2020年02月21日

キモはキヌ子 「グッドバイ」


goodbye2020.JPGケラリーノ・サンドロヴィッチさんの名作戯曲を才気溢れる演出家たちが新たに創り上げるシリーズ「KERA CROSS」。
昨年の鈴木裕美さん演出「フローズン・ビーチ」に続く第二弾は生瀬勝久さんの演出です。
 

KERA CROSS 第二弾
「グッドバイ」
原作: 太宰治
脚本: ケラリーノ・サンドロヴィッチ
演出: 生瀬勝久
美術: 石原敬   照明: 松本大介   
音響: 大木裕介  音楽: 瓜生明希葉
出演: 藤木直人  ソニン  真飛聖  朴璐美  長井短  能條愛未  
田中真琴  MIO YAE  入野自由  小松和重  生瀬勝久

2020年1月25日(土) 5:00pm シアター・ドラマシティ 14列上手
(上演時間: 3時間5分/休憩 15分)



ケラさん演出版(2015年11月)の感想はこちら


物語: 戦後まもない混乱期の東京。
雑誌編集者の田島周二(藤木直人)は闇商売で儲けたカネで何人もの愛人を抱えていましたが、疎開していた妻子(真飛聖/MIO・YAE)を呼び寄せるのをきっかけに、女関係を清算し、闇商売からも足を洗って、まっとうな人生を送ろうと決意しました。
闇商売で知り合った永井キヌ子(ソニン)というかつぎ屋の美女に妻のふりをしてもらい、愛人たちの元を訪ねて別れ話を切り出します・・・。


太宰治の未完の作品にケラさんが独自の解釈で物語を書き加え、ハートウォーミングなハッピーエンドの喜劇に着地させた物語。
だめんずの色男 周二を中心に、愚かしくも愛すべき人々の営みを温かく見守るような、そして少しシニカルな視線も交えて描く脚本がまず秀逸だなぁと改めて思いました。ほんっと、ケラさんってば。

周ニの子どもが双子になったり、場面が省略されたりといった変更はありましたが、基本的に客穂は同じ。
同じ原作・脚本でありながら、演出とキャストが変わるとこんなに印象が違ってくるという舞台の醍醐味を味わいました。
オープニングの役者紹介、映像を使っていつもスタイリッシュなケラさんの向こうを張ったアナログ版みたいな演出に生瀬さんの矜持を感じたりも。


再演等でキャストが変わった作品の感想を書く場合、「前に観たキャストと比べない」と自分に戒めているのですが、この作品は、ケラさん演出版のキャスト・・・とりわけ仲村トオルさんの周二と小池栄子さんのキヌ子、そしてもう一人挙げるなら緒川たまきさんの女医・・・がどハマリで大好きでしたので、どうしても「あの時はこうだったよなぁ~」と思い返してしまうことも。

特にキヌ子は、鴉声で大食いでがさつだけど、「歩いたら誰もが振り返るくらいとびきりの美女」という設定ですが、そのあたりが些か不足していたかなぁ、演出的にも役者さんにも。

立て膝でどんぶりめしをかっ食らうようなキヌ子が、お化粧をして仕立てのよいスーツを着て立つと(しゃべらなければ)気品があって美しい奥様に見える・・・というギャップが重要だと思うのです。
そこを演出が際立たせ切れていないように感じました。

もちろんソニンさんは可愛いし、がさつなところも迫力たっぷりの演技力で見せてくれていましたが、パッと目を惹く華やかな美人というタイプではなく、「ニンじゃない役」という印象は拭えなかったです。
それは私の中に、キヌ子=小池栄子さんというイメージがあまりにも完成しすぎているからかもしれません。
この物語のキモはキヌ子だなぁと改めて思いました。


やさしくてお育ちがよくて頼りないけどどこか憎めない藤木直人さんの周二
何だかしたたかそうだけど実はいいヤツで家族を愛している生瀬勝久さんの連行
おっとり構えて余裕たっぷりだけど実はまだ周二に♡?な真飛聖さんの周ニの妻 静江(まとぶんの歌 久しぶりに聴きました♪)
個性豊かな愛人たちに、その兄や編集者やらといった周りの男たち

杉田のぞみさんのバイオリンの生演奏、いつも窓の向こうに緑が見えているような舞台装置もステキでした。



映画版のキヌ子はまた小池栄子さんなのね の地獄度 (total 2074 vs 2077 )



posted by スキップ at 23:22| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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