2021年01月24日

人に生まれて 人ではなくなり 「ポーの一族」


thepoeclan.jpg

2018年に宝塚歌劇花組で上演された作品。
あの時、「宝塚でエドガー役やれるのはみりお(明日海りお)以外にいない」と思ったものですが、外部でもエドガー役ができるのはやっぱりみりおだけだった訳で(笑)。


ミュージカル・ゴシック 「ポーの一族」
原作: 萩尾望都 
脚本・演出: 小池修一郎(宝塚歌劇団)
作曲・編曲: 太田健(宝塚歌劇団)
美術: 松井るみ
衣裳: 生澤美子
振付: 桜木涼介  KAORIalive  新海絵理子
出演: 明日海りお  千葉雄大  小西遼生  中村橋之助  夢咲ねね  
綺咲愛里  能條愛未  純矢ちとせ  福井晶一  涼風真世 ほか

2021年1月20日(水) 12:00pm 梅田芸術劇場メインホール 1階9列(6列目)上手
(上演時間: 2時間50分/休憩 25分)



2018年宝塚歌劇版の感想はこちら


物語: イギリスの片田舎―森の奥に捨てられた幼い兄妹エドガー(明日海りお)とメリーベル(綺咲愛里)は、館に住む老ハンナ(涼風真世)に拾われ育てられます。老ハンナたちは、永遠の時を生きる「バンパネラ」の一族でした。正体を見破った村人たちが屋敷を襲い老ハンナは消滅、一族にも危機が迫る中、メリーベルを巻き添えにしないことと引き換えにキング・ポー(福井晶一)によってエドガーはバンパネラにされ一族に加えられてしまいます。
こうしてエドガーはポーツネル男爵(小西遼生)とその妻シーラ(夢咲ねね)を養父母として長い時を生きることとなり、やがてメリーベルも自らの意志で一族に加わります。時は流れ、港町ブラックプールのホテルに姿を現した4人。男爵とシーラは、診療所の医師 ジャン・クリフォード(中村橋之助)を一族に引き入れようと目論み、エドガーは町一番の名家 トワイライト家の跡取りアラン(千葉雄大)と宿命的に出会います・・・。


ストーリー展開は基本的に宝塚版と同じ。
1964年にフランクフルト空港に降り立った3人のバンパネラ研究家がストーリーテラーの役割を果たして物語は進みます。
3人が辿るバンパネラの足跡・・・物語の舞台は1754年スコッティ村と1879年 イギリスの港町 ブラックプール。
プログラムを買っていませんのではっきりとわかりませんが、♪我らは 一族~ ポーの一族~ という主題歌や、エドガーの歌う「哀しみのバンパネラ」など、楽曲もそのまま使われているようでした。

明日海さんをはじめ、夢咲ねねさん、綺咲愛里さん、純矢ちとせさん、そして涼風真世さんと、宝塚OGがキャストに名を連ねていますが、当然ながら男性の役は男優さんが演じている訳で、ファンタジーな雰囲気は希薄になった分、現実味がより増していて、その結果、エドガー筆頭に人ならざるもの-バンパネラ-と生身の人間との対比が一層色濃く浮かび上がった印象です。
そのため、永遠に生き続けなければならない宿命を背負ったエドガーの孤独感、切なさがよりひしひしと感じられました。

人に生まれて 人ではなくなり
幸せの残り香も忘れた
哀しみを抱いて生きる
僕はバンパネラ

というエドガーの絶唱が胸に突き刺さります。


プロローグで大ゼリの上に明日海さんエドガーが赤い薔薇を手に現れた時、大げさでなく背中がゾクッとしました。
3年前に観た、そのままのエドガーがそこに立っていたから。
それってまさしく、永遠の命を持ち、年を取ることもなく、時を超えて生き続けるバンパネラそのものではないですか。

少年っぽい雰囲気はそのままに美貌にはますます磨きがかかって研ぎ澄まされたような美しさ。
男性と一緒に演じることを意識してか、より目力がある強気な造形で、それがエドガーの勝ち気さ、強さと孤独感を増幅しているように感じました。歌唱も現役時代よりさらに力強さを増した感じ。

キャストが発表された時、一番驚いたのは千葉雄大くんのアランでした。
これがミュージカルデビューということで、歌はがんばれ~でしたが、ちょっとツンデレな名家のおぼっちゃまが人生に絶望してエドガーとともに生きる道を選ぶ、というあたり、説得力のある演技を見せてくれました。台詞の発声がいかにも映像の人だと思ったのですが、舞台「危険な関係」(2017年)にも出ていたのね。全く記憶にありませんが💦
モデルさん出身とお聞きしていますが、スタイルが今イチだったかなぁ。

中村橋之助くんのクリフォードも頭良くて仕事もできるけど女好きのチャラ男みたいな感じがよく出ていました。
歌は千葉くん同様うんとかんばろう。

いやしかし、宝塚版のアランは超絶美形の柚香光さん、クリフォードは超絶脚長かつ色っぽい鳳月杏さんで、比べるものではないとわかっていてもやっぱり頭に浮かんでしまいます。だってみりおはそのままな訳だし。


美しさも品も、そしてクリフォードを誘惑しようとする妖艶さも持ち合わせ、ドレスの着こなしも華やかな夢咲さんのシーラ、かわいいことこの上なく、明日海エドガーとの並びが絵から抜け出てきたような綺咲愛里さんのメリーベル、下世話になり過ぎず、儚げな雰囲気を出した純矢ちとせのレイチェルと宝塚出身の女優さんたちはそれぞれ適役好演。
夢咲さん、純矢さんは明日海さんと同期、綺咲さんは星組で夢咲さんの2代後の娘役トップと、互いに関係の深いOGです。

そんなヅカ出身者の中でダントツの存在感を示したのが涼風真世さん。
老ハンナの歌唱がとても迫力があってうまくて、すぐに消滅してしまって勿体ないと思っていたら、後半は占星術師ブラヴァツキーでご出演。これが「え?誰!?」と思うくらい別人で、二役の演じ分け鮮やか。どちらも出番は短いながら強烈な印象を残しました。
涼風さんは明日海さんに通じるフェアリー系の代表的な男役で、現役時代ならエドガーもできた人だど思いますが、そんなかわいらしさを封印しての怪演、お見事でした。

キング・ポーの福井晶一さんもさすがの歌唱力と重厚感。
ポーツネル男爵の小西遼生さんの佇まいも好きだったな。

エドガーやアランが通うセント・ウィンザーの同級生やその後のギムナジウムの生徒たち(多分同じメンバー)のダンスがやたらキレッキレだったのも印象的でした。


カーテンコール ラストは明日海さんが一人で登場して千葉くんを呼び入れるのが恒例のようで。
「アラーン」と呼ばれて飛び六方で入ってきた千葉くん。
袖を見ながら「メリーベルにやらされたのね」と明日海さん(あーちゃんてば、いたずらっ子!)
今朝のウォーミングアップで橋之助くんがみんなに歌舞伎の型を教えてくれたそう。
明日海さんは一人別でアップしているそうですが、動画が送られてきて「ちば・・くん・・?」となったそうです。
橋之助くんの教わった見得を披露した千葉くんに「明日海さんもどうぞ」と促され
「え〜っ!先生(橋之助くん)に教わった千葉くんがやったのを見てやるんだけど・・・」と戸惑いながら見よう見まねでやって見得らしきものをピタリとキメる姿はさすがでした。



どちらが好きかと問われれば宝塚版の方が好みではあります(結局そこかい) の地獄度 (total 2206 vs 2208 )


posted by スキップ at 23:39| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください