
ムビチケカードも買って、とても楽しみに待っていました。
シネマ歌舞伎 第36弾
三谷かぶき 「月光露針路日本 風雲児たち」
(つきあかりめざすふるさと ふううんじたち)
原作: みなもと太郎
作・演出: 三谷幸喜
美術: 堀尾幸男 照明: 服部基 衣装: 前田文子
出演: 松本幸四郎 市川猿之助 片岡愛之助 八嶋智人
坂東新悟 中村種之助 市川染五郎 中村鶴松
市川寿猿 澤村宗之助 市川男女蔵 市川高麗蔵
坂東竹三郎 坂東彌十郎 松本白鸚 ほか
語り: 尾上松也
2020年10月8日(木) 12:40pm なんばパークスシネマ スクリーン10
(2019年6月 歌舞伎座にて収録/上映時間: 2時間18分)
ストーリーや詳細感想は昨年昨年6月に歌舞伎座で2回観たこちらで
上演時間172分(2回の幕間除く)だったものを三谷幸喜さんご自身が138分に短縮編集しての上映。
冒頭や途中にも出てきた「教授風の男」こと尾上松也くんの場面はすべてカット・・一本帆柱の船の解説はオリジナルアニメのナレーションになっていて、松也くんの声でした。
犬ぞりの場面で白樺の木に扮した松也くんが映っていましたので、上演期間の後半に収録したものだったのでしょうか。
最初に漂着したアムチトカ島までの、人物紹介的な船上の場面もかなりカットされていました。
磯吉(染五郎)が不器用で三五郎(白鸚)に叱られる場面もなくなっていましたので、磯吉が三五郎の息子ということもわかりにくかったかなー。
それでも、光太夫(幸四郎)を中心に、庄蔵(猿之助)、新蔵(愛之助)、磯吉(染五郎)とそれを取り巻く人々の芝居にフォーカスされてすっきりまとまり、一つの映像作品として違和感なく楽しむことができました。
カメラアングルは比較的オーソドックスで、映像ならではのアップで表情が見られる、というのはあっても、「こんな角度から!?」というオドロキはあまりなかった印象です。
大詰でエカテリーナ号が日本に向けて出航する際、薄いブルーの大きな布が舞台側からふわりと客席頭上を駆け抜けて行く時は、始まりから終わりまで全部映っていて、3階から観るのとも、1階で自分があの蒼い海の底にいた時とも違った視点でおもしろかったです。
映像で観ると改めて、サンクトペテルブルグの宮殿の場面の舞台装置(主に書き割りなのだけど)や宮廷の人々、特に貴族の婦人の方々の衣装や髪型が宝塚歌劇顔負けなくらいすばらしくて、美術:堀尾幸男さん、衣装:前田文子さんのお仕事ではあるものの、歌舞伎座の大道具さん、衣装部さんの底力を見た思いです。
この宮廷の場面では、白鸚さんのポチョムキンが「あんな目の表情していらしたんだ!」と改めて感動。
「光太夫、お前が祖国を愛するように、私もこのロシアを愛している」という台詞が胸に迫りました。
重厚な存在感もさることながら、指先一つひとつの所作が品があって本当に綺麗。
そしてやはり、光太夫と庄蔵、新蔵の別れの場面。
いよいよ光太夫が去っていく刹那になって、「日本に帰る~」と声を振り絞る庄藏に涙。
本当に、あの場面は何度観ても泣いてしまいますが、同時に、幸四郎さん、猿之助さん、愛之助さんの3人ががっぷり組んだ芝居を観られる幸せも感じます。
船が難破してから10年の歳月が過ぎ、17人がたった2人になって踏む祖国の地。
日本を目前にして息絶える小市に語りかける磯吉のやさしさも、「俺は神なんか信じない!」と言い放って仲間たち一人ひとりの名を呼ぶ光太夫の激しさも、すべて「わかっているよ」とでも言うように凛と浮かび上がる富士山の美しさ切なさにまたナミダ。
三谷幸喜さん また歌舞伎を書きたいのだとか。
PARCO歌舞伎から13年も経って実現した今回の三谷かぶき。
私もあんまり先が長くないので(?)次はもう少し早めにお願いいたします のごくらく地獄度



