
松本幸四郎さんが毎年楽しそうにやっていらっしゃる妄想歌舞伎。
本当は去年が10周年のはずでしたが台風で中止になったため、11回目の今年が10th Anniversaryとなりました。
とはいえこの状況下、ありがたいことに配信で拝見しました。
妄想歌舞伎は日曜日の夜開催ということが多く、なかなかこれだけのために状況という訳にもいかず、私が過去にたまたまタイミングよくナマで観ることができたのは1回だけ。調べたら2012年の第3章でした(こちら)。もう8年も前なのかぁ~。
松本幸四郎&君野倫子 presents
「妄想歌舞伎 11章 〜1回休んだけど10周年〜」
出演: 松本幸四郎 君野倫子(サンフランシスコからZOOM参加)
司会: テリー植田
2020年11月7日(土) 7:30pm 東京カルチャーカルチャー
(11月19日 配信アーカイブ視聴/配信時間: 2時間10分)
10周年ということで、まずは第1回目に登場したいろいろな扮装をした8人の幸四郎さんのコマ割りの写真が映し出されました。
長髪だったり女装もあったり・・・今より少しスマートな幸四郎さん、どんな拵えでも素敵だな(贔屓目)。
「10回全部来てる人」とテリーさんが会場に振ると何人も手が挙がったらしく「おお~」という雰囲気の中、
「10歳年とったということですよね」とその人たちに対してぼそっとつぶやく幸四郎さんw
今年は2025年大阪万博のアンバサダーに就任ということで名刺もつくっていただいたけれど使うところがない。今日だ!ということで来場者に配られた模様。いいな、それ私もほしいです。
「この10年で一番印象に残ったことは?」と質問された君野倫子さんは「歌舞伎 on Ice」とおっしゃっていました。
「あの後、実現されましたし」と。ほんと、歌舞伎フェイスパックもそうですが、とてつもない妄想と思っても実現しちゃう幸四郎さんの凄さよ。
これまでの10年
妄想歌舞伎の10年を振り返るのかと思いきや、10年間の舞台を1年1作ずつ振り返るものでした。
幸四郎さんがリストアップされた作品は
2010年 「染模様恩愛御書」 (日生劇場版/初演は2006年 松竹座)
2011年 「江戸宵闇妖鉤爪」(松竹座版/初演は2008年 国立劇場)
2012年 「大當り伏見の富くじ」
2014年 「陰陽師」
2015年 「伊達の十役」
ラスベガス Kabuki Spectacle 「Koi-Tsukami」
2016年 歌舞伎NEXT 「阿弖流為」
ラスベガス Kabuki Spectacle 「KABUKI LION」 獅子王
2017年 「東海道中膝栗毛」
「氷艶 HYOEN 2017 -破沙羅-」
2019年 三谷かぶき 「月光露針路日本 風雲児たち」
蝙蝠の安さん
2020年 「幸希芝居遊」
それぞれの作品について幸四郎さんが振り返るのですが、初めて聞くこともすでに知っていることも含めて楽しかったです。
日生劇場の「「染模様恩愛御書」は、帝劇で堂本光一くんの「Shock!」の階段落ちが話題を集めていて、「高さは低くていいので階段の数は多く」というのにこだわったのだそうです(負けず嫌い)。
「江戸宵闇妖鉤爪」のポスターは歌舞伎公演としては珍しくスーツ着用で、江戸川乱歩さんの邸宅で撮影したのだとか。
「大當り伏見の富くじ」の時(2012年2月)歌舞伎座で勘九郎襲名興行をやっていて、それに負けないようにと気合入れてやりました・・・ってこれよくお話になっていますね。ほんと、負けず嫌い(笑)。
この時は幸四郎(当時 染五郎)さん、愛之助さん、獅童さんが昼夜全演目に出演という花形公演でしたが、全員集まってのお稽古は3日間だけだったそうです。「伏見の富くじ」なんて新作なのに、歌舞伎役者さんってほんと凄い。
「伊達の十役」は本番の前にポスター撮りが十役全部衣装も鬘も変えて、とにかく大変だったと。
「阿弖流為」は何年か前の明治座の記者会見の時には決まっていて、「阿弖流為やるなら勘九郎さんの田村麻呂と七之助さんの立烏帽子意外に考えられない」と二人に直接話したのだそうです(多分2013年の明治座五月花形歌舞伎だと思われる)。
七之助さんには「兄弟セットじゃない。女形としてあなたにやっていただかいたい」と話して、今すぐ返事という訳にはいかないだろうからと言ったら、その後半年か1年位返事を待たされたそうです。
幸四郎さん、七之助さんと初めて「与話情浮名横櫛」やった時だったかに「僕の与三郎以外でお富やらないで」って言ったとかいう記憶があるのですが、ほんと七くんのこと好きですよね。
三谷かぶきの話では「三谷さんのホンはすばらしいとわかっていますので、前の日にホンがあがろうがそれをやるのが役者」という幸四郎さんの発言に、「遅いってクレームじゃないですよね?」とテリーさんのツッコミが(笑)。
三谷かぶきについては「また次回作ありそう」と幸四郎さん明言されていました。
こうしてみると、ラスベガス公演以外の演目は全部観ていますので、私にとっても幸四郎さんとともに東へ西へ旅した10年でもありました。
テリーさんは、初めてこの「妄想歌舞伎」の企画を幸四郎さんのところへ持って行った時、幸四郎さんは幕間でお化粧していてひと言もしゃべらず、「怖いなぁ」と思っていたら、「何時に行ったらいいの?」とおっしゃったそうです。
何だかとっても幸四郎さんらしい。その光景や話しぶりが目に浮かぶようです。
これからの10年
2021年 鬼滅の刃
2022年 歌舞伎NEXT
2023年 アカデミー賞
10年といいながらこの3年だけだったのですが(^^ゞ
いずれも決まっているものは全くないということでしたが、歌舞伎NEXTはありそうかな。「どろろ」とか落語の「死神」とかを幸四郎さんはおっしゃっていましたが、私の希望は「朧の森に棲む鬼」一択ですから。
アカデミー賞については、「大阪になんかそんなのあったじゃない。大阪のアカデミー賞みたいな・・・」
「となりの人間国宝ですか」(←テリーさんよく知ってたわねー)「そうそう、それでもいい」とずいぶんハードル下げていらっしゃいました。
10分間休憩をはさんで第二部は本来の妄想(?)ですが、かなりグダグダ💦
「歌舞伎語を令和に使おう!」というテーマで、たとえば「テンテレツク」という歌舞伎語を「今日はテンテレツクでやばばばばじゃん」みたいにギャル語?と一緒に使う例をあげる、というのを16語。
「とりまドロンしよう」 「ご注進 あげみざわ」 「好きピの前ではだんまり アピらないで」 「見得って激おこぷんぷんぷん」とか
あまりおもしろくなかった←
2020年
「図夢歌舞伎」
「図夢歌舞伎」は100年続くと思っています。いろいろトラブルがありましたが、「はじめはこうだったんだよ」と話すようになると思う。
「『実は・・・』というのを早く発表したいんですが」とおっしゃっていて、次の企画が決まっているご様子でした。楽しみ。
「吉田屋」
今年の南座顔見世は開催も危ぶまれていましたが、開催できることになって、僕は東の代表として出ます。
「吉田屋」は清元でやる江戸前のもので名古屋より西ではやらないと決めていますが(一昨年御園座の襲名披露興行で上演されたもの)、今はそんなことを言っている場合ではないので・・・。名古屋より西でやるのはこれが最初で最後です、とキッパリ。
元より観る予定ですが、心して観ねば。
尾上右近くんが「末広がり」という演目には役者として出て、「吉田屋」には清元の栄寿太夫として出るというとても珍しい興行でもあります。
おー、右近くんの清元は昨年の巡業「かさね」以来です。これもまた楽しみ。
貴重なお話も聞けて楽しかったですが、せっかくだからこの10年妄想してきたことを総括してもよかったんじゃないかな のごくらく地獄度



