
赤堀雅秋さん、田中哲司さん、大森南朋の演劇ユニット(というのかな)4年ぶりに復活。
大森さんから「赤堀さんの芝居に興味ある?」とメールを送られた長澤まさみさんが出演を快諾されたという作品です。
タイトルは「ヤクザだろうが、子どもだろうが、警察だろうが、老人だろうが、女子高生だろうが、みな等しく“神の子”である」という意味なのだとか。
コムレイドプロデュース 「神の子」
作・演出: 赤堀雅秋
舞台美術: 土岐研一
出演: 大森南朋 長澤まさみ でんでん 江口のりこ 石橋静河
永岡佑 川畑和雄 飯田あさと 赤堀雅秋 田中哲司
2020年1月18日(土) 6:00pm サンケイホールブリーゼ 1階D列センター
(上演時間: 2時間)
物語: 道路工事の警備員として働く池田(大森南朋)は楽しみといえば警備員仲間の五十嵐(田中哲司)、土井(でんでん)と繰り出すパチンコとスナックぐらい。3人そろって独身で貧乏、人生に特何の展望もない生活にうんざりしながら暮らしています。
ある日、若くきれいな女性 田畑美咲(長澤まさみ)と出会い、柄にもなく彼女が主催するごみ拾いのボランティアに参加することになり・・・。
池田はじめダメ男たち3人と彼らに関わる人たち・・・行きつけのスナックのママ(江口のりこ)、近所のニート(赤堀雅秋)、美咲や斎藤(石橋静河)の活動、すぐキレるサラリーマン(永岡佑)といった人々の日常をリアルに、でも淡々と描いていて、いかにも“ザ・赤堀ワールド”といった趣の作品。
特に劇的な事件もなく流れていく日々の中で、何気ない日常の愛しさや苦さ、切なさがじわじわとしみ込んできます。
物語は池田を中心に進みます。
ちょっとだらしなくて弱気で、多分社会の底辺にいる人間の範疇に入れられるであろう池田。
仕事場では理不尽に怒鳴られたり、息抜きのスナックでは痴話げんかに巻き込まれたり、ほのかに思いを寄せる人に自分の気持ちを告げることもできず、いつもとまどったような笑みを浮かべて、何事にも熱くなることなく満足することもなく、強く自分を押し出すこともしないで暮らしています。
大森南朋さんの苦笑いのような気弱な笑みがとても印象的。
やさしくて穏やかでいい人なのにどこか残念感が漂って報われない「池ちゃん」が何とも情けなくて、応援したい気持ちにもなりました。
田畑美咲は綺麗な容姿とは裏腹にアンバランスな女性。
「活動」も「信仰」も、本当に自分で望んでいることなのか自分でもわかりかねているといった雰囲気。池田や他の人に向ける笑顔も、心からのものではないつくった笑顔・・・の後にまるで魂がないような無表情になる振り幅もすごかったです。口跡は少し甘さが残るような気もしますが、声はよく通るし、映像でも引く手あまただと思いますが、これからも舞台は続けていただきたいです。
田中哲司さんの五十嵐はまぁ、クズなのだけど(笑)。
「だって俺たちだらしないもん」と自分で言うだらしなくていい加減なクズなのですが、私がタナテツ好きなこともあってかそのクズっぷりも愛すべきクズ。あと、クズなのに何だか色っぽい(クズって5回も書いた)。こんな男がモテるんだろうなと納得させられます。
そして最後にはちゃっかり幸せ(?)を掴むというたくましさも持っているのね。
地じゃないの?と思えるくらい自然体のでんでんさん。
思い込みは激しいけれど多分一番自分の心に正直に生きている人で、美咲や斎藤の活動が宗教に根差したものであることを直感で感じ取るのが土井さんっていうのがいかにもでした。
江口のり子さんのリアルで自在なスナックのママ、短い出ながら強烈な印象を残す赤堀雅秋さんのニート、透明感と危うさを併せもつ石橋静河さんの斎藤、あー、こんなリーマン、いるよね~という感じの永岡佑さんのサラリーマン。
力のある役者さんが揃って、人の暗さや底の部分を描く物語。
何の解決も示されず観客の感性に委ねられるようなエンディングもいかにも赤堀ワールドでした。
キライじゃないけどそれほど得意でもない赤堀ワールド のごくらく地獄度



