2020年07月30日

夢を図る歌舞伎 図夢歌舞伎 「忠臣蔵」 第三回


図夢歌舞伎 第三回は市川猿之助さんを早野勘平に迎えての五段目、六段目。
この回だけ、演出に幸四郎さんだけでなく、「市川猿之助」とクレジットされていました。


図夢歌舞伎『忠臣蔵』 第三回 「五段目・六段目」
構成・演出:松本幸四郎
演出(第三回):市川猿之助
脚本:戸部和久
竹本:竹本葵太夫  豊澤淳一郎
長唄:鳥羽屋三右衛門社中  杵屋栄十郎  鳥羽屋里松
鳴物:田中傳左衛門社中  田中傳左衛門  田中佐英  田中佐吉郎  田中傳三郎
出演:早野勘平:市川猿之助
女房おかる:中村壱太郎
母おかや/一文字屋お才の声: 上村吉弥
百姓与市兵衛:松本高麗五郎
口上人形:市川猿弥
斧定九郎/不破数右衛門/猪:松本幸四郎
後見:市川段之  上村折乃助  市川澤五郎
中村翫之  市川段一郎  市川郁次郎

2020年7月11日(土)11:00am Streaming+
(配信時間 50分)



幕が開くと、左に猿之助さん、右に幸四郎さんがそれぞれ顔を拵える映像。
お役の違いもあるでしょうが、お二人の拵え方、順序の違いも興味深く、大変おもしろく拝見しました。
これまでよりアップが多用されていた(葵太夫さんをあんなにアップで見たのも初めてかも)印象ですが、五、六段目らしくこっくりと物語を見せていただきました。

猿之助さんは2012年に新橋演舞場 四月花形歌舞伎「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」で早野勘平を演じられた際、坂田藤十郎さんに教えていただいたそうですが、口跡が藤十郎さんそのままだったのに驚きました。聴いていて藤十郎さんのお顔が頭に浮かんだくらい。猿之助さん、演技力もさることながら、きっとすごくよい耳と記憶力をお持ちなのですね。
声音はもちろん、表情の変化もドラマチック。
すごく寄ったカメラで、お才が与市兵衛に持たせた財布の話を聞く勘平の表情がみるみる変わっていくところなどとても見応えありました。

山城屋さん、つまり上方式の勘平なので、壱太郎くんのおかる、吉弥さんのおかやとう上方味がまたよく合います。
壱太郎くんおかるは可憐な中に愁いを帯びた風情が切ない。
吉弥さんはおかやも万全ながら、お才の声だけでいかにも京の廓のキリリとした女将を感じさせるのさすがです。


図夢ならでは

三回目の「図夢ならでは」は、五段目の大好きなあの場面にやってきました。
「忠臣蔵」の登場人物の中で斧定九郎が一二を争うくらい好きな悪役フェチスキップ。
幸四郎さんの「ごじゅうりょう~」が聴けると楽しみにしていたのですが、あの場面をあんなふうに観ることができるなんて!
稲叢の前でひと休みする与市兵衛、稲叢の後ろに潜んで与市兵衛の持つ五十両を狙う定九郎。
その二人を真横からカメラが捉えて、稲叢を挟んで二人を同時に観る形。
いつもなら、稲叢の中からヌックと定九郎の手が出てくるまでドキドキしているのですが、あんな表情して、あ、今手を出す・・・とドキドキ感増し増し。
しかも幸四郎さんの定九郎の悪そうなこと色っぽいこと。
髪の露をなで、ずぶ濡れの袂を絞り、与市兵衛を殺して奪った金を確認してあのドスの効いた低音ヴォイスで「ごじゅうりょう~」
いや~、たまりません



この場面で登場する猪も実は幸四郎さん。
猿弥さん口上人形が、チャット紹介コーナーで、「猪だれ?」「あーちゃんです。あーちゃんがやってます。もう、やりたがりなんです、あーちゃんは」と(笑)。最後にちゃんと「猪 松本幸四郎」とクレジットされたのにも笑っちゃいました。
六段目の不破数右衛門(声だけ)も幸四郎さん。
いい声だ~。

この第三回は通常のアーカイブの他にこだわって編集した「特別編集版」も公開されました。
回を重ねるごとに進化して、ナマと別撮りの差もわからないくらい完成度が高まり、映像作品としても鑑賞できつつナマのよさもありつつという図夢歌舞伎。あと2回 どんな夢を図ってくれるのか、ますます楽しみです。



定九郎が最後に撃たれて白いフトモモに血が滴り落ちる場面がなかったのはちょっぴり残念 のごくらく地獄度 (total 2123 vs 2129 )
posted by スキップ at 23:01| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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