2020年09月16日
俺はいつも一生懸命生きてゆく 雪組 「炎のボレロ」
当初は5月2日から全国ツアーとして予定されていた公演。
コロナ禍で8月17日~25日 梅田芸術劇場公演へと日程変更されたものの、お稽古中に出演者1名の感染が明らかになって再び中止。梅芸前に掲示されたこのポスターが全部外された時にはどうなることかと思いましたが、日程を再変更して無事開幕できて、本当によかったです。
宝塚歌劇 雪組公演
ミュージカル・ロマン 「炎のボレロ」
作: 柴田侑宏 演出: 中村暁
ネオダイナミック・ショー 「Music Revolution! -New Spirit-」
作・演出: 中村一徳
出演: 彩風咲奈 潤花 奏乃はると 真那春人 久城あす 朝美絢
叶ゆうり 星南 のぞみ 彩みちる 縣千 有栖妃華 音彩唯 ほか
2020年9月2日(水) 4:30pm 梅田芸術劇場メインホール 1階18列センター
(上演時間: 3時間/休憩 30分)
ミュージカル・ロマン 「炎のボレロ」
作: 柴田侑宏
演出: 中村暁
作曲・編曲: 寺田瀧男 吉田優子
振付: ANJU
1988年に星組 日向薫さんトップお披露目公演として上演された作品。
いつも感心しますが、宝塚のプロデューサーの人って、過去の作品が全部頭の中にあって、「この全ツにはあの作品を」とひらめくのかしら。よく再演されている作品ならまだしも、32年ぶりの再演ってどうやって思いつくのでしょう。
物語の舞台は1860年代 フランス傀儡政権下のメキシコ。
祖国を守るためフランス軍に抵抗し殺され、領地や財産も奪われた大農園主 カルザス伯爵の息子アルベルト(彩風咲奈)が新政府の官房長官ブラッスール伯爵(久城あす)に復讐するために故郷に戻って来たところから始まります。
フランス軍情報部大尉ジェラール(朝美絢)が彼を捕えようとつけ狙う中、アルベルトは祖国を取り戻すために闘う共和派の仲間たちと行動を共にします。ある日、アルベルトはカテリーナ(潤花)という女性と出会いますが、彼女は体制側のドロレス伯爵(奏乃はると)の令嬢で、ブラッスール伯爵の息子 ローラン(叶ゆうり)の婚約者でした・・・。
いかにも古き良き時代の宝塚作品という趣き。
俺はいつも一生懸命
力の続く限り
俺はいつも一生懸命
生きて生きてゆく
とアルベルトが歌う歌詞も、ストレート過ぎてちょっと気恥ずかしくもなりますが、物語の中に溶け込むと特に違和感もなく。
少し前にスカイステージでオンエアされた初演をチラリと観たのですが、退屈して途中で寝落ち・・・ハッと目が覚めると何だかみんな笑顔のハッピーエンドで、「あれ?悲劇の予感だったのに」と思ったものですが、ナマの舞台はさすがに退屈なんてするヒマはなく、最初から最後まで楽しく拝見しました。
オープニングの太陽の祭りをはじめモニカ(彩みちる)が働く酒場の場面、太陽と月のコンテストの場面、アルベルトとカテリーナのボレロなど華やかなダンスシーンもふんだんに盛り込まれ(振付は今回全場面 ANJUこと安寿ミラさんで刷新)、ゆったりした感じの美しい主題歌と「ベサメムーチョ」などの耳慣れたラテン音楽、衣装も華やかで、まさに宝塚の王道恋物語。
アルベルトとカテリーナの恋の障害などいろいろあった後、メキシコ貴族の矜持と娘を守るためにブラッスール伯爵を殺して自分も死のうと決意したドロレス伯爵が銃を放ったまさにその刹那、同じく銃を構えた人物が3人・・・アルベルト、ジェラール、従僕のタイロン(真那春人)・・・がそれぞれ別方向から登場して、その中の一人が実はブラッスール伯爵を撃っていたという「何それ~」な強引な幕引きも何となく許せてしまいます。
アルベルトとカテリーナの対比として置かれたジェラールとモニカ(彩みちる)の恋物語も印象的で、主題歌をそれぞれのカップルで違う歌詞で歌うという演出。
ハッピーエンドのアルベルト・カテリーナに対して、白血病で余命いくばくもないジェラールとモニカは悲恋の香り漂います。
「お前はいい女だが聞き分けのないのが玉に傷だ」というツンデレのジェラールに「いいもん!」「勝手にする。どこまでもついていくんんだからぁ」というモニカ。2人のラストのデュエットで
何も望まない 冷たくてもいーい
せめて束の間 あなたの心に寄り添い合いたい~
とモニカが歌うところで思いわず落涙。
ラスト 仲間たちみんなで「われらの星 アルベルト!」「新しい星!」とアルベルトを称えるシーンがまるで「雪組の星 彩風咲奈」「雪組の新しい星」と言っているように聞こえて、この公演は本当なら彩風さんが次期雪組トップと発表されて、プレお披露目の全国ツアーとして企画されたのかもしれないなと思いました(9月4日に次期トップ就任発表)。
彩風咲奈さんは、白い衣装で登場して踊るオープニングから目を奪われる華やかさ。
長い脚にどの衣装もよくハマって、お得意のダンスはもちろん、近年歌唱にも磨きがかかり、何より登場するだけで場がパッと明るく華やかになって、トップスターとして仕上がっている印象でした。
革命に身を投じるアルベルトですが、元は大農園の次男でアメリカの大学に進学した育ちのよいお坊ちゃんという品のよいおおらかさも咲ちゃんの持ち味にぴったり。
彩風さんの相手役大本命と見られていたのに衝撃の宙組組替えとなった潤花さん。
下級生のころから(102期でまだ下級生だけど)華やかな美貌で注目され抜擢されてきましたが、アルベルトがひと目ぼれする大輪の花のようなカテリーナがよくお似合い。お嬢様だけどちゃんと自分の意志を持っていて奔放でのびのび。
165㎝と娘役としては長身ですが、173㎝の彩風さんと組むと違和感全くなくゴージャスな大型コンビになっただろうとちょっと残念な気持ちも。
ずっと言われていることですが、歌はさらにがんばっていただきたいです。
ジェラールの朝美絢さん。
キリリと軍服を纏い、笑顔を見せないクールビューティ。でもモニカのことは心では大切に思っていて、究極のツンデレを見せていただきました。モニカに顎クイからのキスとか、休めとうるさく言うモニカの口をふさぐためのキスとか、Twitterのタイムアインでも話題沸騰でした。歌もうまいよねー。
モニカは彩みちるさん。
ちょっとはすっぱな感じの酒場の歌姫でお嬢様のカテリーナと好対照。
ジェラールに無理しないで、休んでと言う台詞がちょっときゃんきゃんし過ぎかなという気がしますが、心からジェラールのことを思っているいじらしさはよく出ていました。
ブラッスール公爵の久城あすのさんの憎々しい悪役ぶり、ドロレス伯爵 奏乃はるとさんの苦悩と気骨、曲者のにおいプンプンの従僕 タイロン 真那春人さんの三おじさん(失礼!)の芝居巧者ぶりも際立っていました。
若手では共和派のリーダー フラミンゴを演じた縣千さんがずいぶん精悍さを増したのが印象的だったことと、ブラスキータの音彩唯さん。いつも「もったいない」と言っている役ですが、台詞も結構あって大抜擢なのでは?小顔で凪七瑠海さんに似たお顔立ち。昨年初舞台の105期生首席で歌もお上手と聞いていますので、楽しみな娘役さんがまたひとり。
ショー編につづく
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