2020年12月11日
三銃士は今日も行く 「獣道一直線!!!」
鈍獣(2004年)、印獣(2009年)、「万獣こわい」(2014年)と続いてきた生瀬勝久、池田成志、古田新太によるユニット“ねずみの三銃士”シリーズ第4弾。
ホラーコメディといったテイストで毎回グロテスクな殺人や後味悪~い結末を提供してくれるこのシリーズ。
今回のモチーフは10年ほど前に世間を騒がせた首都圏連続不審死事件の木嶋佳苗がモチーフです。
パルコ・プロデュース
《ねずみの三銃士》第4回企画公演 「獣道一直線!!!」
作: 宮藤官九郎
演出: 河原雅彦
音楽: 和田俊輔 美術: BOKETA 映像: 上田大樹
出演: 生瀬勝久 池田成志 古田新太 山本美月 池谷のぶえ 宮藤官九郎
2020年11月22日(日) 1:00pm ロームシアター京都 メインホール 1階6列センター
(上演時間: 2時間35分/休憩 20分)
物語: 複数の殺人事件に関わったとされる苗田松子(池谷のぶえ)が働く福島の練り物工場に、それぞれ問題を抱え更生のために3人の役者 生汗勝々(生瀬勝久)、池手成芯(池田成志)、古新田太(古田新太)が送られてきます。松子の語る過去とそれを再現ドラマとして演じる役者たち、松子を取材するドキュメンタリー作家 関(宮藤官九郎)、その妻で出産を控えながら夫の取材に協力して苗田松子について調べるうち彼女にのめり込んでいくかなえ(山本美月)の物語が時空を交錯して展開します。
ねずみの三銃士といえばスプラッタ、というイメージがありますが、その風味は今回わりと薄め。
ラストの三人の男たちと関のくだりで一気に来る感じですが、それだって、後味は確かに悪いですが、「あぁ、あの中に突き落とされるんだなぁ」と予測できてしまうので衝撃は少なかったです。
むしろ、松子がお金を手に入れるために見せる冷徹さの方が怖ろしさ滲ませていますし、かなえが松子に傾倒していく姿にもゾワゾワしたものを感じて、そういうメンタル面の怖さが強調されている印象でした。
木嶋佳苗がモチーフとはいうものの、「男たちがなぜあれほど易々と、(普通のおばさんのように見える)木嶋佳苗に騙されるのか」という事件の真相に迫るあたりは、 “媚薬”を飲まされたことによって男たちの目には松子が若くて綺麗な女性に見える、というタッチで描かれていて、そこは池谷のぶえさんと山本美月さんが入れ替わる演出でした。
が、これはいささか安易ではないかなと思いました。客席結構ウケて笑い声も起きていましたし、ルッキズムがどうとか深く考えずに観ればいいのかもしれませんが、それにしてもそういう「入れ替わり」は同じ宮藤官九郎さん脚本の「メタルマクベス」冒頭の魔女のシーンでも使われていて、2006年初演だったことを思うと、いかにも使い古された手法という印象です。
松子を演じる池谷のぶえさんが縦横無尽、演技も存在感も突出していました。
いやこれ、あの三銃士を一人で一手に引き受けている感があって、元々好きな女優さんではありますが、惚れ直したゼ。
池谷さんといえば、2月26日の政府要請を受けて出演舞台の「お勢、断行」が全公演中止となった時、「舞台という儚く尊い時間と空間を、お客様、関係者の皆さま、共演者の皆さまと一緒に、また穏やかに共有し合える日々が少しでも早く訪れるよう祈ります。」ととても心に残るツイートをされていましたが、そんな言葉を発する人とは思えない毒婦っぷり・・・いやはや女優とはおそろしき生きものかな。
「再現ドラマ」という設定で、松子に騙され殺された3人の男たちばかりでなくその周りの人たちまで、三銃士がいろいろな”役”を見せてくれるのも楽しかったです。
中では、古田新太さん演じる刑務所を脱走して松子のもとに現れる殺人犯がお気に入り。
狂気を帯びた冷酷な殺人鬼、しかもエロいってフルタの真骨頂じゃん!
もちろん個々の役者さんの演技はとても楽しめましたし、コロナ関連の時事ネタも織り交ぜられていかにも「今年の芝居」でした。
ご当地ネタも挟み込まれるギャグはおもしろかった・・・「蜷川さんもその灰皿は投げてない」っていうの、前日に「真夏の夜の夢」で灰皿ネタ聴いたばかりでしたので不覚にも声あげて笑ってしまいました・・・が、何でしょう、個人的に最後まで”乗り切れない舞台”で、「ねずみの三銃士」これまで3作観てきてこんな感覚は初めてだったな--。
それが自分の感性がこの世界観と合わなくなってきたせいだとしたら切ない の地獄度 (total 2184 vs 2184 )
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください