2020年07月03日

どうしても若い方々と話したいと会社にお願いした 「歌舞伎家話」第四回


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毎回楽しみにしている歌舞伎家話。
第四回は市川中車さんがホストで、中車さんが「一番気兼ねなく話せるお三方」とおっしゃる若手三人をゲストに迎えて。
お家も違っていて意外な組み合わせにも思えましたが、「どうしても若い方々と話したいと会社にお願いして実現した」とおっしゃっていました。


「歌舞伎家話」第四回
出演: 市川中車  坂東巳之助  中村米吉  中村児太郎
2020年6月23日(火) 8:00pm配信開始 (約75分)



前半は「ステイホーム中何してる」的な話や(私にとってあまり興味ない)昆虫の話題で、「今回は今イチだな・・・」と思っていたのですが、過去の共演舞台のお話あたりから俄然おもしろくなりました。

その前半の「何してる?」の中では、児太郎くんの「楽器をよくさわりました」が印象的。
「そんな気がしました。三曲やっぱりお稽古してらしたのね」と米吉くん。
児太郎くんに話を振ったのも米吉くん。「児太郎さんはどうしていらっしゃるの?お休みの間」と、とても綺麗な言葉遣いで。
児太郎くんは、「(役について)父と話したり、昔の映像も公演中だと見てただけだったのが細かいところまで見られる」「(阿古屋の)三曲はどの人も稽古するので楽器がすべてではない」と芸に対するストイックさが言葉の端々に。

児太郎くんは会話の中で中車さんのことを時々「照之さん」と呼ぶことがあって、本当に親しさが感じられました。
大河ドラマ「西郷どん」に孝明天皇役で出演された時、中車さんが「ついて行ってあげる」と収録スタジオに一緒に来てくれたそう。「香川照之といえば誰でも知っている俳優が『かばん持ちで来てます』と言ってくれて・・・」と感激の面持ち。これを聞いて中車さんが「僕も泣きそう」と。


興味深かったのは、「今までで一番苦しかった舞台・印象に残る舞台」

巳之助くん: 今年の浅草歌舞伎 「仮名手本忠臣蔵」七段目 の平右衛門
松嶋屋のおじさまにあんなに密に・・・今は違う意味になっちゃったけど・・・教えていただけたのは初めて。

中車さん: 右團次襲名披露興行の「義賢最期」は僕が一番苦しかった舞台のひとつ
出番終わって演舞場の屋上で吸引しながら高速道路眺めてた。

「照之さんがとうふ買いのおむらやった時も」と児太郎くん。
2015年 十二月大歌舞伎「妹背山婦女庭訓」で中車さんが初めて女形を演った公演のことですね。
「すごく努力しました。持てる時間すべて稽古した。朝9時に入って稽古して、「赤い陣羽織」終わって4階で稽古して、降りてきて顔するという毎日」
「玉三郎さんがこれをご覧になって、『お前の時の八汐は決まったね』とおっしゃっていました」と児太郎くん。

―中車さん、何でも器用にこなすイメージですが、影ではやはり血の滲むような努力をされているのだと改めて感じ入りました。


そんな中車さん印象に残る舞台は
「去年4月のこんぴら歌舞伎「すし屋」の弥左衛門。勘九郎さんがずっとひっぱってくださって」と。
「こんぴらの静かな空間の中で、毎日勘九郎さんのお芝居を観ていました」

児太郎くん: 去年の秀山祭「寺子屋」の戸浪
「手も足も出なかった」という児太郎くん(吉右衛門さん松王、幸四郎さん源蔵、菊之助さん千代という錚々たる座組でしたからね~)。
「僕なんか全部手も足も出ない」と言う中車さん。
       
あと、「阿古屋」の初日(2018年 十二月大歌舞伎で梅枝くんとともに「阿古屋」に初挑戦した時)。
「中車さん、猿翁さん、父、七之助さんも観に来てくれた。幕あけて最初に見るのが猿翁さんのお顔で・・・」
「あの時の客席、桟敷席で観ている人たちの前のめりと動かない感が凄かった。終わってからのお客様の拍手が『やっと終わった』という感じで」と中車さん。

巳之助くん: 桜の森の満開の下
「稽古に遅れて入ったので、皆さんは1ヵ月間稽古で出来上がった世界の中に僕と児太郎が入って、何が正解かわからないままやって、「よかった」と言われて余計わからなくなった」
児太郎くんは「よくわからなかったけど、エンディングの勘九郎さん、七之助さんの芝居が毎日凄かった。あれがすべてだった」と。

米吉くんは今年の浅草歌舞伎で開演前に急に体調が悪くなってもどしてしまった時のことを。
もどしてしまって熱も出て、「つま先立てて座れない、涙はぼろぼろ出てくる」という状態だったそうです。
巳之助くんが平右衛門で共演していて、「体をさわると中身の入っていないぬいぐるみみたいでかわいそうだった」と。


米吉くんは誰かが「〇〇〇〇」と演目を言うとすぐ「△△年の◇◇座ね」というふうにデータを的確に提供してくれるし、話が違う方向へ行きそうになるとやんわり戻したり、うまく話題を振ったりのよくできる子ぶりで、まるで彼がホストのよう。

中車さんが「修善寺物語」で夜叉王をやった時、「お父様に稽古つけていただいてね」と言うと、巳之助くんが「中車さんは画面見てるけど、観ている人たちは誰のお父さんかわからないでしょ、ちゃんと米吉さんのお父さんと言わないと」とツッコんだり、全体的には「中年のおじさん(中車さん)を若手三人がイジる」という構図だったのですが、「中車さんに対するリスペクトの思い、親しみの感情があるからこそこういうことが成り立つ」という米吉くんの言葉がすべてを物語っていました。

今ナマで会って話をしたい人は?という質問に
「4人でしゃべりたい」と児太郎くん。
そしてまた4人共演する舞台を、楽しみにしています。



舞台のお話たくさん聞くとますます舞台が観たくなります のごくらく地獄度 (total 2112 vs 2120 )



posted by スキップ at 22:17| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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