2021年01月05日

誰が歌う あの日の十二月 宙組 「アナスタシア」 Act Ⅰ


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あまりに好きすぎて書きたいことがあふれて、昨年観た舞台の中で唯一年内に感想を書き終えられなかった作品。
初日と千秋楽含めて6回観劇は昨年の最多リピートです。

1997年に公開されたアニメ映画「アナスタシア」に着想を得て2017年にブロードウェイで初演されたれたミュージカル。
ロシア革命で処刑されたロマノフ王朝の末娘アナスタシアが生きていたという「アナスタシア伝説」にもとづいたロマンティックな物語とすばらしい楽曲の数々・・・ブロードウェイミュージカルと宝塚歌劇の底力を改めて知った思い。

大劇場公演中にタイトルロールで絶対的ヒロインの星風まどかさんが専科異動という衝撃の人事が発表され、「え~っ!これが宙組のまどかちゃん最後なのっ?!まかまど見納めなの~っ!!」という意味でも忘れられない作品となりました。
1月8日から東京公演が開幕しますが、可能ならばたくさんの方に観ていただきたい作品です。


宝塚歌劇 宙組公演 三井住友カード ミュージカル
「アナスタシア」
ANASTASIA THE MUSICAL
脚本:TERRENCE McNALLY
音楽:STEPHEN FLAHERTY
作詞:LYNN AHRENS
潤色・演出: 稲葉太地
音楽監督・編曲: 太田健
編曲: 高橋恵
振付: 御織ゆみ乃  若央りさ  平澤智  百花沙里  三井聡
装置: 國包洋子  衣装: 河底美由紀  映像: 石田肇
出演: 真風涼帆  星風まどか  芹香斗亜  寿つかさ  美風舞良  
凛城きら  桜木みなと  和希そら  紫藤りゅう  留依蒔世  
遥羽らら  瑠風輝  優希しおん  天彩峰里  潤花  亜音有星 ほか

2020年11月7日(土) 1:00pm 宝塚大劇場 1階29列下手/
11月8日(日) 3:30pm 1階3列センター/11月15日(日) 11:00am 1階16列センター/
11月24日(火) 1:00pm 1階13列下手/12月4日(金) 1:00pm 1階15列センター/
12月14日(月) 1:00pm 1階11列上手
(上演時間: 3時間5分/休憩 35分)



物語の舞台は20世紀初頭のロシア。
1906年 サンクトペテルブルクの王宮でロシア帝国皇帝ニコライ二世(瑠風輝)の末娘アナスタシア(天彩峰里)がパリへ旅立とうとしている祖母 マリア皇太后(寿つかさ)からオルゴールを贈られる場面から始まって、1917年 美しく成長したアナスタシア(星風まどか)と両親、姉たちが舞踏会で踊る中、突然、銃声が響いてボリシェヴィキたちが乱入してくるロシア革命へと続きます。
そして、10年後。サンクトペテルブルクがレニングラードと名前を変えた1927年。
悪事に手を染めながら革命後の混乱を生き延びてきた詐欺師のディミトリ(真風涼帆)は、ボルシェビキの追跡から元貴族ヴラド(桜木みなと)を助け、ともに行動するようになります。皇族の末娘アナスタシアが生きていて、見つけたものにはマリア皇太后から莫大な報奨金が出るという噂にディミトリたちもアナスタシアに似た人物を探し出し報奨金を騙し取ろうと計画・・・そこへ過去の記憶を失ったアーニャ(星風まどか)がやって来ます。「パリで誰かが私を待っている。パリに行くための出国許可証が必要」というアーニャをディミトリたちはアナスタシアに仕立てようと考え・・・。


プロセニアムに縁どられた舞台。
本のページをめくるように物語が進んで、ラストは本が閉じられて fin. の文字。
この物語が本の中の世界、ファンタジーであることを感じさせてくれます。
ふんだんに使われている映像は、「そうそう、舞台で映像使うならこうでなくちゃ」という効果的な使い方。
ほぼ歌いっ放し。いずれも名曲揃いの楽曲に応える宙組生たちのソロもコーラスも歌唱のすばらしさ。
美しい衣装と適役好演。
すべてがピタリとハマって、とてもクオリティの高い舞台を見せていただきました。
唯一残念だったのは、宝塚歌劇の作品としては主要キャスト以外の役が少なかったことかな。


あれもこれもと書いていたらとりとめなくなってしまいましたので、せっかく素敵なナンバーの数々に彩られていることもあり、プログラムに掲載されている Musical List の曲順に楽曲と場面の感想などを綴りたいと思います。



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ActⅠ

Once Upon A December  あの日の12月
紗幕が開くと皇太后マリアとアナスタシアが語らう場面で物語が始まります。
明日パリに発つマリア皇太后がアナスタシアにオルゴールを渡し、流れるメロディとともに歌う曲。
「いつかお姉さまたちや弟とパリにいらっしゃい。あなたのおじい様の名前のついた橋があるの。アレクサンドル三世橋。一緒にお散歩しましょう」とマリア皇太后の言うアレクサンドル三世橋がラストシーンに出てくるの、後で考えると本当にステキな演出。

幼いアナスタシアの天彩峰里ちゃん、リアル少女でとてもかわいい。
初めて観た時 それとわからなかった瑠風輝さんのニコライ二世が渋くてステキ。白い軍服の似合い方ハンパない。

アナスタシアがニコライ二世と踊りながら一気に11年の時が過ぎ、ロマノフ王朝最後の輝きのような華やかな舞踏会へと移り、入れ替わって大人のアナスタシア登場。煌びやかなな舞踏会から革命へという流れ。
皇帝一家の家族写真でのシャッター音が響くたびにストップモーションになるのが不安感を煽ります。
この家族写真もラストシーンへの伏線となっている演出。


A Rumor In St. Petersburg  ペテルブルクの噂
グレブ登場。
ボリシェヴィキの軍服をキリリと着こなし、新しいレニングラードがいかにすばらしいか民衆に演説します。
ディミトリはオケピから銀橋へ登場。
薄汚れて色合いも地味な服装なのにカッコいいが過ぎる真風氏。
ワル仲間(秋音光、紫藤りゅう、留依蒔世、鷹翔千空)とスリを重ねる様子、ボリシェヴィキに追われるヴラドを助けるようすが台詞なしてリズミカルに描かれます。

革命後の新レニングラードを民衆たちが歌いますが、宙組伝統のコーラス力を実感。少ない人数とは思えない迫力で重層的なコーラス。全員が銀橋に並んで歌うところは聴いていて胸がいっぱいになって思わず涙が。

アーニャもここで箒で道を掃きながら登場。
爆発音を恐れるアーニャを案じて声をかけたグレブ、ひと目で恋に落ちた様子。


She Walks in  彼女が来たら
今回の宝塚歌劇版のためにNYのクリエイティブが新しくつくってくれた曲。
♪彼女が来たら扉開けてすぐに始めよう 冒険の始まりが近づいている と歌うディミトリ。

壮大でとてもいい曲です。
ラストの♪彼女が来たら~ と歌い上げるところで、「あんなに声張って歌う真風くん初めてかも」とオドロキ。
当初6月5日初日の予定から5ヵ月遅れて開幕。ステイホーム中も無駄にせず歌い込んだのだろうなということが感じられるすばらしい歌唱でした。


In My Dreams  夢の中で
ディミトリとヴラドが住むかつてのユスポフ宮殿にアーニャがやってきて、記憶喪失となった身の上を歌う曲。
星風まどかちゃんの地声歌唱もすばらしい。
ロマノフ王朝華やかなりし頃、ダンスする貴族の影が左右の壁にシルエットで映し出されて切ない。


The Rumors Never End  新たな
新政府のオフィスでアナスタシアと詐欺師の情報を聞いたグレブが ♪新たな噂だ と歌う曲。
上手壁には片手を掲げた巨大なレーニン像のシルエット。
軍服を着て一糸乱れる隊列を組むボリシェヴィキたちが不気味でもあります。


Learn To Do It  やればできるさ
アーニャをアナスタシアに仕立てるため、いろいろな教育をしながら、ヴラド、ディミトリ、アーニャの3人で歌い踊る曲。
レッスンの様子や3人の動き、掛け合いのテンポよさ、そしてアーニャのラップ風早口ことば含めてとても楽しい場面。

♪生まれたのは海辺のパレス~ から始まる桜木みなとさんの歌唱がとてもよい。
お辞儀のレッスンの時、ディミトリが「昔一度だけお辞儀したことがある。それが最初で最後」というのが、後になって「あれか!!」と思える重要な伏線になっていてゾクッとしました。
そして、ディミトリとアーニャのダンスレッスンもねー(涙)。


Nevsky Prospect  ネブスキー大通り
アーニャがアナスタシアでイケると判断したディミトリが夢を叶えるぞ!そのためには何としても出国証明書を手に入れるためにお金が必要だと街に出て歌う曲。


The Neva Flows  ネヴァ河の流れ
再びボリシェヴィキのオフィス。壁にはレーニン像のシルエット。
不穏分子を召喚したグレブがそれがアーニャとわかり、私はそんなに怖い人間ではないとギャグをかます・・・ここ、日ネタになっていました。
私が観た日では、親指なくなったふり、机の向こうで段々階段降りる、左脚あげてY字バランス(ぷるぷる震えて下ろした後内股さすってた)などナド。鬼滅の「全集中」とかもやったらしい。

千秋楽(12/14)は少し長くて、やおら電話をかけ始め「1月8日の東京宝塚劇場 宙組公演初日1枚」→アーニャに「行く?一緒に行く?」と聞く→これまでどんなギャグも冷たくスルーしてきたアーニャですが、さすがにこれにはとまどいながら「ええ」とうなづく(客席拍手)→うれしそうなグレブ「いや、2枚!2枚お願いします」と電話口に→「え?一般発売は12月27日から?」というオチでした。
でも最後にもう一度「一緒に行こうね」とアーニャに言ってアーニャも「はい」と答えていました(客席再度拍手)。

このすぐ後に一気にシリアスに戻れる芹香さんの凄みよ。
♪流れるネヴァ河 春は近い 王国は潰えた 革命に感情はいらない 
と歌う大ナンバー すばらしい。 
この曲でもラストに ♪アーニャ~ と声を張る芹香斗亜さんの歌唱力にひょえ!となりました。みんな、ほんと、すごい。
グレブが「その目・・・」とアーニャの顔を覗き込むのは、目の色が青いと言われているロマノフ家の証を探そうとしていたのでしょうか。
そういえば、二幕でマリア皇太后も同じようにアーニャの目を覗き込んでいました。


My Petersburg  俺のペテルブルク
ディミトリのかつてのワル仲間にからまれてボコボコに返り討ちするアーニャたくましい。
ちなみにここでボコボコにされたワル仲間4人(秋音光、紫藤りゅう、留依蒔世、鷹翔千空)、すぐ次の場面では白い軍服着こなしてアナスタシアの姉妹たちと踊る端正な”ロマノフ男”として登場。タカラジェンヌの振り幅よ。

ペテルブルクの路地裏でひとり生きてきた過去を歌うディミトリ。

ネヴァ河の向こうに広がるペテルブルクの街並みが映像で流れ、回る盆を歩くディミトリとアーニャと一緒に客席の私たちも街を歩いている気分になるとてもステキな演出。
後ろで踊るカップルたちの男性にめちゃダンス上手い人いる!と思ってオペラ上げたら和希そらくんと優希しおんくんでした。
多分私がこの2人のようなタイプのダンスが好きなせいもありますが、スポット当たらない中で踊っていても上手い人はやっぱり目につくなぁ。


Once Upon A December  あの日の12月  (リプライズ)
闇市で買ったオルゴールを「壊れて開かないけど」と言ってアーニャに渡すディミトリ。
そのオルゴールをアーニャがいとも簡単に開けると流れるメロディ。

♪天使の羽根の かすかな記憶 
かつてマリア皇太后と一緒に歌った曲を歌うアーニャ
ディミトリも ♪君の記憶に迷い込んだからか 俺の記憶も 色づきだす
と歌って美しいデュエット。

ロシアの象徴の熊と白鳥が夜空に浮かび上がる美しい背景となって、皇帝一家が登場して踊ります。
皇后アレクサンドラ(美風舞良)高く響く声が印象的でした。


Stay, I Pray You  惜別の祈り
アーニャが下着に縫い付けられていたダイヤモンドを差し出したことで無事に出国証明書を手に入れ、パリに向かうことになった3人。
午前0時発 ブタペスト経由パリ行きの列車に乗り込む人々。

イポリトフ伯爵(凛城きら)の低い声のアカペラからスタートする曲。
アーニャに「神のご加護を」と告げるイポリトフ伯爵の、その後の運命を思うと切ない。
♪去ることなど できようか 今は祈り捧げて・・・
亡命する貴族たちの、もう二度とこの地に戻ることはできないという覚悟と哀切が込められていて、♪わがふるさとに愛を~ というここのコーラスは鳥肌ものでした。



We'll Go From There  新たな旅立ち
パリ行きの列車の場面。
盆に乗って表裏と回る列車、変わっていく窓の景色の映像とともにダイナミックで楽しいシーン。
パリに着いたらリリーに会って、と楽しみを歌うヴラドがかわいい。
そのリリーこと和希そらくんも同じ列車に乗っているという粋な演出(別人だけど)。
もじゃもじゃ頭に髭、丸メガネのおじさんそらくんキュート。


Traveling Sequence/Still  旅の場面/それでもまだ
ディミトリたちが旅を続ける一方で、「もしアナスタシアが本物であれば銃殺」と命令を課せられたグレブ。
アーニャへの想いと任務との葛藤を歌い上げます。


Journey To The Past  過去への扉
フランスに着いて、エッフェル塔の見える場所に立って大喜びの3人。
ヴラドが「前にパリに来た時はこんなに小さかったんだ」と手で小さな子供を示す仕草が、公演期間の最初の方はそうでもなかったのですが、だんだんアドリブ場面になっていて、千秋楽ではなでなでした子供をエア放り投げ、落ちてきた子供をディミトリがエアキャッチする、という展開でした・・・その後、芝居を続けるためにエア子供をポイと捨て去ったディミトリをヴラドがめちゃ凝視していましたw

そんな陽気なヴラドおじさんですが、二人の恋心には当のご本人たちよりも気づいていて、「彼女がアナスタシアとして認められたら、君は残念だなあぁ」とディミトリに言うところも伏線になっていました。


♪この道は どこへ続く 誰も知らない
 でも前を 向いて進む 未来のために

明るい希望を感じさせるディミトリとアーニャのデュエット。
この曲の ♪Home, Love, Family という部分、最近歌詞を見るまでずっと
♪ほーら ファミリー だと思っていたことは内緒です。

笑顔で二人が並んでハッピーな一幕終わり・・・というところにグレブがフレームインして、未来への希望の中に不安も暗示させながら幕。



Act Ⅱ へつづく


posted by スキップ at 23:19| Comment(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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