2020年02月02日

8年ぶり!幸次郎はんが帰ってきた 「大當り伏見の富くじ」


tomikuji2020.jpg

♪伏見の富くじ当たりくじ 
せーんひゃくじゅういちばんっ せーんひゃくじゅういちばんっ 
なんぼなんでも揃いすぎ

が耳について離れません(笑)。


「熱いご要望にお応えして再上演」
とポスターにもチラシにも演目の前に記載されていました。
ほんと、再演を熱く熱く要望していました。
「幸次郎はんにまた会いたい」という願いが叶って、何てうれしい初春なんでしょ。


壽初春大歌舞伎 夜の部 「大當り伏見の富くじ」
お稲荷様ご神託より   
霊験あらたか「抜け雀」まで
「鳰の浮巣(におのうきす)」より
脚本・演出: 齋藤雅文
出演: 松本幸四郎  片岡愛之助  中村壱太郎  大谷廣太郎  中村虎之介  
嵐橘三郎  澤村宗之助  上村吉弥  市川猿弥  坂東彌十郎  中村鴈治郎 ほか

2020年1月3日(金) 6:35pm 大阪松竹座 1階4列センター/
1月16日(木) 1階1列センター/1月27日(月) 3階1列センター
(上演時間: 1時間45分)



初演(2012年)の感想はこちら
  

明治時代に作られた「鳰の浮巣」という歌舞伎の台本を、幸四郎さんが中座の屋上の倉庫で発見してずっと温めていたものを2012年 松竹座の「二月花形歌舞伎」で上演された演目。

もとは大店の質屋の若旦那ながら、ある事件で店がつぶれ今は屑を拾っていつか店を再興することを夢見ている紙屑屋幸次郎(幸四郎)。ある日花魁・鳰照太夫(鴈治郎)にひと目ぼれして、川で拾ったお金で島原へ出向きます。そこで渋々買わされた1枚の富くじが、千両の大当たり・・・のはずが・・・。


喜劇で全編笑いが散りばめられ、吉本新喜劇だったりドリフだったりのギャグもふんだんに織り込まれて好き放題やっているようでいて、元々の話の骨格がしっかりしていますので、ただおもしろいだけに流れず、笑いの中にほろりとさせられる人情話あり、勧善懲悪あり、いかにも歌舞伎らしいファンタジーもあって、お約束のハッピーエンドでとても明るい気分で気持ちよく打ち出される、本当に多幸感に満ちた舞台です。

幸次郎はんと鳰照太夫のお守り袋に入っていた歌
「いで入るや 波間の月を 三井寺の 鐘のひびきに あくる湖」
も今回しっかり把握しました。




歌舞伎の様々な場面が織り込まれているのも観ていて楽しい。
花魁道中で幸次郎が鳰照太夫を見初める場面は、もちろん「駕籠釣瓶」を思い起こさせますし、川掃除をする羽目になった幸次郎が拾ったお財布の中に手を入れて、急にドスの効いたイケボで「ごじゅうりょう~」と言う「仮名手本忠臣蔵」の定九郎とか、他にも「封印切」や「切られ与三」、「吉田屋」などナド。

鳰照太夫を真ん中に艶やかな着物の廓の花魁道中が横一列に並んで大ゼリに乗って盆で回りながらせり上がってくるところは、先代猿之助さんのスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」みたいでゾクゾクするなぁと思っていたら、初演の感想でも同じこと書いていました。


同じことといえばこちら。
「お人よしでちょっと間抜けだけどどこか憎めず愛敬たっぷり。大店のぼんらしい品も色気も持ち合わせている幸次郎。染五郎さん、独壇場です。
かつては住みたいと思っていたこともあるくらい大阪を愛してくださっているだけあってはんなり関西弁もお手のもの(たまにイントネーション微妙なところもあるけどご愛敬)。『ほんまは江戸のお人ちゃうか』と言われて、『なんでやねーん』と返すわざとたどたどしい関西弁の発音もマル。
役者としての力量はもちろんのこと、常に新しいものを求め発見する進取の気性やそれを実現する実行力、プロデュース力。千壽郎さん@小春ちゃんのような若手の才能を見出すセンス。そして舞台の中心にいて輝きを放つカリスマ性。改めてパフォーマーでありアーティストでもある市川染五郎さんの底力を知った思いでした。」
これ、全く同じことを今回も感じました。
もうこれ以上のこと書けない(笑)。
「お江戸のお人」のところは松十郎さんに「江戸っ子でっか」と言われていました。

あれから8年。
ずっと走り続けて、襲名もあって、さらに高みを見据えて、でもちゃんと過去の作品もハイレベルで満足させてくれる幸四郎さん、ほんとすごい。


初演時、「アドリブを一切用いず、構築された、計算されつくした喜劇をやりたいと思っています。」と幸四郎さんがおっしゃっていた通り、初演からの改変はほとんど感じられず、禿ちゃんの台詞に至るまで、聴いていて8年前の舞台がぶわっと脳裏に蘇ってきました。

冒頭の口上
「あたい、紙屑屋の幸次郎いいまんねん。幸四郎ちゃいまっせ。幸四郎さんのことは知ってます。日本中で弁慶やらはった人でっしゃろ。あんなんされると後が大変や。世界中で弁慶やらなあかん・・・」の後に「え?先代?!せがれ?」と続くところに8年の時の流れを感じます。
「せがれのことはよう知ってます。あほや思います。弥次喜多や~言うてラスベガス行ったり、大黒屋光太夫や言うてロシア行ったり・・・あほや思います。」
と聴きながら、あほのせがれさんとともに私も古今東西旅したなぁと思いを馳せたり。

「もちもち~っとしててまんまるでお月さんのようで、ほっぺた押すとこし餡がぷにゅ~と出てきそうな笑顔」でキラリ~ンと笑う鳰照太夫 鴈治郎さん、かわいくていじらしくてしっかり者の妹 お絹ちゃんの壱太郎くん、キリリといなせなでいいとこ持って行く信濃屋傳七の愛之助さん、幸次郎はんと同じくらい待ってました!な小春の千壽さんといった安定のオリジナルキャストの中、新しく入った人たち。

黒住平馬は市川猿弥さん。
あの「かわゆし」が耳について離れません(笑)。
気持ち悪いのだけれど憎み切れないような愛嬌は猿弥さんならでは。
千穐楽では奥方の熱いくちづけが長すぎて「鼻が圧迫されて息ができない!」と必死の抗議していらっしゃいました。
それ見て足バタバタさせながらマジ笑いする幸次郎さんと幸次郎さんの肩に顔隠して笑うお絹ちゃん兄妹 かわゆし。

雛江ちゃんの吉太朗くん。
初日に観た時、「あの雛江ちゃん誰?」とわからなかったくらい。すっかりお姉さんになって。
初演の時は「また脱げた~」と繰り返す禿ちゃんだったことを思うと8年の歳月を感じます。
しっとり落ち着いた新造さんぶりで台詞もよくてこれからも楽しみ。
フィナーレの3人(壱太郎・虎之介・吉太朗)の踊りでも一番キレキレでした。

千鳥は虎之介くん。
こちらも初日に観た時「千鳥、誰?」と思った人。
夜の部「夕霧名残の正月」の感想にも書いたのですが、何気に「虎之介奮闘公演」な初春大歌舞伎。
この千鳥もよかったです。男声との切り替えもうまかったな。
ちなみに初演で千鳥を演じられた宗之助さんは今回も出演されていますが、幸次郎の友人の芳吉。
性転換されましたね(←)。



自分の備忘録用  初演と再演の配役
          2012年2月     2020年1月
紙屑屋幸次郎:   市川染五郎     松本幸四郎 (襲名後)
信濃屋傳七:    片岡愛之助     片岡愛之助
幸次郎妹お絹:   中村壱太郎    中村壱太郎
喜助:       尾上松也     大谷廣太郎
島原の太夫千鳥:  澤村宗之助    中村虎之介
芳吉:       中村亀鶴     澤村宗之助
新造雛江:     中村米吉     上村吉太朗
小春:       片岡千壽郎    片岡千壽 (名題昇進後)
熊鷹のお爪:    坂東竹三郎    上村吉弥
黒住平馬:     中村獅童     市川猿弥
絵師雪舟斎:    中村歌六     坂東彌十郎
鳰照太夫:     中村翫雀     中村鴈治郎 (襲名後)



楽しくて幸せだった松竹座「大當り伏見の冨くじ」
またいつか幸次郎はんに会えますように。



ポスター可愛いすぎ→当然買うよね→もうパネルに入れて部屋に飾っています のごくらく度 (total 2066 vs 2068 )


posted by スキップ at 16:00| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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