
「エリザベート」や「モーツァルト!」と同じウィーン劇場協会が2017年9月に制作・初演した新作ということですが、ずいぶんテイストの異なった、明るく楽しい現代ミュージカルです。
宝塚歌劇 月組公演
日本オーストリア友好150周年記念
UCCミュージカル
「I AM FROM AUSTRIA -故郷は甘き調べ-」
I AM FROM AUSTRIA – The Musical with Songs by Rainhard Fendrich
Music and Lyrics: Rainhard Fendrich
Book: Titus Hoffmann & Christian Struppeck
Original Production by Vereinigte Bühnen Wien
潤色・演出: 齋藤吉正
編曲: 手島恭子 音楽指揮: 上垣聡 装置: 國包洋子
出演: 珠城りょう 美園さくら 月城かなと 鳳月杏 海乃美月
暁千星 光月るう 夏月都 紫門ゆりや 白雪さち花 千海華蘭
輝月ゆうま 晴音アキ 夢奈瑠音 叶羽時 蓮つかさ 風間柚乃 ほか
2019年10月6日(日) 11:00am 宝塚大劇場 1階10列下手/
11月3日(日) 11:00am 1階1列下手
(上演時間: 3時間/休憩 30分)
物語の舞台はウィーンにある老舗四つ星ホテル・エードラー。
跡継息子のジョージ(珠白りょう)は革新的な改革を掲げて、ホテルを切り盛りする母であり社長のロミー・エードラー(海乃美月)とぶつかりながらも悲願である“五つ星”獲得を目指して奮闘していました。
このホテルにハリウッドの人気女優エマ・カーター(美園さくら)がお忍びでやって来ますが、フロント係のフェリックス(風間柚乃)が彼女の来訪をツイートしたためにマスコミが押し寄せホテルは大混乱に陥ってしまいます。ホテルの不手際を詫びに、ジョージがエマの部屋へ訪ね、二人は意気投合します。エマは実はオーストリア人という出自を隠していたのでした・・・。
主題歌の「I AM FROM AUSTRIA」はオーストリアの第二の国歌とも称される曲で、“オーストリアの国民的シンガーソングライターであるラインハルト・フェンドリッヒが綴った名曲の数々”と公式サイトにありましたので、いわゆるジュークボックス・ミュージカルになるのかな。
とはいえ、元歌を知りませんので、すっかりこのミュージカルのための楽曲だと思って楽しみました。
サブタイトルに「故郷(ふるさと)は甘き調べ」とあるとおり「故郷」や「家族」をテーマとしていますが、ストーリーそのものはシンプルで、基本はエマの自己発見の物語。
タイトルの「I AM FROM AUSTRIA」もクライマックスのオペラ座舞踏会でエマが放つ台詞です。
美園さくらさんの好演もあって、「エマが主役の物語だなぁ」と思いながら観ていたのですが、後で調べたらオリジナルはやはりエマが主役で、宝塚版化するにあたってジョージ主役に改編されたのだとか。
開幕5分前、緞帳が上がると、あまり似ていない珠城りょうジョージ&美園さくらエマがウインナコーヒーで乾杯しているイラストが現れて、5 minutes to go からカウントダウン。
これ見た途端、「演出、ヨシマサだったんだ!」となりました。
齋藤吉正先生お得意の映像、既視感アリアリです(笑)。
Let the show begin!! となったところでご本人の映像に変わって、オーケストラがオーバチュアを演奏する中、主要人物が映像で紹介されます。
宝塚特有の人海戦術で大量に人々が登場するホテルロビーのオープニングシーンが歌とダンスで彩られて華やか。
その後もいろいろな場面で歌や群舞が挿入されていて明るく華やかで楽しいラブコメディなミュージカルに仕上がっています。
ジョージを「フランツ・ヨーゼフ」、厳しいママのロミーを「ゾフィ」と例えてクスリと笑わせる台詞があったり、「ローマの休日」のような逃避行があったり、ホームレスのシーンでオーストリアの“陰”の部分にも少し触れていたり、ウィーンの街並みを映像で流しながらヘリコプターの大飛行あったりと彩り豊かなシーンが続いて楽しい。
ストーリー自体はたいしたことないので(←言い方)、もう少し整理すれば1本立てにしなくてもイケそうな気もしますが、楽しいから許す。
ホテルに人生賭けてるみたいなロミーと、いい加減な遊び人に見えて妻にも息子にもとても包容力があって温かいパパのヴォルフガング(鳳月杏)とのサイドストーリーも素敵です。
エマのホテルの部屋のセットはいささかショボいですが、従業員はじめ衣装もカワイイ。
そして、観終わった後、ザッハトルテが食べたくなります。
アルゼンチン代表のスターサッカー選手 パブロ・ガルシア(暁千星)の2つのシーンがお気に入り。
♪マッチョマッチョのテーマソングにコール付き、待ちに待ったという感じでバーンと登場するパブロの華やかなこと。
いかにもラテンのスーパーアスリートというビジュアルも超カッコよかったです。
銀橋ソロから舞台に戻って横一列でのダンスであのサッカー選手がよくやる足をツイストする振り(語彙)で、月城さんや風間さんも同じように踊る中、暁千星さんだけ別格の躍動感。あのダンスだけももう1回観たい。
(それにしても数々の名ナンバーある中で一番印象に残っている曲が ♪マッチョマッチョってどーなん?歌詞もアレだし

二幕のフィットネスジムの場面は客席降りになっています。
10/6に観た時は通路側ではなかったのですが、春海ゆうさん、千海華蘭さんを間近で拝見。
11/3は最前列で、お人形さんみたいに可愛い叶羽時ちゃんが目の前に立って笑顔で見つめながら踊ってくれる訳です。もう一緒に踊るしかないよね(←)。そしてセンターのありちゃんを全然観られなかった(←←)
珠城りょうさんのジョージは、育ちがよくて明るくて誠実な好青年で、悩みや葛藤も抱えてはいるものの、のびのび育った優等生。
まんま珠城さんのイメージ通りでさすがにハマっています。
今回の楽曲が珠城さんの音域や声にも合っているのか歌唱も安定していてとても聴きやすかったです。
♪I am from Austria~という響きが今も耳に残ります。
美園さくらさんのエマは美人で華やかで生意気で、いかにも気位が高いハリウッドの売れっ子人気女優という雰囲気がとてもよく出ていてお似合いでした。ブロンドの髪もよく似合って、代表作のひとつになるのではないかしら。
いつもの宝塚の娘役の歌唱とは違って地声を使った楽曲が多い印象でしたが、さすがに聴かせてくれました。
月城かなとさんのリチャード。
いやもう至近距離で観ると「あんな綺麗な人いる?」というイケメンぶり。
こんな綺麗な顔の悪役、悪巧みの顔は迫力あります。ちょっとツメが甘いけど。
フィナーレの群舞は少し手加減?されていたようですが、休演あけを感じさせない活躍でした。
鳳月杏さんのジョージのパパ ヴォルフガング。
もう、大好き

イケオジぶりハンパない。
あのピンストライプのスーツの似合いっぷりとんでもない。
ジョージの意見に理解を示しながらロミーがちょっと言うとすぐ言葉を翻すいい加減さも(笑)。
所作がとてもエレガントで色っぽくて、歌もうまいし男役として完成されている印象。
元々いい加減な遊び人風に見えて実は・・・というオトコが好物ということもあり、鳳月杏さんが演じているからなのかヴォルフガングそのものなのか、とにかくこの物語の登場人物で一番好き(絶賛)。
暁千星さんのパブロ・ガルシア。
本当にアルゼンチン代表の中にいそうなくらい作り込んだビジュアル。
ジャケットを広げて天を仰ぐ姿のキマること甚だしい。
響き渡る太い歌声も印象的で、ありちゃん本当に歌うまくなったよねー。
男臭さムンムンのパブロがゲイという設定も今っぽいです。
風間柚乃さんのフェリックス。
トラブルメーカーだけど気のいい青年。
抜擢が続く風間さんですが、さすがに上手くてちゃんとジョージと同年代の親友に見えます。
歌もうまいし、後はダンスでしょうか。
美人で気が強い女社長がハマっているロミーの海乃美月さん
大活躍のホテルコンシェルジュ エルフィーの光月るうさん
控え目な中に芝居の上手さが光るエマのお母さんヘルタの夏月都さん
色んな声を出せるのね~なミス・ツヴィックルの白雪さち花さん
あたりがその他の主だった役ですが、若手の男役娘役に目立つ役が少ないのが少し残念なところかな。
◆ 以下は印象に残ったシーンの覚書メモ
・ホテルのフロント係が風間柚乃くんはじめ夢奈瑠音くん、蓮つかさくんでイケメン揃い。
特に瑠音くんの端正な佇まいが印象的。
・エマとマネージャーのリチャードの最初の登場シーンが2人とも濃いサングラスかけていかにもハリウッドセレブな雰囲気。
・ジョージがエマへのお詫びに持って行ったザッハトルテが「日本の宝塚ホテル」にもあるらしい。今度食べに行こうっと。
・バーエドラーがいきなりリオのカーニバルみたいになって、最後にはロミーがダルマ姿になって歌い踊るのに仰天。
・ジョージがエマをホテルの製菓部に案内する場面で製菓部に暁千星くんがいると1回目観た後で知って、2回目は集中してありちゃん探して観ていました。眼鏡くんだった。
・ここできよら羽龍さん 一場面もらっていました。やはり期待の娘役ですね。
・ジョージとエマが冷凍室に閉じ込められて、寒がるエマに上着を着せて、自分は白いシャツ1枚になるジョージ。たまきち 男か?男なのか?で、めちゃ頼もしくてイケメン。白シャツ似合う男役No.1であります。
・一幕ラスト エマの捜索隊から隠れるため壁ドンしてエマにキスするジョージ。
たまきち氏、「All for One」の時は上手で壁ドンしていましたが、今回は下手でした。
・ヘリコプター 結構動きが速くてオドロキ。操縦はエマがするのね。
・山小屋からリチャードがエマを連れ戻す場面。
報道陣にもみくちゃにされながらリチャードに連れられて出ていくエマのシーンがスローモーションのコマ送りみたいで印象的。悲しそうなエマの表情も。
・パブロの片言日本語(多分 英語かドイツ語が片言の設定?)がカワイイ。
自分のこと「パブロ」と呼ぶし、ジョージとフェリックスの会話ににこにこつきまとって「ナニヨ、ナニヨ~?」って言ってるの、ほんとカワイイ。
・製菓部の制服着たエマとジョージの銀橋の場面。
真摯なジョージの言葉に自分を取り戻すエマがこぼす綺麗な涙が印象的。さくらちゃん、2回とも泣いてました。
・エマと「難しい関係なの」というお母さんとの葛藤がそんなに言うほど描かれていなかった印象ですが、最後はちゃんと会えて和解(なのか?)できてよかったです。
・ラストの舞踏会は絵に描いたようなハッピーエンド。
エマのピンクのドレス とても綺麗でステキだったけれど、髪はアップとかにしてもう少しデコレートした方がいいんじゃないかなと思いました。せっかくドレスアップしているのに・・・まぁ、演出の指示かとは思いますが。
アルゼンチン国旗色のサッシュをつけたパブロの正装燕尾服、ジョージの黒燕尾、2人とも似合いすぎ。
◆ フィナーレ
・月城かなとさん中心の男役場面
11/3に観た時は目の前の銀橋で男役さんがちょっと遠慮がちに視線くれまして、その初々しさに

・アルゼンチンカラーの衣装のラインダンス
ここでもマッチョマンの暁千星さんがのびやかでキレッキレのダンスを披露。
ラインダンスでくるくるまわっているありちゃんを観ると98期初舞台のラインダンスで一人くるくる回っていたことを思い出します。あれが「暁千星」という男役を認識した最初だったなぁ。
・珠城さんと美園さんのデュエットダンス。相変わらずリフトがとても綺麗で、今のトップコンビで一番のデュエダンだと思います。
パレード
エトワール: 晴音アキ
天紫珠李・風間柚乃・結愛かれん
夢奈瑠音・紫門ゆりや・蓮つかさ
暁千星
海乃美月
鳳月杏
月城かなと
美園さくら
珠城りょう
・シャンシャンがザッハトルテだったー

・月城かなとさん 真っ赤な二番手羽根で登場。正二番手おめでとう!






カウントダウンの映像
開演前と幕間でビミョーにポーズが違っていました(最初とラストが幕間)。
そして Let the show begin!! だけ撮っている時に客電落ちたので画像がクリア。

今回は公演カクテル我慢して公演限定スイーツを購入
HEINDのシシータラー(Sissi Taler)です。
開演前にチェックした時は完売で午後から入荷になっていて、終演後行ってみたら2個入りは姿カタチもなく、6個入りもこれが最後の1箱でした。
アプリコットのフィリングが入ったミルクチョコレート。
フィリング入りのチョコはあまり得意ではないのですが、これはおいしかったです。
良質なミュージカルはやっぱり観ていて楽しい のごくらく度


