2020年07月26日
夢を図る歌舞伎 図夢歌舞伎 「忠臣蔵」 第二回
図夢歌舞伎 第二回は「忠臣蔵」の四段目。
全五回 すべて楽しませていただきましたが、元々四段目が好きなこともあって、この回がマイベスト。
配信時間が30分と短く見やすく、翌日の制限時間まで時間が許す限りアーカイブも繰り返し拝見しました。
図夢歌舞伎『忠臣蔵』 第二回 「四段目」
構成・演出:松本幸四郎
脚本:戸部和久
竹本:竹本東太夫 鶴澤慎治
長唄: 鳥羽屋三右衛門社中 杵屋栄十郎 鳥羽屋里松
鳴物:田中傳左衛門社中 田中傳左衛門
出演: 塩冶判官/大星由良之助:松本幸四郎
大星力弥:市川染五郎
口上人形:市川猿弥
後見:松本幸蔵 松本幸之助 松本幸次郎
2020年7月4日(土)11:00am Streaming+
(配信時間 30分)
開演前、映し出された定式幕がCGではなく実写映像になっていました。
時々ふわりと揺れる幕に中の人の動きを感じて、そうそう、開演前の劇場ってこんな感じだったよね、とより臨場感のある演出。
1回目の様々なトラブルは大きく改善され、また、映像としてもお芝居のクオリティ的にも大幅にバージョンアップして完成度も高まり、1週間でよくぞここまで、という思い。
はじめに口上人形が前回の大序から三段目までを映像つきで振り返ってくれて、一気に忠臣蔵の世界に入り込み、四段目扇ヶ谷塩冶判官切腹の場 開幕です。
白木の三宝に九寸五分を載せ、判官の元へ運ぶ力弥。
憂いを含んだ美しい横顔に畳の上の摺り足の音が重なります。
白装束の肩衣をはね膝下へ敷き、袖から腕を抜く判官。
しんと静まり返った中、判官の動く衣擦れの音だけが響きます。
劇場で「通さん場」を観る時と同じ緊張感に包まれ、息をのむ思いで画面を凝視するワタクシ。
幸四郎さん判官の切腹へと向かう所作一つひとつが厳かで、哀しいくらいに美しい。
今回特に感じたのは「音」。
先に挙げた摺り足や衣擦れの音、そして、判官が九寸五分に巻く懐紙の紙音、それをぎゅっと握りしめる音。
静寂が支配するこの場面で、それらの「音」がどれほど大きな役割を担っているか、改めて感じ入りました。
力弥の染五郎くん。
判官を見上げる瞳、襖越しに判官とやりとりするまっすぐな眼差し。
もちろん初役で、台詞も多く、(リモートのため)相手が目の前にいない中でのお芝居はハードル高かったと思いますが、とてもよかったです。
判官に「由良之助は」と何度も問われて、「いまだ参上 つかまつりませぬ」と応える表情の切なさ、声の哀しさ。
■ 図夢ならでは
今回の“図夢ならでは”は、判官切腹の場面。
判官が九寸五分を腹に突き立てたまさにその刹那、苦痛に歪む判官の表情、無念さを、正面から横から上から、マルチカメラで様々なアングルでとらえ、画面にマルチに映し出し、さらには駆け付ける由良之助の足もと、そして横顔を畳みかけるように次々と4分割で見せていきます。
いやぁ、これぞ映像ならではで、すごい迫力と緊迫感でした。
そこからの、判官から形見と言われて九寸五分を渡された由良之助の腹の底から響くような低音の
「い~さぁ~い~」
・・・自分でも意識しないまま涙がこぼれていました。
そうそう、判官がどっと前に突っ伏すところで一瞬画面がフリーズして、「あれ?そういう演出だったのかな?」と思っていたのですが、アーカイブでは修正されていましたので、あれはトラブルだったのね。
これ、ネットニュースで拾った画像だけど載せるのNGかな?
後で消すかも。
判官も由良之助も幸四郎さんで、一方は別撮りなのですが、そんなこと忘れてしまうくらい濃密な2人のやり取り、視線と気持ちの交錯。
私は判官がライブで由良之助が前撮りだと思っていたのですが、どうやら逆だったらしい💦
よく考えたらそうですよね、由良之助はこの後、城明渡しの場にも出てくるのですから。
城を背にし、紫の袱紗に包んだ九寸五分を握りしめ、その九寸五分に遺された判官の血を舐め、判官の無念を受け止め、強い覚悟と決意を湛えたキリリと引き締まった表情で引っ込む由良之助。
その思いの強さ激しさに、観ていると苦しくなるくらいですが、鳥屋側から捉えたアングルもよかったです。
この回はお芝居の後、「幸四郎さんからのお知らせ」ということでご本人様から八月花形歌舞伎のご案内がありました。
顔落として着物も着替えて再登場するまで2分ぐらいだったかしら。早っ!!
判官が末期の一句 五臓六腑に沁み渡り のごくらく度 (total 2122 vs 2128 )
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください