
「明治座 三月花形歌舞伎」出演者による座談会
出演: 中村勘九郎 中村七之助 坂東彦三郎 坂東巳之助
中村壱太郎 中村橋之助 中村鶴松 澤村由次郎 片岡亀蔵
坂東秀調 中村歌女之丞
2020年3月18日 明治座にて収録 (34分)
明治座の三月花形歌舞伎で上演される予定だった演目
・菅原伝授手習鑑 車引
・一本刀土俵入
・芝翫奴/近江のお兼
・桜姫東文章
それぞれについて出演者が役への思いや芝居のみどころなどを座談会形式で語るというもの。
短い時間ながら、お稽古の様子など盛りだくさんで、役者さんの人となりも垣間見られておもしろかったです。
仁左衛門さんと玉三郎さんがお二人揃って「桜姫東文章」のお稽古を見てくださったのは、稽古に入って2日目。
「やはり僕らが知っている桜姫と清玄、権助なんだよね」と勘九郎さん。
「しかも稽古2日目っていう、まだ段取りもちょっと大丈夫かって時の・・・あの緊張感たるや、すごい緊張感でしたからね」と七之助さん。
いや~、そのお稽古場観てみたかったです。
「一本刀土俵入」で辰三郎を演じる彦三郎さんが「ビクビクコソコソというのをどこまでするのか。あまり小者になり過ぎてもいけないし・・・ということで、サイコロをいかに印象を残して捨てるのかとちょっと立派にやってたら、玉三郎のお兄さんに、『いや、そここそコソコソしてくれ』と言われた」なんていう貴重なエピソードが聴けたりも。
お祖父様の芝翫さんにお蔦を教わったという七之助さんが「(お蔦が茂兵衛を助けたことが)お蔦の人生の中でもしかしたら山となっていない方がいい、そこまで深い思い入れになっていない方がいいという解釈(忘れていたので)」と祖父が言っていましたというお話もとても興味深かったです。
そうね。助けられた方の茂兵衛は一生忘れられないくらい恩を感じていても、お蔦はほんのちょっとやさしい心を出しただけなのかもしれなかったのね。
その場面でお蔦が使う湯飲みは芝翫さんが使っていらしたものだそうで、実物を見せながら「お客様には絶対わからないけれど、こういう思い入れのあるものを使うと全然違ってくる、というのが歌舞伎役者あるある」ですって。
勘九郎さんもお祖父様の代から受け継がれた茂兵衛のわらじや褌を持ってきて紹介していらっしゃいました。
壱太郎くんは、近江のお兼でやるはずだった布晒を実際にご披露。
橋之助くんが勘九郎さんのことをご本人に向かって「おっきいにい」と呼んでいたのが可愛かったのですが(七之助さんはちっちゃいにい なのかな?)、巳之助くんはお二人のいない場で「雅行さん」「隆行さん」と本名で呼んでいらっしゃいました。
「今回上演が叶わなかったのですが・・」と上演できなかった悔しさも時折滲ませつつ、皆さん穏やかな表情で楽しそうに話していらっしゃいました。
「必ず明治座で、この座組で帰ってきます!」と勘九郎さんが繰り返しおっしゃっていたのが印象的。
最後には勘九郎さんが長三郎くん直伝の手の洗い方(歌つき)も伝授して幕となりました。
本当にきっと明治座に帰ってきてくださいね のごくらく地獄度



