
その後、2005年、2014-15年と再演を重ねて今回が4演目です。
初演は観ていなくて2005年の再演から観始めたのですが、それでももう15年になるのねー(遠い目)。
「キレイ -神様と待ち合わせした女―」
作・演出: 松尾スズキ
音楽:伊藤ヨタロウ
音楽監督: 門司肇 美術: 池田ともゆき
映像: 上田大樹 振付: 振付稼業 air:man
出演: 生田絵梨花 神木隆之介 小池徹平 鈴木杏
皆川猿時 村杉蝉之介 荒川良々 伊勢志摩 猫背椿
宮崎吐夢 近藤公園 伊藤ヨタロウ 岩井秀人
橋本じゅん 阿部サダヲ 麻生久美子 ほか
2020年2月1日(土) 6:30pm フェスティバルホール 1階22列上手
(上演時間: 3時間45分/休憩20分)
3つの国に分かれ長く内戦が続き、大豆原料の人造人間ダイズ兵が戦う「もう一つの日本」が舞台。
誘拐され、10年にも及ぶ監禁から逃げ出した少女ケガレ(生田絵梨花)は記憶を失いながら、ダイズ兵回収業者カネコキネコ(皆川猿時)、その息子で頭は弱いけれども枯木に花を咲かせる能力を持つハリコナ(神木隆之介)、大豆でできた兵士・ダイズ丸(橋本じゅん)、回収されたダイズ兵を食用として加工する食品会社の社長令嬢・カスミ(鈴木杏)たちと出会い、波乱万丈の人生を送りながら、自ら封印した忌まわしい過去に立ち向かっていきます。
そんなケガレを見守るのは成人したケガレ=ミソギ(麻生久美子)とその夫である大人になったハリコナ(小池徹平)・・・。
猥雑でグロテスクで熱い狂乱の中で、どこか醒めた目線。
まるで絵空事のような世界を繰り広げながら、戦争や民族差別といった重いテーマ。
歌とダンスと笑いを散りばめなから、全編を支配する切なさ。
弱者を思い切り笑い飛ばしながら、包み込む優しさ。
松尾スズキさん 真骨頂です。
↑ これ、前回観た時(2015年1月)の感想に書いたのですが、その世界観はまんま健在でした。
♪人間とは多面体であって 鯨を保護した同じ手で
便所の壁に嫌いな女の電話番号書いて 「2000円でヤらせる女」とか
(「ここにいないあなたが好き」)
・・・のように、人は善も悪も、喜びも哀しみも、幸せも不幸も、キレイもケガレも、清濁すべて併せ持っている生きものなんだという普遍的なテーマをまた突きつけられた思いでした。
そしてあのクライマックス。
自ら封印した過去に対峙し、地下室から扉を押し開け脱出するケガレ。
女神像を倒し、扉をこじ開けて地下に降りていくミソギ。
少女時代のケガレと大人になってからのケガレ(ミソギ)・・・異なる時間軸の中で生き、交わることのなかった二人の時間と空間が交錯する場面。
映像を観ているような感覚にもなり、何度観てもシビれる演出です。
・・・とは言いながら、今回席がかなり後方で、しかもオペラグラス忘れるという失態。
そしてご多分に漏れず、キャストをちゃんと把握していない状態での観劇ということで、一幕は手探りのような観劇。
「あのカスミやってる人、台詞も歌もすごくうまいけど誰?声は鈴木杏ちゃんにちょっと似てるなぁ」(鈴木杏さんで正解)とか、「ジュッテン誰?クドカンに似てるけど違う、誰?」(岩井秀人さんでした)・・・みたいな感じ。
そんな中、際立って目に耳に入って来たのはマジシャンの阿部サダヲさん。
というより、この物語がまるでマジシャンが操る舞台のように思える存在感。
多分演出的にもソロナンバーを増やしたりマジシャンの比重を大きくしていたのかと思いますが、ケガレvs マジシャンがこの物語の主軸と思えるくらいのラスボス感。
でもね
阿部サダヲさんは前回ダイズ丸、初演・再演はハリコナだったのですが、前回の感想に書いた
「サダヲちゃんは初演、再演と少年時代のハリコナで、これまた他の役者さんが想像つかない、逆に言うとサダヲちゃんがこの作品で他の役をやるのが思いつかない感じだったのですが、ダイズ丸にヤラレました。面白いのに切ない、切ないのに笑っちゃうダイズ丸サダヲ、おそるべし!」
これ
阿部サダヲさんがダイズ丸を演じた前回はダイズ丸が、少年ハリコナを演じた前々回はハリコナがこの物語の中心のように感じられたものですが、今回のマジシャンにもしてやられました。物語の真ん中を自分の方へ引き寄せてしまう力量、その凄み。阿部サダヲ ほんと、おそろしい子!

フェスティバルホールのロビーには3つの国の国旗が
今やすっかりミュージカル女優の生田絵梨花さん。
舞台を拝見するのは初めてです。
歌うまいねー。透明感のあるよく通る声で、さすが数々の作品にヒロインとして起用されているのも納得でした。
ハリコナの神木隆之介くん。
これが初舞台だということにもオドロキですが、もう26歳だなんて(驚!)
“頭は弱いけれども枯木に花を咲かせることができる”というピュアさがぴったりでした。
笑いの部分もてらいなく、大げさ過ぎずにやっていて好感。神木くんも歌うまいのねー。
岩井秀人さんジュッテンとのコンビ(兄弟)感もよかったな。
大人になったハリコナは小池徹平くん。
前回少年ハリコナで5年経って大人になって・・・と地でいくような(笑)。
大人になって頭よくなって、その反面ピュアさとか人への優しさとかが欠けてしまったドライな感じがよく出ていました。
前回「徹平くん、歌えるのねー」と感心しましたが、彼も今やミュージカル主演男優ですものね。
カスミの鈴木杏さんがすばらしい。
冒頭にも書いたように台詞の歌もうまいのは杏ちゃんだから当然として、カスミさんとして舞台に存在する感がハンパなくて、これ私がわからなかったのもむべなるかなと思いました(言い訳)。
ジュッテンとのあのシーン、いつもドキドキしますが、あっぱれな脱ぎっぷりでした(遠目だからよく見えなかったけど💦)。
カネコキネコは前回に続いて皆川猿時さん。
前回、イロモノ的な女装ではなくちゃんと女性を演じていて、しかもまぎれもなく皆川猿時で、めちゃハマっていたのが印象的だったのですが、今回も完璧。
ほんとに、サダヲちゃんといい、猿時さんといい、大人計画の役者さんってば何なん?
という訳で自分の備忘録用 歴代キャストです。
2020 2015 2005 2000
ケガレ: 生田絵梨花 多部未華子 鈴木蘭々 奥菜恵
ミソギ: 麻生久美子 松雪泰子 高岡早紀 南果歩
ハリコナ少年: 神木隆之介 小池徹平 阿部サダヲ 阿部サダヲ
カネコキネコ: 皆川猿時 皆川猿時 片桐はいり 片桐はいり
ダイズ丸: 橋本じゅん 阿部サダヲ 橋本じゅん 古田新太
マジシャン: 阿部サダヲ 田辺誠一 宮藤官九郎 山本密
ジュッテン: 岩井秀人 オクイシュージ 大浦龍宇一 宮藤官九郎
カネコジョージ: 村杉蝉之介 松尾スズキ 松尾スズキ 松尾スズキ
ダイダイカスミ: 鈴木杏 田畑智子 秋山菜津子 秋山菜津子
ハリコナ大人: 小池徹平 尾美としのり 岡本健一 篠井英介
カミ: 伊藤ヨタロウ 伊藤ヨタロウ 伊藤ヨタロウ 伊藤ヨタロウ
マタドール: 猫背椿 猫背椿 猫背椿 猫背椿
カウボーイ: 乾直樹 少路勇介 皆川猿時 皆川猿時
マキシ: 近藤公園 村杉蝉之介 村杉蝉之介 村杉蝉之介
満員だったけどフェスティバルホールはこの舞台にはちょっとハコが大きすぎるなぁ の地獄度


