
今年は芸術文化センター開館15周年ということもあって「第九」に挑戦する2日間2回だけのコンサート。
指揮は芸術監督の佐渡裕さん。「今できる最高の第九を」と。
ベートーヴェン生誕250年特別企画
兵庫芸術文化センター管弦楽団 特別演奏会
佐渡 裕 音楽の贈りもの PAC with ベートーヴェン!第2回
「佐渡 裕 第九」
ベートーヴェン 交響曲第9番 ニ短調 op.125 合唱付き
指揮・芸術監督: 佐渡 裕
ソプラノ 並河寿美 メゾ・ソプラノ 清水華澄
テノール 行天祥晃 バリトン 甲斐栄次郎
合唱: ひょうごプロデュースオペラ合唱団
管弦楽: 兵庫芸術文化センター管弦楽団
2020年12月13日(日) 2:00pm 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
1階E列(最前列)センター (演奏時間: 1時間30分)
演奏前に佐渡裕さんが一人登場してプレトーク。
「佐渡さんが兵芸で第九って珍しくない?」と思っていたのですが、やはり、「12月は他で・・1万人とかの第九を指揮することはありますが、ここではやっていません。この会館のオープンの時に演奏して、5年の周年の時に演奏して以来です」とおっしゃっていました。つまり3度目ということですね。
「なので、今日のプレトークは第九について詳しく話そうと思います」ということで、第一楽章から第四楽章まで、メロディラインや特徴についてレクチャーしてくださいました。
ベートーヴェンについても、「音楽室で難しい顔をした姿ばかり見ていますが、すばらしいメロディメイカーで詩人でもあります」と。
特に印象的だったのは第九の「歓喜の歌」でベートーヴェンが最初に付け加えた部分
ああ友よ このような音楽ではなく
もっと心地よく もっと喜びに満ちた調べに
声を合わせようではないか
という歌詞
「ベートーヴェンは今の世の中よりもっとすばらしい世界に進もうではないか、と言っている訳です。人間賛歌であり応援歌。まさに今、この時だからこそ第九を届けたいと強く思います」という佐渡さんの言葉に胸がいっぱい。
また、客席にいらしていた井戸兵庫県知事を「先ごろ退任を表明されて驚きましたが、井戸さんはこの会館のオープン以来15年間、ずっと一緒に走り続けてくださいました」と紹介されていました。お二人の信頼関係が感じられるよう。
私は兵庫県民ではありませんが、芸術文化センターは大好き(特に中ホールはこれまで行った数々の劇場の中で一番好き)で、こんなすばらしいホールをつくって、充実したプログラムで運営を続けていらっしゃること、心から感謝しています。
そんな訳ですでにウルウルしながら演奏会スタート。
前4列を空けて、客席はE列から。ステージと客席の間は、天井に向けて風を送るエアカーテンで仕切られていたのだそうです。
オーケストラはマスクをしている人、していない人がまちまち。個人の裁量に任されたのかな。
第二楽章まで演奏された後、ソリストと合唱団、ティンパニ以外のパーカッションの方たちが加わりました。
合唱はこれまでは120人規模だったところを40人(ソプラノ、アルト、テノール、バス 各10人ずつ)、しかもひょうごプロデュースオペラ合唱団という、関西一円で活躍するプロの声楽家たちによる特別編成の合唱団。佐渡裕さんプロデュースオペラでもおなじみです。
合唱団とオーケストラの間にはアクリル板、合唱団の皆さんはマウスシールドはもちろん、何か首にかけていらっしゃるなと思ったら、吐く息が客席などに向かわないように上方へ逃す携帯扇風機なのだとか。
佐渡さんは楽譜を見ず暗譜で指揮。
第九は目の前にドラマが広がるような交響曲ですが、佐渡さんの指揮もとてもドラマチックで躍動的。
全身を使って渾身の力で大きく指揮したり、低くかがんだり、ティンパニ一人に向かって一直線に指揮したり・・・一つひとつの動きを観ているだけで楽しくて、その佐渡さんの指揮に合わせてオーケストラの演奏が強くなったりとてもやわらかくやさしい響きになるのも本当に凄い。
オーケストラの演奏の巧拙まではよくわからないのが正直なところですが、最初に第一楽章のあの耳慣れた旋律が聞こえただけで涙があふれて、それから折にふれて(笑)涙を流しながら聴くこととなりました。
私にとっては中だるみしがちな第二楽章も、佐渡さんのプレトークのお陰で「あー、おっしゃっていたのはこういうところか」とわかったり、とてもおもしろく聴くことができましたし、大好きな第三楽章の美しさは格別でした。
そして圧倒的なドラマの第四楽章。
合唱も人数の少なさを感じさせないすばらしさ。
このブログにも書いたことがありますが、佐渡さん指揮の「1万人の第九コンサート」に合唱団の一員として何度が出演した経験がありますので、歌詞を心の中で口ずさんだり、佐渡裕レッスンで言われたことを思い出したり。
Wollust ward dem Wurm gegeben, und der Cherub steht vor Got!
の vor Got! のところでいつもこみ上げるものがあって涙をあふれさせながら歌っていたのですが、今日聴いていてもご多分に漏れず泣いてしまいました。
本当にすばらしい第九を聴かせていただいて、涙ぬぐったり拍手したりで忙しく(←またか)、大満足だったのにアンコールがありました。
ソリストの4名の方たちが舞台前方に出ていらしてヴェルディの「椿姫」から「乾杯の歌」。
もちろん佐渡さんの指揮とPACの演奏で。
近くから聞こえる歌声がオーケストラの後ろの檀上にいらした時とは違った迫力があり、曲も歌詞も楽しいしで泣き笑いです。
笑顔あふれるカーテンコール。
佐渡さんの感極まったような表情がとても印象的でした。
諸事情あってかなり寝不足だったけれどぴくりとも眠くならなかった(行き帰りの電車では爆睡) のごくらく度


