2020年12月01日
海へ還った鷹 星組 「エル・アルコン-鷹-」
2007年に安蘭けいさん主演の星組で上演された「エル・アルコン-鷹-」
悪役フェチの不肖スキップ、ダークヒーロー ティリアン・パーシモンが大好物でして、それをこれまた大好きな礼真琴さんが演じるとあっては見逃す訳には参りません・・・とチケ取りに精を出した結果、11月20日初日から11月28日千秋楽まで8日間13公演中、ライブ配信含めて5日間5公演観るという次第に・・・観なかった日が3日だけってどーなん?(笑)
宝塚歌劇 星組公演
グランステージ 「エル・アルコン-鷹-」
~青池保子原作「エル・アルコン-鷹-」「七つの海七つの空」より~
原作:青池保子
脚本・演出: 齋藤吉正
作曲・編曲: 寺嶋民哉 青木朝子
振付: 御織ゆみ乃 若央りさ 百花沙里
殺陣: 清家三彦
出演: 礼 真琴 舞空 瞳 愛月ひかる 白妙なつ 音波みのり 大輝真琴
輝咲玲央 夢妃杏瑠 ひろ香祐 紫 り 音咲いつき 綺城ひか理 有沙瞳
天華えま 桜庭舞 二條華 天飛華音 咲城けい 水乃ゆり/万里柚美 ほか
2020年11月20日(金) 3:00pm 梅田芸術劇場メインホール 1階8列センター/
11月23日(月) 4:30pm 2階4列上手/11月26日(木) 1:00pm 2階1列下手/
11月27日(金) 11:30pm 1階9列下手/11月28日(土) 1:00pm ライブ配信視聴
(上演時間: 1時間35分)
予習のつもりで観た2007年版DVDの感想はこちら
(天華えまさんエドウィンだけ配役予想当たってる)
物語の舞台は強大な勢力を誇るスペインに対してイギリス、フランスが覇権を争う熾烈な戦いを繰り広げていた16世紀後半のヨーロッパ。
イギリス海軍中佐ティリアン・パーシモン(礼真琴)は、いつの日かスペインの無敵艦隊を率いて世界の七つの海を制覇するという野望を抱き、イギリス海軍で名声を高める一方、スペイン側と通じ夢の実現に向け次々と策を練っていました。一方、ティリアンに陥れられ死刑となった大商人グレゴリーの息子ルミナス・レッド・ベネディクト(愛月ひかる)は父の復讐のため海賊となってティリアンを追います。また、ティリアンは、フランス貴族の称号を持つ女海賊ギルダ・ラバンヌ(舞空瞳)と激しい攻防を繰り広げながら、愛と憎しみの狭間で2人の想いは複雑に絡み合います・・・。
率直なところ、脚本・演出はあまりうまくできているとは思えない、というのは初演を観た時と同様。
長編漫画のダイジェストのようになっていて、ティリアンやレッドの心の声という名の説明台詞がやたら多くて若干興覚め。
映像使っている割には幕前が多くて、「ヨシマサ、しっかりしてくれよ」と思いましたが、思えば齋藤吉正先生、これが大劇場演出デビューだったのでしたね
出演者が35人と通常公演の半分程度の上に、盆や大セリも使わない演出は迫力にも欠けますが、これは“全ツ仕様”だから仕方のないことでした。
が、それを補って余りある礼真琴ティリアンの魅力炸裂。
まず、開演アナウンスの超低音ヴォイスにヤラレます。
初日に第一声聴いた時、「ティリアンやん!」と思いました。
友人から婚約者を奪い
邪魔になればその女性を殺し
罪もない善良な商人を陥れ
自分の父かもしれない男の首に縄をかける・・・
幼いころ、スペイン人と罵られいじめられていたティリアン少年が、どのような紆余曲折を経て自分の野望のためならどんな悪事も厭わない冷酷非情な人間となったのか、物語の中で語られることがなく知る由もありませんが、スペインの無敵艦隊を率いて七つの海を手中に収めることは、野望であるとともに自分の出自にケリをつけるための宿命だったのではないかと思います。
自分の体を流れるスペイン人の血
自分の向こうに、息子ではなく愛するジェラードを見る母
父かもしれないジェラード・ペルーはスペインのスパイ
そんなすべてから、スペインを、世界の海を治めることによって解き放たれたかったのではないかと。
ティリアンがそんな思いから解放されるのが、自らの希望の象徴でもあった旗艦エル・アルコン号とともに燃え尽きて海に沈むことだったという結末はあまりにも切なくて、毎回ナミダ。
漆黒の翼を翻し 鷹は海を目指し
海に生き 海へと還る
と歌詞にあるように、ティリアン、海に還ったのね。
ほとんど感情を表に出さないティリアンが唯一むき出しにしたのが、レッドの刃からティリアンを庇ってギルダが死んだ後、「貴様を倒すっ!」とレッドに向かった時。憤怒の表情をしていました。ギルダを心から愛していたのね。
そして、その感情の爆発がなかったら、冷静にレッドと対峙していたら、きっとあんな不覚をとることはなかっただろうことを思うと、その愛が一層哀しく、切ないです。
卓越した歌とダンスはもちろん、演技にも定評のある礼真琴さんですが、このティリアン役はハードル高いのではないかと思っていました。
が、難なく飛び越えてきましたよね。
ほとんど表情を変えず、どんな時も冷静で眉一つ動かさずに悪事を働き、女性を誘惑し、のし上がっていくティリアン。
クールで、色っぽくて、孤独で、哀愁も漂い、そしてエロい・・・礼真琴ティリアン、好き過ぎる。
低音にますます磨きがかかって、
「レディ ペネロープ もう一度ここへ座りなさい」
「降参しますか。Ouiですか、Nonですか」
・・・冷たい響きを湛えた有無を言わせない言い方にシビレる。
あの濃厚なラブシーン大丈夫かいなと思っていたギルダとのシーンも、危うさと色気たっぷりに繰り広げてくれました。
ギルダが最初に部屋に入ってきた時の、「これはマドモワゼル」とわざとらしい猫なで声とか、「レッド、お前の負けだ」と言った後の高笑いとか、声の表情の変化も自由自在。殺陣のスピードと迫力も向かうところ敵なしといった趣き。
すごく研究したであろうビジュアルも衣装の着こなしもピタリとハマって、「礼真琴のティリアン・パーシモン」をつくり上げていました。
そして何といってもあの歌声です。
大ホールに響き渡る ♪エ~ル アルコ~ン エ~ル アルコ~ン 耳に残って離れません。
あまりにもハマり過ぎていて、千秋楽のご挨拶で白妙なつさんが「極悪非道のティリアンが純粋なロミオになれるのか、未来の母は心配です」とおっしゃっていたことにマジ同感です。
舞空瞳さんについても「ギルダのような大人の女性はまだ荷が重いのでは」と思っていましたが、全く杞憂でした。
すばらしかった。
華やかで強くてしなやか。フランス貴族の品もある誇り高い女海賊。
立ち姿が美しく、ダンスは元よりお得意ですが、歌もこの休演期間中さぞ努力したであろうことが感じられる成長ぶり。高音もよく伸びて、堂々たるヒロインでした。
ウェサン島の場面でティリアン、レッドと3人で
七つの海が待つ物語 七つの空が誘う奇跡
沈むことのない 太陽の帝国へ
グランブルー グランメール グランスカイ
と歌う三重唱のシーン 素敵でした。
ルミナス・レッド・ベネディクトの愛月ひかるさん。
個性的な濃い役が多い印象の愛月さんに白い王子様のような役は新鮮。
声のトーンも少し高めで若々しい印象です。
初演で柚希礼音さんがやった役で、「再演時に初演の役者さんや演出と比較しない」ように気をつけているワタクシですが、レッドの歌う「正義と良心」だけはですね、「ティリアン・パーシモン 冷たい目をした男だ」という台詞込みで刷り込まれておりましてですね、ちえちゃんの声で脳内リフレインしてしまいました。
柚希さんは法律を学ぶ学生だった時と海賊になった時のギャップが大きすぎ(海賊似合いすぎ)だったのですが、愛月さんはそのあたりバランスよく、いいおぼっちゃん感残しつつの海賊レッドという印象でした。長身にあの海賊衣装、映えますね。
レッドとともに戦うキャプテン・ブラックは天飛華音さん。
抜擢だと思われますが、野性的な持ち味に荒々しくて義と情に厚いブラックがお似合いでした。
声が少し甲高い印象ですが、102期生でまだ研5なのでこれからますます磨きをかけていただきましょう。
♪乙女心がグレーに染まる でパーシモン興の愛人の一人として女役でも登場。いや絶対オトコじゃんという感じで目が離せませんでした(笑)。
天飛くん同期の咲城けいさんはニコラス。
原作ではニコラスがティリアンの相手役では?と言われるくらいティリアンのそばにいって忠実に仕える役を端正な佇まいで出過ぎず控えめすぎず演じていて好感。
先述したティリアンの最期で、「逃げろ、艦長命令だ!」と言われても「いやです」と逃げず、ティリアンとともに炎に包まれるの、泣けます。
幼いティリアンに影響を与えたジェラードは綺城ひか理さん、ティリアンに婚約者を奪われるエドウィンは天華えまさん。
エドウィンの婚約者 ペネロープは有沙瞳さん。
ティリアンと抱擁しながら肩に回した手が細かく震え始めて、その時は胸に剣を突き立てられていて、「笑ってくださいペネロープ。私はあなたの笑顔が好きですよ」と言われて少し微笑みながらティリアンの腕の中で死んでいくペネロープの演技が圧巻でした。
パーシモン卿の愛人シグリット 音波みのりさんが強気で華やかで強気で美しい。
ラストの赤いドレス以外は基本的に濃紺のドレスをお召しですが、出てくるたびに髪型や髪飾り、アクセサリーを全部変えていらして、すばらしいなと思いました。娘役の鑑。
パーシモン卿の後妻に迎えられて後にレッドの仲間になるジュリエットの桜庭舞さんの♪乙女心がピンクに染まる~ のキュートなはじけっぷりも印象的でした。
そういえばジュリエットが初めてパーシモン卿と対面する場面、千秋楽のパーシモン卿 朱紫令真さん
普段は「ベロベロバァ~」と言うところ、
♪わしの心も ピンクに染・ま・る と歌って片手でハートつくってジュリエットの方に差し出していました。
ジュリエット桜庭さんも片手ハート差し出して二人で合わせて💛つくったところでパーシモン卿がジュリエットに投げキッス。
ジュリエットは「おじいちゃん やだぁ~」となるアドリブが展開されましたww
これら娘役さんたちはブランシュ・フルールの女海賊としてバイト(笑)出演していて、それを見つけるのも楽しかったな。
当初6月12日から7月1日まで全国ツアーが予定されていた公演。
大楽の梅田はもちろん、富山や名古屋にも行くつもりでチケット取っていたのに中止となった時はガックリ_| ̄|○しましたが、8日間とはいえ梅田芸術劇場で上演されたこと、観劇できたことに感謝。
→ ショー「Ray」につづく
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