2020年01月18日

これは日本物なのか・・・な? 宙組 「El Japón -イスパニアのサムライ-」


eljapon.JPG「宙組トップスター 真風涼帆が初めて日本物ミュージカルに挑む」
2018年に「白鷺の城」がありましたが、あれは日本物レビューだったので、「和物のお芝居自体、初めて」なのですって。へぇ~、研14でもそんなことあるんだ。

ただ今東京公演真っ最中ですが、私が観たのは昨年の宝塚大劇場公演です。


宝塚歌劇宙組公演
宝塚ミュージカル・ロマン
「El Japón (エル ハポン) -イスパニアのサムライ-」
作・演出: 大野拓史
出演: 真風涼帆  星風まどか  芹香斗亜  寿つかさ  凛城きら  
松風輝  星吹彩翔  桜木みなと  実羚淳  和希そら   留依蒔世  
遥羽らら  瑠風輝  天彩 峰里  鷹翔千空  夢白あや/英真なおき ほか

2019年12月1日(日) 11:00am 宝塚大劇場 1階9列下手/
12月8日(日) 3:00pm 1階10列上手
(上演時間:1時間35分)



スペイン南部の町コリア・デル・リオに「サムライの末裔」を自認する「ハポン(日本)」姓の人々が数多く実在していることから着想を得た物語。
慶長18年 仙台藩主 伊達政宗(美月悠)が慶長遣欧使節団としてスペインに派遣する支倉常長(寿つかさ)たちの出航を祝う祭りの夜、勇壮に踊る鬼剣舞の一人が突如政宗に斬りかかり、そこに政宗の護衛役で夢想願流剣術の名手 蒲田治道(真風涼帆)が割って入ります。鬼剣舞の首領はかつて政宗が見捨てた和賀一族の生き残り 藤九郎(和希そら)で、城とともに果てた姉 藤乃(遥羽らら)は治道の恋人でした。藤九郎を斬ることができない治道は政宗に詫び、切腹しようとしますが、政宗は治道を藤九郎とともに慶長遣欧使節団に加えて渡欧させることにします。
スペインに到着した治道は宿屋を営む女性カタリナ(星風まどか)やその宿に宿泊するアレハンドロ(芹香斗亜)と出会い・・・。


・治道と藤乃の悲恋からの藤九郎との確執
・悪徳農場主 ドン・フェルナンドのカタリナへの横恋慕
 (カタリナの夫はフェルナンドの謀略で殺害されたらしい)
・謎の男 アレハンドロ 愛用の拳銃の名前はキキ
 (実はカタリナの亡き夫の親友かつスペイン国王の寵臣レルマ公爵のご令息)
・スペインの農場に奴隷として売られてきた日本各地の娘たち大活躍
・支倉常長とスペイン国王フェリペ3世と謁見や交渉の難航もちょっぴり

と、物語も登場人物も盛りだくさん。
実在の人物と架空の人物が交錯して描かれています。


これを「日本物」と呼んでいいものかどうかはさておき、舞台はスペインなので、治道一行以外はもちろんみんな洋装で、歌やフラメンコの場面もあって華やか。派手な殺陣もふんだんにあって楽しい。
大詰めの治道・藤九郎 vs ドン・フェルナンド軍団の大立ち回りも盛り上がっておもしろく観ましたが、ラストの脱力するようなハッピーエンドはあれでいいのか?(笑)


フェルナンド一派をやっつけてカタリナと宿を無事守ることができた治道ですが、使節団が帰国する船は出航し、このままだと不法滞在の罪人となってしまいます。
その治道に、未だ死亡届の処理がされていないカタリナの夫 バルトロメとしてこの地で生きていくことを提案するアレハンドロ。
「いや、しかし・・・カタリナの気持ちも・・・」と戸惑う治道に、「承諾します(キリッ)」とキッパリ受け容れるカタリナ。
えええぇ~、ええのん?カタリナ

こうしてスペインに残った治道たちがエル・ハポンとなった訳ですね。
ちなみに、藤九郎も同じく不法滞在者な訳ですが、全く言及なし。どうなったんでしょ?(笑)


黒髪長髪がキリリと似合う真風涼帆さん。
悲恋の過去を持つ翳りがあり、憂い顔であまり笑顔を見せない武骨な雰囲気もよくハマっていてカッコいいことこの上なし。
立ち廻りはもう少しキレが欲しいかなとも思いましたが、長身から繰り出される刀筋は迫力も華やかさも十分でした。

カタリナの星風まどかさん。
夫亡き後、ひとりで宿屋を切り盛りする女主人で芯が強く勝気な美人。
少女っぽい(と思っていた)まどかちゃんがしっかり大人の女性を演じていて感心。
奴隷の娘たちがお国なまりで口々に窮状を訴える時、「・・・ごわす」と言った子に「ごわす?」と真顔で聞き返すの2回観て2回とも爆笑しました。
ビジュアルよし歌よし演技よしで本当にバランスの取れた娘役さん。

アレハンドロ 芹香斗亜さん。
めちゃいいところに登場して全部持っていく、いわゆるオイシイ役。
ちょっとトボけた雰囲気で力の抜け加減もいい感じ。
「協力してやったんだから家に帰って来るんだそ」と凛きらパパに言われて、「はぁ~い」と一応は神妙に返事するアレハンドロかわいい。
と思ったら、その舌の根も乾かぬうちに「誰がそんなこと言った?」と治道に言ってのけるあたり(笑)。

が、物語としては、ドン・フェルナンドをもっと若い設定にして芹香さんがやって、vs 治道とした方がスケール感がアップしたのではないかなと思っています。
悪役フェチとしては芹香さんの凄みのある悪人観てみたかったな。
これは「オーシャンズ11」の時にも感じたことで、二番手さんはトップのよき相棒役もいいですが、めちゃめちゃ強力なライバルや悪役で観たいところ。

ドン・フェルナンドを演じた英真なおきさんはさすがの存在感と憎たらしさ。
エロ親父風の色気も、成り上がりの慇懃無礼さもゲスな感じも、ほんと上手い。
その息子 エリアスは桜木みなとさん。
父親の悪徳ぶりを小物にしたような道楽息子・・・でも腕には自信がある・・・が治道の敵ではない、みたいな(笑)。
甘いマスクでどちらかといえば王子系のずんちゃん、こんな役ができるのもベネディクトの経験が活きているなと思います。

和希そらさんの藤九郎が役としても演じるご本人もとてもよかったです。
サイドストーリーとして藤九郎の成長物語にもなっているのね。
帰国の船に乗ったと思わせておいて、治道のピンチに「俺の師匠はお前だけだ。勝手に死なれては困るんだよ!!」と少年漫画のような熱さで戻ってくる藤九郎、イイゾ!
登場の鬼剣舞の場面で、配役も知らず覆面して顔もわからない群舞の中、キレッキレの踊りだけで「あれ、和希そらくんだ!」とわかった自分エライ←

他には、西九郎の瑠風輝さんが落ち着いた演技でちゃんと治道の先輩(しかも賢明で温かい)に見えて上手いなぁと思ったのと、使節団の一員 九郎右衛門の鷹翔千空さんが立ち姿や佇まいが美しくて、大勢の中にいても目を惹きました。
「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」で俄然注目した103期の亜音有音さんはどこにいるのか全然わからなかったけど(←)、後でプログラム確認したら、カタリナの夫の声でした。あー、あの声。そうだったのかー。



→ ショー編につづく


posted by スキップ at 23:05| Comment(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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