4回観たキャストはこちら。
かわいいと評判だった中村海流くんのビリーを観られなかったのは残念だったのと、4人のマイケル、3人のデビーのうち一人ずつ観ていませんが、大人のダブルキャストはコンプリート。
みんな違っていて、みんなすばらしかったな。


11月1日 11月6日


11月13日 11月14日
ミュージカル 「ビリー・エリオット ~リトル・ダンサー~」
脚本・歌詞: リー・ホール
演出: スティーヴン・ダルドリー
音楽: エルトン・ジョン
振付: ピーター・ダーリング
美術: イアン・マックニール
翻訳: 常田景子 訳詞:高橋亜子
2020年11月1日(日) 12:00pm 梅田芸術劇場メインホール 1階9列(6列目)センター/
11月6日(金) 1:30pm 3階2列センター/11月13日(金) 5:30pm 1階14列下手/
11月14日(土) 12:00pm 1階24列センター
(上演時間 3時間/休憩 25分)
本編の感想はこちら
「ウィルキンソントーク ディスタンスVer.」のレポはこちら
2017年初演の感想はこちらとこちら
■ ビリー
もう誰がいいとかどこがいいとかは超越していて、みんな本当にすばらしい。
バレエはもちろん、タップやコンテンポラリーダンス、器械体操、そして、演技に歌。
少年たちのポテンシャル、計り知れない。
3年前にとても驚いたことが、3年の時を経てまた別の少年たちでまた目の前で繰り広げられるなんて。
川口調くんはとても表情豊か。
これまでにも舞台やTV出演の経験があるということで、4人の中では一番演技がお得意だったのかな。
やんちゃな男の子感があふれていて、明るくて負けん気が強くていかにも生意気盛りで手のかかかる可愛い末っ子といった風情でした。
利田太一くんは長い手足がとてもしなやかでバレエシーンがとても美しい。ピルエットもとても綺麗でした。
演技が細やかで、例えばおばあちゃんのミートパイをごみ箱に捨てる時、さも臭いもののようにすごく手を伸ばして自分の身体から離して捨てていたのが印象的でした(私が観る限り他のビリーはここ、わりとあっさりしていた)。
歌は他のビリーに比べると少し声が低い印象で、少年から青年への過渡期が感じられて、「このビリーを観られるのは今だけ」感が強い。上演できて、太一くんがビリーとして舞台に立てて本当によかったと改めて思いました。
渡部出日寿くんはバレエ界のサラブレッドということでバレエが美しいとは聞いていましたが想像以上でした。
バレエ教室のレッスンでアラベスクやる時、ウィルキンソン先生が「オルゴールの人形のように」と言いますが、本当に人形のように全くブレない体幹に驚き。Solidarity ラストのアラセゴンターンからのピルエットなんて綺麗なまま何回転しているの?というくらい。ゆったりした動きばかりでなく、Angry Danceの憤りが爆発する激しいタップダンスにも圧倒されました。
千秋楽カーテンコールには4人のビリーが揃って登場。
鳴りやまない拍手に最後は幕前に4人だけで出て来てくれたのですが、ニコニコ手をふる川口調くん、利田太一くん、「もうそろそろ(終わり)かな?」という表情で幕の方を見る中村海流くん、「ありがとうございましたっ!」と客席に向かって言う渡部出日寿くん(この日のビリー)と、4人4様、かわいかったです。
■ 父ちゃん
益岡徹さんは初演から続投ですが、前回は吉田鋼太郎さんの父ちゃんしか観ていませんので、橋本さとしさんとともに今回初見でした。
無骨で不器用ながらビリーはじめ家族を心の底からの深い愛情で包み込むジャッキー父ちゃん。
クリスマスパーティで亡き妻が好きだった歌を歌い、
「俺は見た 二人の遥かな未来」という歌詞のところで言葉に詰まってしまうジャッキーが切ない。
まるで迫り来る時代のうねりに逆らうことができないと悟っているように。
ビリーの才能に可能性と希望を見出し、お金のためにスト破りをするジャッキー。
そんな父に怒り殴りかかるトニーにあえて自分から殴られようとするようにも見えました。
仲間たちから差し出されたお金に「すまん。みんな本当にすまん」と絞り出すように応じるジャッキー。
痛々しくてたまらないジャッキーだから、あのオーディションでビリーの Electricity の後
泣き笑いの表情で、でも少し誇らしげに言う「あいつ、俺の息子なんです」がとても心に染みて毎回落涙。
父ちゃん二人ともよかったですが、益岡徹さんの方がよりエモーショナルな印象。
益岡さんにとっての千秋楽となった11月13日のソワレでは、ラスト ロイヤルバレエスクールへと旅立つビリーの荷造りのシーンで涙が止まらず、客席に背を向けて涙をぬぐっていらっしゃいました。
橋本さとしさんは「カッコイイ兄貴」というイメージがありますので、こんなお父さん役をやられるようになったんだと何だか感慨深かったです。歌はさすがに聴かせてくれました。
■ ウィルキンソン先生
こちらも初演から続投の柚希礼音さんと、新加入の安蘭けいさんのダブルキャスト。
柚希さんについては初演の時に散々語りましたので(笑)、今回は一つだけ。
この作品はオリジナルクリエイティブスタッフの厳しい注文があって自由に変えることはできない・・・けれども初演と同じというのではなく、3年間という期間に自分自身が他の舞台で女優として経験を積んだことや感じたことを少しでも役に込めたい、といったニュアンスのことをおっしゃっていたのですが、その通りのウィルキンソン先生だったと思います。
うまく言えませんが、ビリーを包み込む感じが深みを増して、より母性を感じるようになっていました。
ビリーにとってウィルキンソン先生は才能を見出してくれた恩人ですが、彼女にとってもビリーと出会ったことは希望であり幸せであったと信じられる造形でした。
最初にビリーの才能の片りんを見た時の「おや?」という顔をはじめ豊かな表情は何度見てもいろいろ発見があります。歌声もよくのびて、ダンスはキレッキレ。立ち姿が美しく、過去はスターダンサーだったのだろうなと思わせる華やかさも相変わらずでした。
安蘭けいさんのウィルキンソン先生は、柚希さんよりもさらに気だるそうでやる気もなさそうに見えます。
ぶっきらぼうだし、クールビューティで表情の変化が少ないこともあって、一見怖そうですが、実は情に厚く熱心な指導者であるところは同じ。
とても愛情表現が不器用な人なのかなと感じました。ビリーを愛することができたように、本当はデビーにも愛情を感じているけれど、きちんと向き合えていないだけなのかもしれないという感じ。
柚希さんウィルキンソン先生が「デビーを産んだためにバレエダンサーとしての自分のキャリアを失った」のに対して、安蘭けいさんウィルキンソン先生は「「プロを目指していたわけではない」という設定の違いのせいがあったのかもしれません。
とうこさんの歌声聴くの久しぶりでうれしかったし、相変わらずすばらしい歌唱でもっとミュージカルにも出演されればいいのにと思いました。We were Born to Boogie で柚希さんがやっていた側転はとうこさんはやっていなかったですね。
大千秋楽カーテンコールではあの大きな瞳に涙をいっぱいあふれさせていらっしゃって、この公演がとうこさんにとってどれほどかけがえのないものだったかひしひしと感じました。
■トニー
ビリーのお兄ちゃん トニーは中河内雅貴さんと中井智彦さん。
トニーはいつも何かに怒っているイメージですが、怒りの中に嘆きが感じられて、ともすれば泣き出すんじゃないかと思える中河内雅貴さんトニーに対して、中井智彦さんは兄として長男として、より強くあろうとしている硬質な感じかなぁ。
お二人とも歌唱すばらしい。
■ オールダービリー
大貫勇輔さんと永野亮比己さん。
大貫さんは初演から続投。こうしてみるとダブルキャストは皆一人ずつ続投+新キャストですね。
永野亮比己さんは存じ上げなかったのですが、劇団四季ご出身でバレエがお得意な方なのだとか。
ビリーとオールダービリーが踊るスワンレイクは何度でも観たくなる美しいシーン。
お二人ともビリーを温かく見守りながら超絶技巧を何なくやってのけていらして凄い。
多分バレエとしては永野さんの方が正統派なのだと思いますが、個人的な好みで言うと踊りのタイプとしては大貫勇輔さんの踊りが好きでした。あくまでも素人目ですが、踊りに余白があるというか。
ロンドンのオーディション会場でビリーのお父さんと絡む煙草を吸うダンサー役でも出演されていましたが、ここも大貫さんの方がユーモアまじえて芝居心あるように感じました・・・が、永野亮比己さん、いい声でした。やはり劇団四季の人は発声が違うのかしら。
■ 母ちゃん
出番は少ないですが、ビリーの亡くなった母ちゃん 家塚敦子さん。
あの包み込むような温かくてのびやかな歌唱はいつも聴き惚れてしまいます。
そして
成長する姿 笑顔も見れなかった
泣きじゃくる顔も 駄々こねて暴れて わめく姿も
でも どうか ビリー わかっていて ずっとそばにいたことを
いつも ビリー あなたのすべてを誇りに思ってる
という歌詞で毎回必ず泣くというおまけつきです。
書ききれませんが、おばあちゃんもジョージも、マイケルもデビーも、トールボーイやスモールボーイも、バレエガールズも、みんな愛おしい。
「次にビリーに会えるのは3年か4年後」という発言もあって、また再演されることを楽しみに待ちたいと思いますが、2020年のビリーとキャストたち、忘れません。
見せてよ シャラルラ きらめく夢 のごくらく度


