっぱり舞台観たいですよね。
Posted by スキップ at 2021年02月04日 18:37
コメントを書く
コチラをクリックしてください