まだ演出助手だった小池修一郎先生がこの映画を観て、「いつか宝塚でやりたい」と願っていらした作品なのだとか。
私もこの映画はずい分昔に観て、とても心に残った好きな映画のひとつ。
でもとても宝塚向きの作品とは思えませんでしたが(^^ゞ
望海風斗率いる雪組という強力布陣を得て、満を持しての登場です。
宝塚歌劇雪組公演
ミュージカル 「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」
Based on the motion picture Once Upon a Time in America (courtesy of New Regency Productions, Inc.) and the novel The Hoods written by Harry Grey.
脚本・演出: 小池修一郎
作曲・編曲: 太田健 青木朝子
音楽指揮: 西野淳
振付: 御織ゆみ乃 若央りさ 桜木涼介 KAORIalive
装置: 大橋泰弘
出演: 望海風斗 真彩希帆 彩風咲奈 奏乃はると 舞咲りん
千風カレン 彩凪翔 真那春人 煌羽 レオ 朝美絢 綾凰華
諏訪さき 彩みちる 縣千 彩海せら 潤花 ほか
2020年1月9日(木) 3:00pm 宝塚大劇場 1回19列下手/
1月19日(日) 11:00am 2階1列センター/1月26日(日) 3:00pm 1階1列センター
1920年代 禁酒法時代のニューヨーク。
ローワーイーストサイドで育った移民の少年たちがギャングとして成り上がって行く過程、友情や恋、悲劇的結末を描く物語。
ユダヤ系移民の子、ヌードルス(望海風斗)はコックアイ(真那春人)パッツィー(縣千)ドミニク(彩海せら)たちと盗みを働いて生計を立てていました。ある日、ピンチを救ってくれたマックス(彩風咲奈)が仲間に加わります。敵対するバグジー(諏訪さき)にドミニクを殺されて逆上したヌードルスはバグジーと警官を殺して7年の懲役刑を受けます。出所の日、ヌードルスを迎えたのは暗黒街の若き顔役となったマックスと仲間たちでした・・・。
映画はヌードルス(ロバート・デ・ニーロ)の回想という形で少年時代、青年時代、壮年期と40年にわたって時の流れを行き来しながら展開しますが、宝塚版はそれを30年に短縮し、ほぼ時系列どおりに繰り広げられます。
登場人物は同じですが設定やキャラクターが違っていたり、映画にはない場面が加えられたりしています。
もちろんすみれコードにひっかかるような激しい暴力シーンetc. はナシ。
ヌードルスとデボラ(真彩希帆)の愛を中心に、ヌードルスとマックスの友情と確執を描く、という感じかな。
二幕が特に小池先生独自の解釈が加えられた印象で、映画に見られたミステリー要素はかなり薄め。ヌードルスとマックスの「生き方の対照」もさほど際立ってこない印象。
その改変を「映画よりわかりやすくなった」ととるか「改悪」ととるかは好みの分かれるところです。
私は、「これは映画とは別物だ」と思いました。
映画で「マックス、生きていたのか」とわかった時の衝撃は今でも忘れられないほど強烈でしたので、マックスの描き方が「そうではない」という感じ。
むしろジミー(彩凪翔)に底知れぬマックス味を感じました。
とはいえ、物語として、ミュージカルとして、とてもよく出来ていて力も入った作品。
プロローグのギャングたちはひらすらカッコいいし、デボラの出演するヴァンダービルド・フォリーズのショーは豪華絢爛、クラブ・インフエルノやハバナ・フェスティバルなど華やかな歌とダンスの場面もたくさん盛り込まれて、楽しい。
最初観た時、「すぐに脳内リフレインするような曲がない」と思いましたが、さすがに3回も観ると
♪私が惚れた男は 背が高くて ハンサム~ とか
♪ワンスアポンアタ~イム イン アメリカ~ とか
歌えるもんね(そこ?)
今回とても印象に残ったのは「ダビデの星」。
冒頭のファット・モーのダイナーの窓にダビデの星が描かれていて、「あぁ、そうだ。ユダヤ人の話だった」と思い至りました。
マックスの連邦準備銀行襲撃をやめさせるか迷うヌードルスが歌う曲が「ダビデの星」。
ステンドグラスが美しい教会にもダビデの星が。
映画を観た時は気づかなったものです。
というか、あの頃は若くて無知で、ダビデの星がユダヤを象徴する印だということさえ知らなかったと思います。
「移民の中で最後にアメリカに来た」という台詞がありましたが、アメリカに来ても差別され貧しさから抜け出せない彼らにとって「ダビデの星」がどれほど心の支えになっていたかと思いを馳せました。
映画にもあったのかなぁ。それを確かめるためにももう1回観たいです(←)。
望海風斗さんのヌードルス。
どこか哀愁を帯びた表情、人生の苦みのようなものを感じる壮年期のヌードルスが秀逸でしたが、少年期も青年期ももちろんよかったです。歌はさすがに上手くて聴き応えたっぷり。
あの海辺のレストランの薔薇の部屋で「俺がどれほどお前のことを愛しているか教えてやる」とデボラに迫って自ら蝶ネクタイを緩める時のキケンな色っぽさ。その後のドラマチックな歌唱。
マックスが自らを撃った銃声をドアの外で聞き、一瞬ハッとしながら、まるでこうなることがわかっていたような哀感と孤独感に満ちた表情が忘れられません。
真彩希帆さんのデボラ。
「私はユダヤ出身の最初の皇后になる」という言葉どおり、「何としてでもローワーイーストサイドから這い上がってみせる!」という強い意志が感じられるデボラ。
バレエシーンを歌に持っていくのはいかにも真彩さんのための演出という感じでしたが、ヴァンダービルド・フォリーズの豪華なセットと衣装にも負けない歌唱はすばらしかったです。
彩風咲奈さんのマックス。
アポカリプスのオフィスで舞台奥から両手挙げながら前へ出て来るところがめちゃカッコよくて、あの場面だけでも何回もリピートしたい。スーツやタキシードの似合いっぷりもハンパありません。
マックスについては先述したとおり脚本の描き方がいささか不満なのですが、カッとしてすぐ女を殴ったり、道端で犬を蹴飛ばして家に帰って震えて泣くような、狂気と裏腹の二面性がもっと欲しいと思いました。
マックスの愛人 キャロルは朝美絢さん。
超絶美人です。
1回目観た時、キャロルがせり上がって来た場面で周りの人たちが一斉にオペラ挙げてちょっと笑っちゃった。
華やかで美人で歌もうまくて、頭もよくて情にも厚くてほんとにいいオンナ。
キャロルがいい女すぎて「何だよ、マックス~」となりますね。
歌は違和感ありませんが台詞の声は女役にしては少し低めだったかな。
プロローグとフィナーレは本来の男役で登場で、ここぞとばかりにキメていました。
彩凪翔さんのジミーがとてもよかったです。
実在の人物ジミー・ホッファがモデルと言われている役。
前半の真摯な労働運動家、マックスを助ける時のキレ者ぶり、そして癒着が発覚した後の憎らしいまでの落ち着きと動じなさ・・・の演じ分けがお見事でした。
同じ貧民街の出身なのに音楽を愛してやりたいことをのびのびやってちゃんと成功するという、ある意味ヌードルスたちと対極の場所にいるニック 綾凰華さん、少年っぽい雰囲気がピタリとハマったドミニクの彩海せらさんも印象的でした。
片目細めてハーモニカ吹く真那春人さんのコックアイがいかにもコックアイで感心。
逆に縣千さんパッツィーはもう少し個性出してもいいと思います。何だか優等生っぽかったです。
ハバナの場面の彩みちるさんエヴァもかわいかったな。あと潤花さんがやっぱり目立つ。
フィナーレは、彩凪翔さん・朝美絢さんの銀橋渡り → ロケット(センターは縣千くん)→ 望海さんと娘役さんたち → 男役群舞 → 望海さん抜けて男役群舞 → 望海・真彩デュエットダンス という流れでした。
1/26の席は1列目センターブロック通路側という神席だったのですが、プロローグのギャングたちでは朝美絢さん、綾凰華さん、フィナーレパレードでは彩風咲奈さん、朝美絢さんが目の前に立つ訳ですよ・・・そりゃヤラレるってもんです。



開演前の字幕スクリーン。
肉眼で見ると黄色なのに写真撮るといろんな色がでるの、おもしろいです。
パレード:
エトワール 舞咲りん
諏訪さき・縣千・彩海せら
彩みちる・綾凰華・潤花
朝美絢
彩凪翔
彩風咲奈
真彩希帆
望海風斗
潤花さんパレード初登場。
着々と上がってきていますね。
友と戯れ 愛を求め 走り叫び涙した日々 のごくらく度


