
とカーテンコールの桜木みなとさん。
本来は3月28日~4月4日 日本青年館ホール、4月11日~4月19日 シアター・ドラマシティで公演が予定されていて、桜木みなとさん初めての東上主演公演となるはずでした。それが東京公演は全公演中止、大阪もわずか5日間、8公演だけの開催となりました。
それでも、この公演が無事上演されて、客席から観ることができる幸せ。
ナマの舞台を観ることが”奇跡”ではなくなる日常が1日も早く戻って来ますように。
宝塚歌劇 宙組公演
オリエンタル・テイル 「壮麗帝」
作・演出: 樫畑亜依子
作曲・編曲: 手島恭子
振付: 御織ゆみ乃 平澤智 擬闘: 清家三彦
出演: 桜木みなと 遥羽らら 和希そら 花音舞 凛城きら
秋音光 天彩峰里 鷹翔千空 風色日向/ 悠真倫 ほか
2020年8月15日(土) 12:00pm シアター・ドラマシティ 25列下手
(上演時間: 2時間30分/休憩 25分)
物語の舞台は16世紀初頭のオスマン帝国。
9代皇帝セリム一世の息子スレイマン(桜木みなと)は、奴隷のイブラヒム(和希そら)を気に入り小姓に起用します。ある日二人でお忍びで出掛けた街で、ルテニア(ウクライナ)から奴隷として売られてきた娘アレクサンドラ(遥羽らら)と出会います。スレイマンは美しく才気あふれるアレクサンドラに惹かれ、ヒュッレム(幸福なる喜ばしい者)という名を与え寵愛する中、イブラヒムはスレイマンの右腕的な存在に成長し大宰相となってスレイマンの妹 ハティージェ(天彩峰里)を妻に迎えます。皇帝として目覚ましい活躍を見せる一方で、ハレムの慣習に背いてヒュッレムただ一人を寵愛し、奴隷上がりのイブラヒムを重用するスレイマン。それぞれの存在が、様々な思惑渦巻く宮廷に争いの火種を生み、固い絆で結ばれたスレイマンとイブラヒムの関係にも亀裂を生み・・・。
スレイマンもイブラヒムもヒュッレムも実在の人物。
「オスマントルコ」は世界史の授業で聞き覚えがあったものの詳しいことは知らなかったのですが、勉強になりました。ハレムについても何となく男性が女性に囲まれているイメージはあったものの、ほ~、そういうことだった(日本の大奥的な?)のかと改めて認識できて、ほんと、少女のころに観た「ベルサイユのばら」に始まって、宝塚はワタシの世界史の知識を広げてくれるなぁ。
もちろん史実そのままではなくて脚色はしてあると思いますが、いかにも宝塚的な展開で、一幕の二人(スレイマンとイブラヒム)の蜜月を観るにつけ、「きっと切ない未来が待っているよね」と思われ、実際二幕ではその通りになって、「やっぱそうなるよなぁ」と。
スレイマンとイブラヒムの友情と確執の物語と思いきや、スレイマンとヒュッレムの愛情も結構大きなウエイトを占めていて、つまりそれは、イブラヒムとヒュッレムが、スレイマンにとってどちらもかけがえのない存在であることを物語っていて、その二人を、一人は自分の手で処刑しなければならず、もう一人は病で失うこととなって、それでも自分は皇帝として強く生きていかなければならないと宣言するラストは、スレイマンの絶対君主としての孤独と厳しさが際立って、胸に迫りました。
タカラヅカ的には、エキゾチックな雰囲気で男女とも衣装は華やか、ダンスや立ち回りもふんだんにあって見応えたっぷり。その上フィナーレもあって、「宝塚観たぁ~」という気分になる満足度の高い作品でした。
スレイマンの桜木みなとさん。
ずんちゃん、いつの間にこんなに強く色っぽくなったの?が第一印象。
役柄のせいもありますが、カリスマ性もあって骨太で押し出しも立派で、堂々たる皇帝ぶり。
「何でもできて器用だけど線が細い王子様系」といった印象だったずんちゃんはどこへやらといううれしい驚きでした。
特に「こっちへおいで」からのヒュッレムを抱き寄せてのシーン。
「妬いているのか」「お前は可愛いな」って言う時の手の仕草とか表情とかハラリと横顔にかかる髪とか、もう、色っぽい通り越してエロティックなんですけど~。
イブラヒムは和希そらさん。
スレイマンの最初の出会いの場面の地面に頭をこすりつけるような奴隷ぶりから、徐々に力をつけ、大宰相にまで上り詰めるに従って表情や所作、声のトーンまで違ってくる演じ分けが鮮やか。
スレイマンの頭脳とまで言われた頭の切れる人物が、どうしてサファヴィー朝の策略にまんまと騙されたのかと疑問と悔恨が残ります。若き日に、いつかこの世界を統べる“天運の主”になろうと二人で夢見ていたのに、いつの間にかそれぞれ別の方向を見るようになり、すれ違う思いが切ない。
そらくん、相変わらずいい声で、ダンスも立ち回りもキレッキレでよきよき。
アレクサンドラ(ヒュッレム)の遥羽ららさん。
強い心を持ち、何ごとにも物おじせず、自分の意見をはっきり述べるアレクサンドラは当時としてはかなり異質な女性だったのかもしれませんが、そこにスレイマンが惹かれる納得性のある役づくり。桜木みなさんとのバランスもよくお似合いのカップルでした。
天彩峰里さんのハティージェもよかったな。
幼いころから王家に育ったいい意味で天真爛漫さがあって、品もある王女様。
イブラヒムが(最後の)戦場に行く時、「私はあなたに嫁いだのだから」とやさしい笑顔で包み込み、イブラヒムが処刑されるかもしれないという時には、「皇族が個人的な感情で取り計らいなどできる訳がありません。特権を持つ立場だからこそ守らなければならないものがあるの」と今にも泣き崩れそうになりながら凛と王族としての矜持を見せるハティージェが美しくも哀しい。
凛城きらさんのハフサがスレイマンの母として、ハレムを取り仕切る皇后として威厳と怜悧な雰囲気もあってよかったです。
「神々の土地」(2017年)の皇后アレクサンドラ役を思い出しました。男役としても素敵な凛きらさんですが、強い女性役が特に印象的です。
もう一人、スレイマンの第一夫人 マヒデヴランの秋音光さん。「うららちゃん(伶美うらら)に似た美人さんだけど、こんな娘役さんいたっけ?」と思っていたら、フィナーレの男役ナンバーで踊っているのを見て、「秋音くんかっ!」となりました。
宮廷史家で語り部の役を勤めた悠真倫さんが相変わらずいい声の語りを聴かせてくれたのと、なかなかの悪役ぶりだったアフメトの鷹翔千空くん、マヒデヴランの長男で悲劇の皇太子ムスタファ風色日向くん(何と、一幕の奴隷商人もだったのね)も印象に残りました。
フィナーレ
和希そらくんセンターの男役群舞 → 娘役も入って群舞 → 桜木みなとさん登場で群舞からのそらくんとデュエダン → 桜木みなとさんと娘役の群舞 → 桜木さん・遥羽ららさんのデュエダン という流れ。
コンパクトながら宝塚歌劇王道のフィナーレ。
そらくんのダンスは相変わらずカッコいいし、凛きらさんも秋音くんも男役に戻ってるし(笑)、ずんそらのデュエダンは妖しく、ずんららのデュエダンはリフトもくるくるで多幸感満載。楽しいフィナーレでした。
先行全部ハズレて梅芸先着順でやっと取れた席は my ドラマシティ史上初の最後列。
でも瞬殺だったからほんとよく取れたよね のごくらく地獄度



