
今年はコロナ禍で開催も危ぶまれていましたが、感染症対策を徹底したうえで無事開催。しかも初めての試みとして映像配信もされました。
第六回あべの歌舞伎 「晴の会」
上方落語 「宿屋仇」より
「浮世咄一夜仇討」 (うきよばなしひとよのあだうち)
作:城井十風 改訂:亀屋東斎
演出: 山村友五郎
監修: 片岡秀太郎
出演: 万事世話九郎:片岡松十郎/紀州屋女中 いさき:片岡千壽/客 源兵衛:片岡千次郎
片岡當吉郎 片岡りき彌 片岡佑次郎 片岡當史弥 中村翫政 片岡千太郎
2020年8月20日(木) 3:00pm 近鉄アート館 Aブロック4列
(上演時間: 1時間)
今年は三密を考慮して、第一回公演で上演された「浮世咄一夜仇討」のみを上演(初演時は舞踊との二本立て)。城井十風さんの原作に亀屋東斎(千次郎)さんが改訂を加えたバージョンアップ版です。
第一回公演(2015年8月)の感想はこちら
開演時間4分前くらいから口上人形のご挨拶がありました。
「かーったおかせんじろう」「かーったおかせんじゅ」「かーったおかまつじゅうろう」というあの口上人形の役者紹介の名調子、久しぶりに聴きました。
口上人形を操っていらっしゃるのは佑次郎さん(このツイート)のようですが、お声は千次郎さんかな?
幕が開くと梅川 忠兵衛や八右衛門、おえん、お染 久松やらがわらわらと登場して町ですれ違ってははけていきます。
開演前、座席に置いてあったプログラムに、梅川:片岡當吉郎 お染:片岡りき彌・・・と書いてあるのを見て、「そんな人たち前観た時は出てきたかなぁ?」と思っていたのですが、この冒頭の場面だけ、台詞のない顔見世のような出番でした。
今でこそこんなに出演者も増えましたが、第一回目は本当に3人きりだったなぁと思い出して、改めてあべの歌舞伎の発展を感じました。この役者さんたちはこの後はずっと黒衣として舞台を支えてくださっていました
久松に扮した片岡千太郎くんが大きくなっていて、登場した時、客席がどよめきました。もう14歳ですって。そりゃおばちゃん、年取るはずですワ。
本編始まってすぐ「まつしまやっ!」「せんじろう!」「まつみやっ!」(松美屋は千次郎さんの屋号)と大向うが聞こえて来て、「!!」となりました。8月から公演再開した歌舞伎座では大向うは禁止と聞いていましたので。
声が聞こえた方を見ると、階段状になった客席の一番上、上手と下手に1つずつビニールシートで囲まれたブースがつくられ、ってあってそれぞれに大向うさんがお一人ずつ入っていらっしゃいました。
千次郎さんが終演後のご挨拶で「初音会(関西の大向うの会)の方にお願いしました」とおっしゃっていて、指定された方だけが大向うをかけられるということでしたが、いや~、要所要所で気持ちよく大向うが入る歌舞伎、やっぱりイイです。
客席通路(階段)こそ使われませんでしたが、ロビーへの通路から出入りしたり、客席に「〇〇はどこか知ってはります?」みたいに話しかける演出はそのまま(ただし少し距離を取って)ありました。
お芝居はやっぱりおもしろくて、落語が原作ですが、世話物、所作事、近松ものいろいろ盛り込まれていて見応えあります。
初演の時も思いましたが、一枚の衝立を3面使って、宿屋の外と二つの部屋になるのがシンプルなのだけどとてもよく出来た演出。しかもそれを折りたたんだり広げたりする女中 いさきさんが結構重そうな衝立を操るのが忙しく大変そうなのが笑いを誘います。
世話九郎に「早ういたせ」とせっつかれて逆ギレするいさきさんとか、いさきさんと源兵衛さんの相撲とか、♪源やんは色事師 色事師の源やん と二人で歌い踊るところとか、観たことある場面なのに今回もよく笑いました。
そうして、源兵衛さんの思い出話の中でいさきから間男する奥方へとガラリと変わる千壽さんが相変わらずすばらしかったです。
千壽さん、今年の松竹座初春歌舞伎「大當り伏見の富くじ」でちん(犬)の小春がを久しぶりに楽しませていただきましたが、女形のいろんな役、もっと観たいです。
終演後は全員そろって三面客席にご挨拶。
初日でしたので、こんな状況下、無事に幕が開けられたという安堵感が伝わってくるような役者さんたちの表情が印象的でした。

客席には公演名入りのこんな除菌ティッシュも置かれていました。
来年はまた満員の客席で新作歌舞伎に取り組めますように のごくらく地獄度



