2021年01月06日
それでも・・・ 宙組 「アナスタシア」 Act Ⅱ
↑ これ、一幕前と幕間でデザイン変わっていました。
最初は雪降りしきる冬のロシアで、こちらは春のパリ。
そう、第二幕は舞台をパリに移して開幕です。
宝塚歌劇 宙組公演 三井住友カード ミュージカル
「アナスタシア」
ANASTASIA THE MUSICAL
脚本:TERRENCE McNALLY
音楽:STEPHEN FLAHERTY
作詞:LYNN AHRENS
潤色・演出: 稲葉太地
Act Ⅰはこちら
Paris Holds The Key (To Your Heart) パリは鍵を握ってる
パリの街で、ディミトリ、アーニャ、ヴラドの3人と街の男女の群舞。
チャールストン風のダンスが明るくて楽しい。
センターに集まったみんなが足を左右に振りながら舞台いっぱいに広がっていくところが好き(伝わりにくいw)。
真風ディミトリが紺色スーツにハット、ポケットに手をつっこんでダンディそのもの。
作品全体を通して衣装も素敵なのですが、この場面のアーニャのたまご色のワンピースだけが残念な感じだったなー。
橋の名前を聞かれたアーニャが「パリで最も美しい橋。アレクサンドル三世橋は皇帝アレクサンドル三世に因んで名づけられた」とガイドブック見ながら答えるのが、 一幕のマリア皇太后との会話を思い出して切ない。
Close The Door 扉を閉ざして
アナスタシアの偽物(からの手紙)に辟易しつつも「もしかしたら」と諦めきれないマリア皇太后が心情を歌います。
部屋の写真立てには皇帝一家の集合写真と、マリア皇太后と少女アナスタシアの写真。一家が回想で登場します。
和希そらこと、ソラピがついに登場!第一声から、すでにキビキビとした大人っぽい女声で、ただものじゃないオーラ。すっしーさんマリアとのコンビも良い感じに。
リリー(和希そら)もこの場で本格的に登場。
違和感なく女性になっているそらくんすごい。
テキパキ仕事ができて気が強そうなリリーという女性を見事に描出しています。
Land of Yesterday 過去の国
パリ在住の亡命ロシア貴族たちのたまり場 ネヴァクラブ。
入口でスタッフのセルゲイ(紫藤りゅう)に靴をどこかで買って来いとか食べ物が欲しいなら裏へまわれとか貧乏人扱いされるグレブ氏。パリでは軍服を脱いでスーツです。出入りする亡命貴族たちを汚いものを見るような目で見ていました。
「ダンスが大好き」というリリーが店のスタッフたちと歌い踊る、和希そらオンステージ。
♪そう ロ~シアッ 過去の国で~ とのびやかな歌唱に華やかでキレのいいダンス、色っぽくていいオンナっぷり、もう満点であります。
紫藤りゅうくんセルゲイと同期ダンスからのリフトが眼福です。
そこにしれっと踊りながら加わるヴラドおじさん、愛しすぎる。
The Countess And The Common Man 貴族とただの男
ヴラドが生きていたことに驚いて戸惑うリリーですが、ヴラドの強気の押しに「あなたの言う通りね」と昔の恋心を思い出し、いろいろ絡みながら歌うナンバーがとても楽しい。
何度もキスして(ディミトリとアーニャはまだ一度もしていないのに)、ラストはリリーが壁ドンしてヴラドに熱いキス。
この二人を影から見つめるグレブの苦み走った目がまたステキ。
A Nightmare 悪夢
アーニャの夢に出てくる一皇帝家の場面。
弟アレクセイ(遥羽らら)の「秘密を教えてあげる。僕はもうすぐ死ぬんだ。みんなも」という言葉が哀しくも切ない。
そしてそのアレクセイを表情ひとつ変えず高い位置でお姫様抱っこしている鷹翔千空くんが役名は“ロマノフ男”)が凛々しくイケメン。
In A Crowd Of Thousands 幾千万の群衆の中
アーニャの悲鳴を聞いて心配して駆けつけたディミトリ。
夜寝ていた時なので、アーニャは白いネグリジェ(すごくかわいい。あれ欲しい)、ディミトリもパジャマみたいな白い服。
ディミトリがかつて一度だけ見かけたパレードの光景をとても美しい旋律に乗せて。
この曲、めちゃくちゃ好きなのですが、タイトルをずーっと「あの日のパレード」だと思っていました。
「私もそこにいたような気がしてきた」とアーニャが続けて歌います。
♪光を浴びて進むパレード
痩せて汚れて、でも真っ直ぐな瞳
その姿を見て微笑むと
彼はお辞儀を・・・
「それは話してない!」
「ええ。でも私覚えてる!」
アナスタシアにお辞儀をした少年・・・幼い日に二人が出会っていたこと、Act ⅠのLearn To Do Itの時、「昔一度だけある人にお辞儀をした」とディミトリが言っていたお辞儀の相手がアナスタシアであること、互いの記憶が繋がってアーニャがアナスタシアであるという確信、惹かれた相手がただの女の子ではなく「皇女」であること、それもあの少年の日に心を奪われた人であること・・・すべてこの瞬間に完成するゾクゾク感。
「皇女様」とアーニャの前に跪くディミトリの姿の美しさ。
Arriving At The Ballet/Meant To Be バレエに到着・ヴラドの後悔
いよいよマリア皇太后と対面するためにバレエ公演が催される劇場に到着したディミトリたち。
ディミトリもヴラドも彼らを影から見張るグレブもみんな黒燕尾でさすがの似合いっぷりです。
アーニャの気品あふれる紺色のドレス姿がまばゆいばかりに美しい。
腕を組んで階段を上っていく二人を見つめながらヴラドが歌う曲が Meant To Be
「すべて計画通り。うまくいっている。ただ一つ計算外だったのは二人のロマンス。始まりはあの日のダ~ンス」
と歌うヴラドの優しさが染みて泣きそうになります。
Quartet At The Ballet バレエでの四重唱
バレエのステージを真ん中に下手のボックス席にディミトリとアーニャ、上手にマリア皇太后とリリー。
ヴラドは一段下のボックスで、グレブはオペラグラス片手に立って、バレエではなくアーニャを見張っていました。
ディミトリ、アーニャ、マリア皇太后、グレブ 4人の心の動きと歌唱が、白鳥の湖のドラマチックな旋律とシンクロして重厚感たっぷり。
この4人の表情や歌だけで目も耳も忙しいのに、
オデット:潤花 ジークフリート:亜音有星 ロットバルト:優希しおん
で繰り広げる「白鳥の湖」がすばらしくて、あれだけ抜き出して一場面で観たいという感じです。
特にロットバルト の高速回転やビュンと両脚一直線になるジャンプ。凄すぎます。
そこに4人の歌唱、真風・芹香のハモリ、宙組の大コーラス・・・本当に贅沢な場面でした。
Everything To Win すべてを勝ち取るために
アーニャがマリア皇太后の部屋へと入って行って、待ちながらそわそわするディミトリがかわいい。
「彼女には家族を、俺たちは金を」「喜ぶべきなのに俺の心は彼女を求めてる」「すべてを手に入れても、ただひとつだけ失ってしまう」と歌うディミトリが切ない。。
でも、不信感の塊のようになっているマリア皇太后がアーニャの顔さえ見なかったことを聞かされ、「おい!ばーさん!」と失礼顧みず「これは俺の計画で、彼女は何も知らなかったんだ」「彼女は失った家族を取り戻したいだけなんだ」と訴える熱いディミトリ。
Once Upon A December あの日の12月 (リプライズ)
マリア皇太后がアーニャと対峙する場面。
アーニャを偽物と頑なに思い込んで冷たくあたり、試すような質問を繰り返すマリア皇太后。
それに一つひとつ応じるアーニャとのやり取りは見応えありました。
一番印象に残っているのは、「あなたとお母さん(ニコライ二世妃)の正式な名前は?」とマリア皇太后が訪ねた時、「ママよ。どんなに身分の高い人でも私たちにはママです」とアーニャが答えたこと。
そして、あのオルゴール。
「覚えていらっしゃいますか?私たちが最後に会った日のことを・・・」とオルゴールを取り出すアーニャに、
「あの日が最後だなんて思わなかった。どのさよならが最後になるかなんて誰にもわからないでしょ」とマリア皇太后。
ほんと、そう!と客席のワタシ(泣きながら)
She Walks In 彼女が来たら (リプライズ)
マリア皇太后が渡そうとした報奨金を「ほしくないんだ」「彼女が大切な家族に会えた。それで十分さ」と断ったディミトリが、アーニャ=アナスタシアとの別れを決めて歌う曲。切ない。
The Press Conference 記者会見
アナスタシアが見つかったことで大騒ぎになる記者たちを制するリリーさん頼もしい。
Everything to Win すべてを勝ち取るために (リプライズ)
赤いお姫様ドレスを着てマリア皇太后と写真を撮るアーニャ。
皇太后に「あなたの彼はどこ?」と聞かれ、「そんなんじゃない「と答えますが、ディミトリが報奨金を断ったこと、彼はあなたが家族とめぐり会えたことが最高のご褒美だと言っていた」とマリア皇太后に聞かされ「本当のプリンスは身分なんて関係ない」と背中を押されてやっと自分の気持ちに気づくアーニャ。
それまでと打って変わって穏やかな表情になったマリア皇太后が印象的。でも凛とした雰囲気は失わず。
The Neva Flows ネヴァ河の流れ (リプライズ)
ディミトリのもとへ行こうとするアーニャの前に立ちはだかるグレブ。
「ロマノフは全てを与えられ、しかし私たちに何も与えてくれなかった」とアーニャに銃口を向けます。
でもどうしても引き金を引くことができないグレブ・・・「俺は(ロマノフ一家を殺す任務を果たした)父の息子にはなれなかった
というグレブの人間らしさと不器用さが切ない。
この場面で、二人の背後にボリシェヴィキに銃口を向けられ追い詰められていくニコライ二世一家のシーンが織り込まれて、ますます切ない。
Once Upon A December あの日の12月 (リプライズ)
アレクサンドル三世橋で、荷物を持ったディミトリに追いついたアーニャ。
「もし馬車から俺を見つけてももう手を振ったり微笑んだりするなよ。人生で手の届かない人のことをずっと愛し続けるなんて俺にはできないからな」とディミトリ。
「私、夢だったの。初めてのキスは、パリで素敵なプリンスと、って」というアーニャに「俺は君のプリンスにはなれないよ」というディミトリ。
「大公女アナスタシアは許しませんよ」とディミトリにキスするアーニャ。「ディマ!」と、Act Ⅰの My Petersburg で、お父さんが彼のことをそう呼んでいたと聞かされた愛称を初めて口にして。
ハッピーエンドなのになぜか涙が。
幸せいっぱいの二人に重なるように下手にマリア皇太后、上手にグレブが現れ、それぞれに「アナスタシアは存在しなかった。今後も現れることはないでしょう」と宣言します。
そう言った後で、「それでも・・・」と静かに微笑むマリア皇太后の、そばにアナスタシアはいなくても心で繋がっていることを信じているような心の平穏を取り戻した穏やかな表情がとても心に残りました。
そしてラストは冒頭と同じようにロマノフ一家の記念撮影。違うのはそこにディミトリも入っていること。
その写真が映像に変わって、本の1ページに収まり、本が閉じられ、これでおとぎ話は終わりました、な終わり方。
とても素敵でした。
フィナーレ
髭も眼鏡もなく颯爽と登場したプリンス 桜木みなとさん銀橋ソロ → 真風さん+娘役 → 男役群舞 → 真風さん抜けて芹香さんセンター男役+娘役群舞 → 真風・星風 デュエットダンス
という流れ。
何と言ってもハイライトは和希そらくんがフィナーレも娘役として登場したこと。
金髪ショートのウィッグがコケティッシュでとてもよく似合って、真風さんともからみ、群舞では芹香さんとペアでリフトも。
キャストについても少し
アナスタシアがタイトルロールの物語を男性のディミトリを主役に据えるのは宝塚版の定番として、真風涼帆さんのディミトリはとてもよかったです。ビジュアルのよさは元より、幼いころからたった一人で育った翳りを持つ感じや、言いたいことはたとて皇太后相手にでもきちんと伝える男気、アーニャに対する繊細な感情など、とても魅力的なディミトリ。
文中でも触れましたが、歌唱も本当にすばらしかったです。
アーニャの星風まどかさんもまさしくぴったりの配役。
品のある美しさはもちろん、芯も気も強い愛すべき女性像。バレエの場面でドレスアップした姿の圧倒的な華と気品。「アナスタシアブルー」と言われる紺色のドレスの似合いっぷり。歌唱も安定してすばらしく、まるでアナスタシアがまどかちゃんのための役のように感じました。
グレブはとても難しい役だと思いますが、芹香斗亜さんが笑顔を封印して好演。
硬質なボリシェヴィキでありながら、アーニャに心惹かれる複雑な葛藤を描出。眉間に寄せるシワがたまりません。芹香さんの歌唱もすばらしくて、ほんと宙組生、どうなってるの?というくらい歌唱のレベル高いです。
桜木みなとさんのヴラドもとてもよかった(さっきからよかったとしか書いてない(^^ゞ)
お調子者で軽い人物のようでいて、ディミトリとアーニャを温かく見守っている。おじさんだし、髭に眼鏡だし、これまでの桜木さんの範疇にないお役だと思いますが、見事にやってのけてまたステップアップした感じ。
そのヴラドの想い人 リリーの和希そらさんがこれまたすばらしい。
和希そらさんの女役といえば「WEST SIDE STORY」のアニータが記憶に新しいところですが、それと並ぶヒット。歌にダンスに芝居に大活躍で二幕はリリー独壇場といっていいくらいの存在感。本当に何でもできる人だなぁ、それもハイクオリティで。
寿つかささんのマリア皇太后もよかったです。
宙組にはロマノフ王朝の落日を扱った「神々の土地」という大好きな作品がありますが、その作品でもマリア皇太后を演じた寿つかささん。威厳があり品もあって、凛として他人を寄せ付けない雰囲気は孤高の老婦人そのもの。この役にこれほどハマる人が他に思い当たらないくらいです。
基本あて書きのオリジナル作品と違って、主要な役が少ない作品ではありますが、重層的なコーラスはじめ充実した宙組の力量、総合力を存分に発揮した作品。
「エリザベート」や「ロミオとジュリエット」、「ファントム」などのように、宝塚歌劇でこれから何年かごとに上演されることになるのではないかと思える作品ですが、初演がこの宙組で、真風ディミトリ&まどかアーニャで本当によかった。心からそう思える作品でした。
パレード:
エトワール 花音舞
和希そら
桜木みなと
芹香斗亜
星風まどか
真風涼帆
とてもシンプル。
千秋楽にはフルールで公演セットを。
ビーフストロガノフ おいしかったです。
グレブさん(違)もご一緒に。
1月8日からの東京公演 どうか無事に開幕して千秋楽まで駆け抜けられますように のごくらく地獄度 (total 2200 vs 2200 )
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