歌舞伎家話 3回目は松本幸四郎さんと市川猿之助さん。
一応、幸四郎さんがホストということになるのかな?
歌舞伎夜話特別編 「歌舞伎家話」第三回
出演: 松本幸四郎 市川猿之助
2020年6月14日(日) 8:00pm配信開始 (約105分)
このお二人は先日読了でアップした「染五郎の超訳的歌舞伎」の巻末でも対談されていますが、他の歌舞伎役者さんとは少し違った関係性を感じます。連帯感というか同志感というか、性格も芸のタイプも嗜好も違っているのに、どこかでしっかり通じ合っているというか。
今回の「家話」でもそれを強く感じたのですが、最も印象的だったのは
◆節目節目に
初めて共演した舞台からこれまでのいろいろを振り返る中で猿之助さんの発言。
「節目節目にいていただくから・・・」
「だから弔辞は読ましていただきます。葬儀委員長も勤めさせていただきますよ」
これに対して幸四郎さんは「え?僕が先に逝くの?心配で逝けないよ」
猿之助さんは「一緒の日だったら大変だろうね」
この発言に至る「節目節目」をいくつかご紹介。
・最初に会ったのは国立劇場の「供奴」 1991年8月
幸四郎さん18歳、猿之助さんは16歳で高校1年生。
から、年齢の話に。
お二人は3歳違いですが、「猿之助さんより年上ですか?」と時々驚かれるという幸四郎さんに対して、「それは絶対ない」と断言する猿之助さん。若さには自信があるよう。
幸四郎さんと同級生は獅童さんや愛之助さんがいるけど、自分は同い年の人はいないとおっしゃっていました。
→ そうそう、その同い年の3人で松竹座の二月花形歌舞伎(「大當り伏見の富くじ」初演の時)やったんだよね~」と懐かしく思い出しました。
・「三国一夜物語」は回る亀の上に上がって舞台稽古で吐いたという猿之助さん(笑)。
・猿之助さんが「四の切」を本興行としては初めて明治座でやった時はぜひにと幸四郎さんに義経をお願いした。
→ 2011年5月の明治座花形歌舞伎ですね。当時は亀治郎さんと染五郎さん。あの時が私の明治座デビューでした(感想はこちら)。
「はじめのときにいられてうれしい」と幸四郎さん。
「いやいや、いていただけないと」と猿之助さん。
猿之助さん「四の切」は明治座公演に先立って、「亀治郎の会」で演じるにあたり猿翁さんに習いに行ったところ、「え?あんたやってなかった?」と言われたそうです。
・猿之助さん襲名の電話がかかってきた時は中秋の名月で、幸四郎さんは「いい月だなぁ」と思って眺めながら歩いていたら電話がかかってきた、と。
・2017年10月に猿之助さんが怪我をした時も真っ先に電話をかけた幸四郎さん。
「自分(幸四郎)さんの襲名興行に出られるか聞きたかったんだと思った」と猿之助さん。
「本人に電話するのも間違いだけど、怪我した本人が電話に出るのもおかしい」と幸四郎さん。
すぐに手術しなければならず、手術できる病院を探して待っている時だったそうで、少しタイミングがずれていたら電話には出られなかったことを思うと、やはりお二人の縁の深さを感じます。
・猿之助さんが「黒塚」をやった初日も、巡業中なのにたまたま時間が取れて駆け付けた幸四郎さん。楽屋で仲良くツーショットの写真を公開。
ここから、「節目節目にいていただくから・・・」の発言へと続きます。
◆楽しかった巡業
昨年の高麗屋さんの襲名披露巡業 東コースに共演された猿之助さん。
「すごく楽しいいい巡業だったなぁ。また行きたい」と繰り返しおっしゃっていたのも印象的でした。
「各地で高麗屋さんが温かく迎えられて」と。
あの巡業、猿之助さんは博識ぶりを発揮して、口上では各地ゆかりの話題を織り込んでご挨拶されました。私が観たびわ湖ホールでは、比叡山延暦寺 根本中堂にある1200年一度も灯りが絶えることのない“不滅の法灯”に触れられ、高麗屋さんもこの法灯のように未来永劫、末永く続きますようにという素敵な口上でした。
「かさね」には尾上右近くんが栄寿太夫として清元で参加されていたのですが、「右近くん 目線が役者目線で目力がすごかった」と幸四郎さん。
そうそう、私は琵琶湖ホールで観たのですが、「右近くん、二人を観過ぎ」と終演後、友人と笑い合ったものでした。
◆けんけんといっくん
猿之助さんは右近くんのことを「けんけん」と呼びます(幸四郎さんは右近くん)。
染五郎くんのことも「いっくん」と呼んでいて、親しさが感じられて好感。
そうえば、三谷かぶき 「月光露針路日本」の時も船の上で何かの拍子に磯吉@染五郎くんに「いっくん、それはどうなの?」と呼び掛けていた猿之助さんw
あの公演の時の染五郎くんを「いっくん、ものすごい成長だったよね」とその成長ぶりに触れ、「ああいう吸収力はもうないな」と。
◆質問コーナー
印象に残った質問と回答を少し
・舞台に立ってご先祖を感じることは?
「黒塚はある」と猿之助さんはきっぱり。
お祖父様が「何か1つ足りない」とおっしゃって亡くなられたそうで、それが何か知りたいそうです。
猿翁さんは「転換の間だろう」とおっしゃっているそうで、その考え方もおもしろいと。
・朝起きて互いに入れ替わっていたら何をしたい?
幸「潔く拝んだりします」←じゃあ、拝み方教えますよ、と猿之助さん。
猿「犬とたわむれる」
愛犬ニッキーくんは幸四郎さん家にやって来て2ヵ月近くで体重は3倍になったのだとか。
「甘噛みするけど痛い」と(笑)。
突然部屋の中を猛ダッシュし始めることがあるそうで、それを聞いた猿之助さんは「いるんだ」「犬と子どもは見える」から「お宅は磁場が悪い」とまで。
「ディズニーランドみたいに歌舞伎ランドをつくりたい」とおっしゃる幸四郎さん。
オーランドで訪れた「Holly Land」(聖書のテーマパーク)について熱く語る猿之助さん。
◆寿猿さん
寿猿さん90歳のお誕生日に電話したという猿之助さん。
「大丈夫ですか?」と聞くと「戦争中に比べたら全然大丈夫。食べ物があるだけありがたい」とおっしゃっていたそうです。「あの年代は強い」と。
わざとなのかあまり興味がないからなのか「歌舞伎家話」を「いえばなし」と呼んだり、歌舞伎美人を「びじん」と読む猿之助さん。
そのたびに「やわ」、「かぶきびと」とやんわり訂正する幸四郎さん。
第一回の松也くんの時のように後輩相手だと不思議ちゃんワールド全開で宇宙人っぽい幸四郎さんが猿之助さんの前だと大人な常識人に感じられるから不思議。
幸四郎さんの新しい挑戦「図夢歌舞伎」についても「遠――――くから応援してます」とおっしゃっていた猿之助さんですが、後日早野勘平役でご出演も発表されて、「なーんだ、やっぱしツンデレじゃん!」となりました。
この日はオンラインのトラブルで冒頭15分くらい入れない人続出(私もしばらく入れませんでした💦)
そのために予定時間を大幅に延長してトークしてくださったお二人。
戸部和久さんはお詫びの言葉を述べながら、「e+さんは我々といっしょに新しい演劇をつくって走ってくださる大切な大切な仲間です」という言葉も心に残りました。
図夢もいいけど、このお二人ががっつり組む歌舞伎の舞台をまた観たい のごくらく地獄度



