
そういえば、山路和弘さん、小林勝也さん、中嶋朋子さんと、今回のメンバーたくさん出ていましたね。
あの時も「斬新な演出だなぁ」と思ったのですが、シェイクスピアのこの戯曲も、演出はかなり独創的でした。
「お気に召すまま」
作: ウィリアム・シェイクスピア
翻訳: 早船歌江子
演出: 熊林弘高
ドラマターグ: 田丸一宏
出演: 満島ひかり 坂口健太郎 満島真之介 温水洋一 Yuqi(UQiYO)
広岡由里子 久保酎吉 山路和弘 小林勝也 中村蒼 中嶋朋子 ほか
2019年9月5日(木) 12:00pm 兵庫県立芸術文化センター
阪急中ホール 1階K列センター
(上演時間: 2時間40分/休憩 20分)
物語:オーランドー(坂口健太郎)は追放された前侯爵の娘・ロザリンド(満島ひかり)と恋に落ちますが、父の遺産を継いだ実の兄オリヴァ―(満島真之介)に命を狙われていると知り、アーデンの森に逃げます。同じころ、伯父である新公爵(山路和弘)に追放されたロザリンドは、彼の娘で従妹のシーリア(中嶋朋子)、道化のタッチストーン(温水洋一)とともに森に向かいます。ロザリンドは女道中は危険と男装してギャニミードと名乗り、そのままオーランドーの前に現れて恋の手ほどきをします・・・。
プロセニアム・アーチで囲まれた舞台。
アーデンの森では、さらにその中に二重にプロセニアムが設けられ、森の木々はカラフルな衣類。
この物語がすべて「額縁」の中で繰り広げられる紙芝居のようなお話だと強調するかのよう。
開演前、2列目が全部空席になっていて、「?」と思っていたのですが、始まるとすぐその理由がわかりました。
そこを役者さんたちが通路のように使って行き来したり、座席の上に立ちあがったり寝そべったり。
休憩中に見に行ったら、真ん中の数席には横板が渡してありました。この2列目と最前列A列17番は最初から演出のための席だったようです。
客席通路を頻繁に行き来する演出で、そればかりか客席に話しかけたりいじったり、かなりオープンな雰囲気でした。
そもそもシェイクスピアの時代は野外劇場(オープン・エア・シアター)が主で客席も多用したことを考えると、最初に「独創的」と書きましたが、がちゃがちゃと猥雑な部分も含めて、むしろシェイクスピアのオリジナルに近づけようとした演出なのかなとも思います。
それをふまえてのプロセニアムだったのでしょうか。
翻訳が早船歌江子さん(「OTHER DESERT CITIES」の台本書いた方)で意外な気がしました。
翻訳とドラマターグと演出家がどこまで台本の主導権を握っているのかよくわからないのですが、今回の翻訳と台本、それに伴う演出は個人的にはいささか不本意な印象も。
特に、蜷川幸雄さん演出、小栗旬くん主演のオールメール版(2007年)を観て以来、この戯曲で一番お気に入りの場面ともいえる、
「恋とはため息と涙でできてるもんだ。恋とは忠実な心と献身でできてるもんだ。恋とは気まぐれな空想でできてるもんだ・・・・・今のおいらがそうだ、フィービーが恋しくて」「僕はロザリンドが恋しくて」
というシルヴィアス、フィービー、オーランドー、ロザリンドの4人がそれぞれ恋心を独白するシーンをあんなドタバタやられたのでは、「台なしじゃん」と思ってしまいました。
この戯曲に限らず、これまでシェイクスピアの作品といえば蜷川幸雄さん演出の舞台を一番多く観てきましたので、多分私は、台詞を変えないオーソドックスな戯曲が好きなんだなと改めて実感しました。
衣装の露出度が高くて(ギャニミード何で足丸見えのシャツ1枚?とか)、ボディタッチも多く、男性同士も含めていわゆる性描写がかなり直接的でなまめかしいのも印象的でした。下ネタ(と言っていいのか?)も多かったし。
ジェンダーレスもこの戯曲の主題のひとつかなと思いますが、ラストでめでたく4組が結婚した後、ギャニミード=ロザリンドを思い切れないフィービーがロザリンドにキスしてましたが、あの演出は初めて観た気がします。性的に曖昧な感じでおもしろかったな。
ロザリンドの満島ひかりさんは瑞々しくのびやか、キュートでコケティッシュ。
凛とした中性的な雰囲気も持った女優さんなので男装も違和感なく、その中でチラリと見せる“女の子”の部分がかわいい・・・というか、あんなにかわいかったらわかるでしょ、オーランドーってば、と思いました。
それほど声を張っている訳でもないけれど台詞も明瞭で、以前、舞台(「鎌塚氏、すくい上げる」だったかな?)で声をからしていた頃からは隔世の感があります。
「かもめ」の頃に比べてずい分たくましくなった印象のオーランドー 坂口健太郎くん
相変わらず透明感変わらないしーリアの中嶋朋子さん
さすがに上手くて、出番が少ないのもったいないようなオリヴァーの満島真之介くん
旧公爵と新公爵の2役をくっきり演じ分けた山路和弘さん
アーデンの森の場面になった時、「さっきと違う役やってるの、わかるかな?」とおっしゃっていましたが、わかるってば(笑)。
え?この役?な小林勝也さんに温水洋一さんに中村蒼くんに・・・って、本当に豪華キャストでした。
フランソワーズ・アルディの「さよならを教えて」が流れるエンディング。
どうしてこの曲?と思いましたが、大好きな曲なので、ま、いっか(笑)。
蜷川さんが演出するシェイクスピアがまた観たいよ の地獄度


