2020年10月03日

火の玉のように踊れ 中村勘九郎 中村七之助 歌舞伎生配信特別公演 「連獅子」


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中村勘九郎さん、中村七之助さんの歌舞伎生配信特別公演第2回。

7月に配信された第1回目の浅草公会堂の公演はどうも食指が動かずスルー。
今回は、勘九郎さん・七之助さんの「連獅子」とあって、もしかしたら七之助さんの仔獅子を観るのはこれが最後かもしれないという予感が働き、観なければとなりました。
実際、開演前のトークでお二人が「二人で拵えをして踊るのはこれが最初で最後かも」とおっしゃっていて、やっぱりなーと思った次第です。


中村勘九郎 中村七之助 歌舞伎生配信特別公演
一、 オープニング映像
二、 連獅子
   振付: 藤間勘十郎
   出演: 中村勘九郎  中村七之助  中村いてう  中村鶴松
三、 中村屋ヒストリー・浅草編
四、 芸談

2020年9月27日(日) 7:00pm
(配信時間: 1時間50分)



連獅子

浅草寺五重塔前の特設舞台から無観客での生配信。
途中から雨が降り始めて、カメラレンズに水滴がついていましたし、映像を通しても檜の所作板が雨にぬれて鏡面のように光っているのが見てとれました。
でもお二人はそんなこと意にも介さない風ですばらしい「連獅子」を見せてくれました。
雨までがまるで演出のようで、時折画面が遠景になって二人を背後から見守るようにスックと立つ五重塔が映し出されて、これ、現地でナマで観たかったなと思いました。


勘九郎さんの親獅子を観るのは「東大寺歌舞伎」(2018年)以来。
あの時にも思いましたが、狂言師右近の出から勘九郎さんのふとした表情や眼差しの鋭さ、時に仔獅子を見守る慈愛に満ちた表情など、勘三郎さんにとてもよく似ているのに改めて感じ入ります。

「水にうつれる面影を 見るより仔獅子は勇み立ち 翼なけれど飛び上がり・・・」のところ、画面を3分割して真ん中に五重塔の映像を挟み、右に親獅子、左に仔獅子をそれぞれアップでカメラが捉えていて、勘九郎さん親獅子が心配そうにそーっと覗き込む表情、七之助さん仔獅子が水に映ったその姿に気づいて大興奮して飛び跳ねるように崖を登ろうとするところがとてもツボでした。この場面をこんなふうに同時に観られるの、映像ならではですね。後で何回もヘビロテしたよね。

ともに初役という鶴松さんの僧蓮念、いてうさんの遍念による楽しい宗論の後、静寂の中、大薩摩、小鼓と太鼓、そして笛の音が響き渡って、親獅子仔獅子が舞台下手の五色の揚幕から登場。花道はなくて、仔獅子の後ずさりはそのまま揚幕に引っ込む形でした。

親獅子、仔獅子ともに隈取の美しさに見惚れる。
特に七之助さん仔獅子の怜悧で美しい隈取は日ごろ見慣れないせいもあってかとても新鮮でした。
ひどくなってきた雨をものともせず親獅子仔獅子の気迫に満ちた舞。
毛振りは中盤少しだけズレていましたが、ぶっつけ本番(前日雨でゲネプロできなかったらしい)とは思えぬほど息が合った圧巻の連獅子でした。
無我夢中で若さ漲る仔獅子ももちろんよいけれど、時を重ねて技を磨き燃えるような気合いあふれる仔獅子すばらしい。


中村屋で「連獅子」をやる限り、勘九郎さんは親獅子をやるしかなくて、七之助さんが今回仔獅子を踊ったことは、鶴松くん、勘太郎くん、長三郎くん・・・中村屋の未来を担う仔獅子たちに、映像ではなく「生」の「中村屋の連獅子」を見せたいという覚悟があったのかもしれないとふと感じました。
最初で最後の、たった一度きりの。



中村屋ヒストリー・浅草編

1986年10月から2020年7月までの、浅草でのお練りや平成中村座などの映像(約20分)。
在りし日の勘三郎さんのお姿に声に笑顔に、最初から最後までウルウルしっぱなしでした。

平成中村座の公演は実際に観たものがほとんどでしたが、勘三郎さん判官、仁左衛門さん由良之助でmy best 四段目の「仮名手本忠臣蔵」(2008年)、勘三郎さん最期のご出演となった「神明恵和合取組」(め組の喧嘩/2012年)なんて観ながらほぼ号泣です。
「め組の時、勘三郎さんが私に向かって手ぬぐい投げてくれたんだよぅ」と心の中でつぶやきながら。



芸談

最初は勘九郎さん、七之助さんのお二人、後でいてうさんと鶴松くんも加わってのトーク。
七之助さんは金髪で登場(後でウィッグと自らバラす)。7月の配信の時「七之助さんに似合う髪型は金髪」というリクエストに応えたものだそうです。

今回「連獅子」をやろうと思ったことについて
「大きなものに立ち向かう力を届けたかった」と勘九郎さん。
当初は鶴松くんが仔獅子の予定だったのを七之助さんが「やる」とおっしゃったそうです。
拵えをして「連獅子」を踊るのは10年ぶりという七之助さん。
「うまく踊ろうとか、よく見せようとかなかった。とにかく懸命に」と。

勘三郎さんから教わる「連獅子」はそれは厳しかったそうで、「いつも震えてた」と勘九郎さん。
仔獅子として舞台に立っている時でもうまくできないと手をとってくれなかったり、仔獅子の振りを「こうやるんだ」とばかりにご自分でやったりされたそう。
仔獅子は動きが激しく、「火の玉のように踊れ」といつも言われたそうです。


「息子として父の魂を受け継いでいく」ときっぱり言い放つ勘九郎さん。
「今回、雨の中でいろいろ大変だったけど、衣装さん、床山さん、スタッフの皆さんが父の魂、先輩の魂を受け継いでいるのを感じてうれしかった」と。



「最初で最後」を繰り返していらしたお二人。最後なら、満員の観客の前でやらせて差し上げたかったなぁ のごくらく地獄度 (total 2158 vs 2158 )


posted by スキップ at 18:07| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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