2019年11月28日

さぁ 自分の力を試す時 星組 「ロックオペラ モーツァルト」


romozart.JPG星組新トップコンビ 礼真琴&舞空瞳のプレお披露目公演。

礼真琴さんヴォルフガングが歌う ♪道を開けろ僕が通る が今も頭の中をグルグル。
この曲に限らず、楽曲は石田昌也先生が宝塚版として訳詞?された(ストーリーに即しているかどうかはさておき)ものと思いますが、

♪さぁ 自分の力を試す時~
 誰も知らない夢 僕がつくろう
 そこに行くものたち 僕の仲間さ 
 ともに進んで行こう~

なんていう歌詞が、礼真琴さんと新しい星組の船出にぴったり。
それを礼真琴さんがホールいっぱいに響くのびやかな声で歌うものだから、本当に聴き惚れます。


宝塚歌劇 星組公演
「ロックオペラ モーツァルト」
The Musical ≪Mozart, l'opéra rock≫
Produced by WAM PRODUCTIONS
International Licensing & Booking, G.L.O, Guillaume Lagorce, info@glorganisation.com
潤色・演出: 石田昌也
音楽監督・編曲: 玉麻尚一
装置: 大橋泰弘  衣装: 有村淳
出演: 礼真琴  舞空瞳  凪七瑠海  悠真倫  万里柚美  白妙なつ  
音波みのり  輝咲玲央  夢妃杏瑠  漣レイラ  ひろ香祐  音咲いつき  
紫藤りゅう  朝水りょう  小桜ほのか  桜庭舞  極美慎  星蘭ひとみ ほか

2019年11月20日(水) 3:00pm 梅田芸術劇場 3階2列上手/
11月23日(土) 12:00pm 2階1列下手/11月27日(水) 1:00pm 1階8列上手
(上演時間: 3時間/休憩 30分)



1週間の公演の初日、中日、千秋楽とバランスよく(←)3回観ました。
座席も3階→2階→1階と順調に降りてきたよね(笑)。

初日カーテンコールレポはこちら


「太陽王」や「1789」「アーサー王伝説」を手がけた(最近では「CASANOVA」の楽曲も)ドーヴ・アチアさんが2009年にパリで初演されたフレンチミュージカル。
日本では2013年に中川晃教さんと山本耕史さんのモーツァルト、サリエリの役替りで上演されました。

オリジナル版も2013年の日本版も観ていませんので、どれくらい潤色されているのかわかりませんが、台詞や歌詞に「石田節だなぁ」と感じるところが散見されたり(「俺が女ならこじらせ女子」って何よ、とか)、幕前で4~5人に物語の流れを説明させるベタな演出が多いとか、いささか不満はあるものの、楽曲のすばらしさと役者さんたちの熱演・熱唱で力づくでねじ伏せたという感じ。
重層的なコーラスもよくて、今回本当に星組の歌唱力を見直したな(←)
本当に、曲がよくて歌う人がうまいと何度聴いても飽きないし、またすぐ聴きたくなるものなんだなということを実感しました。


物語は、よく言われているように、ミュージカル「モーツァルト!」と「アマデウス」(この2作品はどちらも観ている)の中間といった趣き。

音楽を愛し、純粋で自由奔放な天才音楽家 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(礼真琴)が、21歳でザルツブルクを出奔し、マンハイム、パリ、ウィーンと移り住んで35歳で夭折するまでを、コロレド大司教(輝咲玲央)との確執や父レオポルド(悠真倫)や妻 コンスタンツェ(舞空瞳)の愛、宮廷作曲家 サリエリ(凪七瑠海)の葛藤などを絡めて描いています。

天賦の才能に恵まれ、無邪気で女好きで奔放で、音楽への夢と自由を求め続けたヴォルフガング。
「僕の才能は神から授かったものではなくて父がつくったものなんだ」とヴォルフガング自身が言う、父 レオポルドの存在の大きさ。
「フィガロの結婚」を上演したいというヴォルフガングに周囲がこぞって反対する中、「何をやらかすかわからない男を好きになってしまったのです。冒険に出かけるように」と言い放つコンスタンツェの愛と理解。
ヴォルフガングの才能に嫉妬し、その才能を畏れ、そして誰よりもその才能を認めていたサリエリの苦悩と葛藤。

これらのドラマが宝塚らしい華やかなダンスや歌に彩られて展開します。

ヴォルフガングの初恋の人 アロイジア(小桜ほのか)の登場時のソロ 「Bim Bam Boum」やそのアロイジアと妹のコンスタンツェがヴォルフガングを取り合って歌う「死んでしまえば」、二幕でのヴォルフガングの姉 ナンネール(桜庭舞)のソロなど、娘役が歌うナンバーが多いのも特徴的。
衣装も今回とてもよかったです。


一幕終わり。
パリで仕事にも恵まれず、母を病気で亡くして絶望の中、雨に濡れながら踊るヴォルフガングこと礼真琴のダンスがすばらしく、観ていてかなり心拍数上がったのに、その後の絶唱(バラの上で眠りたい)。
声量、歌唱力、そして表現力に心を一気に持って行かれました。凄まじい。
そこに重なる舞空瞳さんの裸足のダンス。
ここはコンスタンツェとしてではなく、ヴォルフガングの心象に寄り添うものとして踊っているということですが、これがまたすばらしくて。
礼真琴さんの魂の熱唱、舞空瞳さんのダンス、赤い照明、暗い影のような群舞、光の中から舞い散る紅い薔薇の花びら・・・息をのむほどに美しく激しいシーンでした。


二幕は一旦ザルツブルクに戻ったヴォルフガングが、コロレド大司教にもう一度旅に出たいと申し出る場面から。
怒った大司教から解雇を言い渡されたヴォルフガングは、「やった~!僕は自由だ!!」と大喜びして高笑い、♪道を開けろ僕が通る を客席に降りて再び歌いますが、彼の心にはすでに狂気が入り込んでいるようにも感じられ、その姿が痛々しくも見えました。

プロローグで黒い香りプンプンに漂わせながら ♪その男モーツァルト を歌って以降姿を見せなかったサリエリも二幕から本格登場。
常に黒い服を纏ったサリエリが歌う「殺人交響曲」(殺しのシンフォニー)のカッコよさ。悪役フェチの血が騒ぎます。

「フィガロの結婚」の上演中止、幼い息子たちの死、愛する父 レオポルドの死など、仕事の上でも精神的にも追い詰められて、心も体も蝕まれて、自らの死の予感に怯えるヴォルフガング。
裏で暗躍してヴォルフガングの仕事を妨害し追い詰め、出世競争にも勝ったサリエリ。
それでも、「モーツァルトが死んでも彼の曲は永遠に残る」と虚しい敗北感ばかりがをつのらせ、ヴォルフガングを見舞うサリエリ。

そんなサリエリに「音楽に勝ったも負けたもない」とヴォルフガング。
「音楽は料理と同じ、その人の口に合うか合わないか。勝ち負けじゃない」と。
その言葉を受けて穏やかな表情を見せるサリエリ。
心の底にある「音楽」という絆で結びつき、理解し合った2人。

最後に(ヴォルフガングが亡くなった後だけど)2人が歌う「やすらぎに包まれて」はとても感動的で、ここで終わってもよかったかなーと思いましたが、そこはタカラヅカ。
ヴォルフガングとコンスタンツェが「恋のディスタンス」を笑顔で歌って、サリエリもヴォルフガングの両親も、コロレド大司教も、登場人物全員が笑顔で登場して、最後にまたヴォルフガングとコンスタンツェが2人で愛を歌い上げるというハッピー感満載のラストとなりました。


フィナーレ
交響曲第40番やピアノ協奏曲や、アイネクライネナハトムシークや、男役群舞はトルコ行進曲と、聞き覚えのあるモーツァルトの楽曲の数々をロックアレンジで。

・凪七瑠海さん + 娘役のダンス
・礼真琴さん 歌 + 音波みのりさん、小桜ほのかさん
・礼真琴さん一人 ホリゾントの階段へ向かって歩き、振り向いて「フッ」(イケボ)からの男役群舞
・紫藤りゅうさん、極美慎さん + 娘役のダンス
・礼真琴さん・舞空瞳さん デュエットダンス

という流れでした。
パレードのエトワールは白妙なつさん。

礼真琴仕様のダンサブルなフィナーレ。
群舞もスピード感にあふれ、すごく振りの手数が多いダンスナンバーをキレッキレで踊る礼真琴さん。

かなりアップテンポでハイテクなのにとてもシンクロしているデュエダン。
男役としては決して大きな方ではない礼真琴さんのリフトの高さ、美しさ、回転軸のブレなさ。
礼さんのハイテクダンスにピタリとついていく舞空さん。

礼真琴さんが「これからもずっとこのデュエットダンスから始まったと思っていけるような、心に残るナンバーにしたい」とおっしゃっていたとおり、とても心に残るファーストデュエットダンスでした。
ほんとに始まるんだなぁ。



「後宮からの逃走」リハーサルの場面で、ヴォルフガングがサリエリに「サリエリさんも笑うことあるんですか?」というところはアドリブ場面になっていて、初日こそ普通に変顔2回しただけでしたが、後の2回は

11/23 (朝美絢さん他雪組メンバー観劇):
♪ミュージック レボリューション と雪組ショーを歌い踊る。
カーテンコールでは凪七さん(ミュージックレボリューションに出演)に振りを教えてもらって、雪組さんたちの方に向かって踊っていました。

11/27 (寿つかささん、桜木みなとさん、和希そらさん他宙組メンバー観劇):
♪ソーラーパワーを感じろ~ と宙組ショーを歌い踊る。
サリエリ笑わない(!)
「それなら私にもできる」と言い放つ(凪七さん元宙組)
じゃ、とばかりにサリエリからスコアを取りあげて踊ってもらおうとするヴォルフガングに、「やる訳ないだろ!」とサリエリ。

一瞬どうしようとドギマギのヴォルフガング。
「ヴォルフガング がんばって!」とコンスタンツェのエール入る。
♪サリエリさんを笑わせたい サリエリさんを笑わせたい とビミョーな歌を歌いながらサリエリの周りを回るヴォルフガング。
サリエリ やっと笑う。

カーテンコールではまたまた凪七さんが振付指南。
礼真琴さん、幕降りる直前に超カッコいいガチダンスやって客席きゃ~
もう1回幕上がった時には悠真倫さんも同じ振り踊っていました。

ここ、3回ともサリエリの凪七さんが思わず笑ってしまった、噴き出したという感じに見えて、お芝居上手いなぁと思いました(本当にそうだったのかもしれませんが)。
あと、ミューレボはともかく、ソーラーパワーは「ファンキーサンシャイン」(2010年)のテーマ曲で、そんな古いショーをなぜ?と後で調べたら、今回の作品と同じ石田昌也先生作・演出でした。
石田先生 1階最後列で観ていらっしゃいましたし、宙組 寿組長も観劇する中でこのアドリブぶっ込んでくる礼真琴さん さすができる子。


二幕でヨーゼフ二世(ひろ香祐)が登場する度に赤い服を着てブロンドのマッシュルーム頭の侍従が
「オーストリア皇帝 ヨーゼフ二世陛下。われらがチロルの太陽・・・」
と大きな声で宣言して「もうよい!」とヨーゼフ二世に遮られるのですが、この棒読みっぷりがツボで、11月23日に観た時には言い始める前から客席クスクス。

「フィガロの結婚」上演中止の場面では、ヨーゼフ二世がヴォルフガングたちに真剣に話しているのに、離れたところで立ったまま居眠りしてぐわんぐわん揺れてるし、そこへヨーゼフ二世がやってくると満面笑顔で従うし、でとてもお茶目でキュート。
演じているのは咲城けいさん。
「鎌足」で藤原不比等を演じていた子かぁと後で知りましたが、今回しっかり把握しました。
舞空瞳さんと同じ102期生。思えば星組には102期の1番2番3番揃っているのね。



という訳で長くなりましたので、キャスト編は別記事に。


posted by スキップ at 21:47| Comment(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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