
宝塚のオリジナル作品は基本あて書きですが、植田景子先生が最後に明日海さんにあて書きした役は、青い薔薇の精でした。
宝塚歌劇花組公演
三井住友VISAカード シアター
Musical 「A Fairy Tale -青い薔薇の精-」
作・演出: 植田景子
作曲・編曲: 吉田優子 斉藤恒芳 瓜生明希葉
音楽指揮: 西野淳
装置: 松井るみ 衣装: 有村淳
出演: 明日海りお 華優希 柚香光 高翔みず希 瀬戸かずや 水美舞斗
乙羽映見 城妃美伶 綺城ひか理 飛龍つかさ 帆純まひろ 聖乃あすか ほか
2019年9月15日(日) 11:00am 宝塚大劇場 1階5列センター/
9月29日(日) 3:00pm 1階19列センター
(上演時間: 1時間35分)
物語の舞台は19世紀半ばのイギリス。
花が咲かなくなった薔薇園の再生を依頼された植物研究家のハーヴィー(柚香光)は、深い霧の夜、その枯れ果てたウィングフィールドの屋敷の庭で”青い薔薇の精”エリュ(明日海りお)と出会い、薔薇が咲かなくなったのは、かつてこの薔薇園の持ち主の娘 シャーロット(華優希)と恋をして自然界の掟に背いたためだと聞かされます・・・。
女の子が母親におとぎ話を読んでもらっているシーンからスタート。
そこへ
A Fairy Tale
幼い頃 聞いた おとぎ話
A Fairy Tale
心に残る 優しい記憶
~ おとぎ話の 終わりはいつも Happy Ending
と主題歌が重なります。
ま、主人公が妖精さんですからね。
盛大なおとぎ話でした。
明日海さんの青い薔薇の精はミステリアスで超絶美しく、いかにもこの世のものではない感を漂わせていて、こんな役できる人、他にいないだろうなと思わせるハマりっぷりでした。
花が咲き乱れるウィングフィールドの庭は蜷川さんのシェイクスピア劇を思わせるようで、枯れてしまって鬱蒼としてからも雰囲気があったし、ロンドンのヴィッカーズ商会のセットもよかったし、いかにも19世紀の英国といった趣きの衣装も素敵でした。
ただなぁ~
やっぱりおとぎ話ではないリアルな物語が観たかったなぁというのが正直なところ。
架空の話とはいえ、「ポーの一族」とは違うと思うのです。
エリュはじめ精霊たちがシャーロットとハーヴィー以外の人間には見えないというところも物語に入り込めない一因かな。人間たちの様子をだまって少し遠くから見ていたり、回想シーンだったりの登場なので、いささか影が薄い印象も。
・・・と思って観ていたところ、
ラスト。50年の時を経てエリュと再会したシャーロットの台詞。
「大人になると生きるのが大変だから、夢がないと生きていけないの。でも私の心の奥にはいつもあなたがいたからここまで生きてこられた。時が経つほど、あなたがどれほど大切な存在かわかったの。大好きよ、エリュ。私の大切な薔薇の精さん」
これ、まんま明日海さんを見つめ続けていたファンの気持ちだし、逆に明日海さんからファンへのメッセージのようにも聞こえました。
これぞあて書きの真骨頂ですよねー、いやはや植田景子先生 恐れ入りました、という気持ち。
事実、前楽(9/29)に観た時はこの台詞のところで周りの人たちほぼ号泣していました。
ようやく掟通り、シャーロットとハーヴィーに忘却の粉をふりかけるエリュ。
なのに、エリュのことを忘れなかったシャーロット。
「年が経ち過ぎて忘却の粉がきかなくなってしまったのかしら~」と笑う自然界の女神 デーヴァ様の粋なはからいで、
♪ おとぎ話の終わりはきっと Happy End~ な幕切れとなりました。
美しく幻想的でそこに立っているだけで目が惹きつけられるエリュ 明日海りおさん。
妖精だからあまり衣装も変化なかったけれど、白も青もとてもよくお似合い。あの髪型がハマるのもみりおなればこそ。
ラストの歌もたっぷり聴かせてくれました。
これがトップ娘役としてのお披露目となるシャーロット 華優希さん。
幸せに満ち溢れた天真爛漫な少女時代から、母を亡くして孤独な女学生、不幸な結婚生活に苦しみ、やがて自分の道を見つけた老女へと、表情やビジュアルはもちろん、声も話し方も変化して、演じ分けがお見事でした。
少女時代の可愛さは特筆ものですが、憂いを秘めた後年もよかったです。
いろいろ言われていますが、歌もそこまで悪くないし、これからもいろんな役を見せてくれそうで楽しみです。
クラシカルなスーツがとてもよくお似合いのハーヴィ 柚香光さん。
真面目で仕事もできそう。精霊たちにからかわれたり、教えてもたらったりしながら彼自身も成長していく姿が微笑ましい。
ハーヴィの叔父で、シャーロットの家の庭師だったニックの水美舞斗さんもよかったです。
控えめで誠実なニック。きっとフローレンス(シャーロットの母)のことが好きだったのね。
そのフローレンスはこれが退団公演となる城妃美伶さん。
華やかで美しく、シャーロットにはとてもやさしいお母さん。ステキでした。
Mysterious Ladyこと自然界の女神 デーヴァ 乙羽映見さん。
実質的にこの物語を操っている人物でした(人じゃないけど)。
冒頭から美声を響かせていて、華やかな美しさとともに印象的でした。
彼女もこの公演で退団。花娘、いろいろと大変だな。
言ってることは金・カネ・カネだけどエネルギッシュでダンディで無駄にカッコいいヴィッカーズ社長の瀬戸かずやさん(ほめてます)。
「花より男子」の花沢類役で俄然注目の聖乃あすかさんが若いころの白いエリュで、台詞はひと言もありませんが、その美しさは際立っていました。
植物の声が聞けないハーヴィに「やぶだな」と言ったり、また後で「やっぱりやぶだなと繰り返す口の悪い精霊が印象的だったのですが、飛龍つかささんかな?
花組若手男役、まだまだ勉強が足りませんワ。
→ ショー編へつづく