
尾上右近くんの自主公演「研の會」。
毎年楽しみに拝見していますが、2015年に始まって第五回となる今回、初めて京都でも開催されました。
尾上右近自主公演 「第五回 研の會」
2019年8月29日(木) 12:00pm 春秋座 12列下手
一、 弁天娘女男白浪
浜松屋見世先より稲瀬川勢揃いまで
作: 河竹黙阿弥
監修: 尾上菊五郎
出演: 尾上右近 坂東彦三郎 市川九團次 中村梅丸 市川福太郎
市川新十郎 坂東亀三郎 市村橘太郎 片岡市蔵 市川團蔵
(上演時間: 1時間10分)
音羽屋さんのお家芸「弁天娘女男白波」。
4、5歳の頃に、ツラネのせりふをまるまる暗記していたという右近くんにとっても思い入れの深い演目なのだとか。
女形はもちろん立役も演じることの多い右近くんに弁天小僧はぴったりと思っていました。
最初に右近くんの声であらすじのナレーションが入ります。
歌舞伎ファンなら知っている内容ですが、もちろん初めての人もいる訳で、より舞台を楽しんでもらおうという心遣い。
憧れのお役をやれる喜びに満ちあふれているような弁天。
若くてとんがっていて、イキイキとして。
花道に現れる武家娘の美しさは申し分なく、見顕しからは口跡よい台詞が響き渡っていて、そのあたりはもう少し緩急がほしいとか、色気も・・と思わないではありませんが、
少年が大人になる道のりで見せる危うさ、そしてその一瞬の輝きを感じさせる弁天でした。
南郷力丸の坂東彦三郎さんも今回が初役ということですが、相変わらずいい声爆弾炸裂。
表情豊かで、時折弁天が可愛くてたまらねぇという風情で、そんなコンビ感がそのまま右近くんと彦三郎さんに重なるような気がしました。
そして、倅マンこと亀三郎くんの丁稚長松がかわいくてしっかり芝居すること。
團蔵さんの日本駄右衛門の重厚感。
梅丸くんの赤星が思わぬご馳走だったり。
市蔵さん、福太郎さんの浜松屋親子、新十郎さんの鳶頭、橘太郎さんの番頭と、普段関西ではお目にかかる機会の少ない音羽屋、成田屋の役者さんたちが活躍されている舞台が楽しかったです。
二、 猿翁十種の内 酔奴 (よいやっこ)
作: 木村富子
作曲: 初代鶴澤道八
振付: 藤間勘十郎
出演: 尾上右近
文楽座特別出演: 豊竹呂勢太夫 鶴澤藤蔵 鶴澤清志郎
(上演時間: 30分)
猿翁さん以外の役者さんが勤めるのは初めてとなる演目。当代猿之助さんもまだ。
京都の公演が終わった後、
「猿之助のお兄さんの『やっていいよ』 藤蔵先生の『出ますよ』 そのお二言が無かったら上演不可能だった『酔奴』。 ご縁の大切さをひしひしと感じました。 宝物がどんどん増える 研の會。」 という右近くんのツイートが印象的でした。
雪の降る夜、酔いのまわった千鳥足の奴 可内(べくない)が、機嫌よくお国自慢を始めたて踊り始め、、しまいには三味線に合わせて竹馬を披露。後半は、怒り上戸、笑い上戸、泣き上戸の三人上戸を演じ分け踊り分けます。
竹馬あり、小道具も扱いながらのテンポ良い踊りは、踊りの技術は元より、身体能力も体力も要求されそう。
もちろん踊り巧者ですから、大きな動きから細部の表情までイキイキ丁寧に踊り、「踊り切ってやる」という意気込みが指先にまで満ち充ちているようでした。
そして、文楽座からご出演の呂勢太夫さん、藤蔵さん、清志郎さんがまたすばらしい。
呂勢さんの声、藤蔵さん、清志郎さんの演奏と右近さんがバチバチ火花を散らしているよう。
こういう共演を観る機会はそんなに多くありませんので、いやぁ、よいものを見せていただきました。
自主公演とはいえ質量ともに充実で、チケット即完するのも納得(今回京都は少し苦戦してようですが)。
公演を主催するのは、出演する演目だけでなく、とてつもない労力と時間とエネルギーが必要なはず。ポスターやプログラムも毎年こだわり抜いて製作しているしていることが感じられます。
若くて才気にあふれ、パワーがあって容姿にも恵まれ、芝居も踊りも上手くて、向上心も野心もあって人からも可愛がられる右近くん。
この先どうなっていくのか末怖ろしい(ほめています)。

終演後の抽選会でなーんと、サイン入りナマ写真が当たりました。
右近くん自ら手渡し&握手&ちょっとだけおしゃべりも。
いただいた写真はSNSにアップOKとスタッフの方に確認いただいたのですが、やはり非売品の写真でもあり憚られるのでサインの部分だけ。


ちなみに抽選券も凝っていて可愛かったのですが、どうせ当たらないから手元に残るだろうと思っていたら当たって渡してしまったので、他の方の画像を拝借。
ケン×ケンカレーももちろん買いました。
去年のと並べてみました。

こちらは展示されていた右近くん直筆のパッケージの原画。
来年はお休み。「再来年必ず開催します」とのこと。また京都でもやってくれますように のごくらく地獄度



