
ぴかぴかのエリート 瑠風 輝さん。
満を持してのバウホール初主演です。
宝塚歌劇宙組公演 バウ・ロマンス
「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」
原作: F・スコット・フィッツジェラルド
「The Diamond as Big as the Ritz」
脚本・演出: 木村信司
出演:瑠風輝 夢白あや 悠真倫 美風舞良
松風輝 実羚淳 瀬戸花まり 水香依千
若翔りつ 鷹翔千空 亜音有星 ほか
2019年9月12日(木) 2:30pm 宝塚バウホール 5列センター
(上演時間: 2時間10分/休憩 25分)
アメリカの大学生 ジョン・T・アンガー(瑠風輝)は成績優秀、スポーツ万能で学校中の人気者。友人のパーシー・グレイブス(鷹翔千空)はそんなジョンを羨ましさと憧れを持つ複雑な表情で見つめていました。
ある日、ジョンはパーシーに誘われ、夏休みをパーシーの実家で過ごすことにします。「僕の家は世界一の金持ちなんだ」というその家は、巨大なダイヤモンドの原石の中に建てられた、贅を尽くした黄金の楽園のような場所でした。その館でジョンはパーシーの妹キスミン(夢白あや)と出会い、恋に落ちます。やがて次第に楽園の秘密が明らかとなって ・・・。
「富がもたらす熱狂、狂乱を主題とした壮大な夢物語」というフィッツジェラルドの原作は未読。
時代設定は明確にされていませんが、アメリカの「狂騒の20年代」と思われ、「アメリカ as No.1」「アメリカ万歳!」といったアメリカ賛美の華やかで力強いダンスシーンから始まります。
歌、ダンス、お芝居がバランスよく構成された舞台で、パーシーの両親が召使いたちと歌い踊るシーンや牢獄に閉じ込められた飛行士たちの群舞など華やかな見どころもたくさん。
楽曲もよくて、メイン3人(瑠風・夢白・鷹翔)がともに歌える人たちなのでストレスフリー。
要所要所で聴かせる「宙組の重層的なコーラス」も健在でした。
世間から閉ざされたパーシーの館が、ファンタジー感ありながら、フィッツジェラルドらしい文明批判や“富”至上主義へのシニカルな視線も。
ジョンは経済学部の学生で、経済にも感心があり一般的な常識も備えた健全な精神の持ち主。
そのジョンをして、パーシー家の黒人の召使いたちに「奴隷制度が廃止になったの知ってますか?」と言わせるあたりにも、時代背景や作者の意図を感じます。
原作を読んでいませんので、どこまで脚色されているのかわかりませんが、燃え盛り崩れ落ちる楽園を抜け出したジョンがキスミンに、「これからは、働いてお金を稼ぐんだ」と言って、2人で現実の世界を生きて、2人にとっての”楽園”を築いていこうとする希望を感じるラストもよかったです。
ジョンの瑠風輝さん。
汗を押さえる暇がないくらいほぼ出ずっぱり。
自由でのびやかな感性を持ったジョンが瑠風さんのおおらかな個性によくハマっていました。
真中に立つ華やかさがあって、長身で手足が長く、タキシードの似合いっぷりハンパない。
お得意の歌はもちろん、長身を活かしたダンスも、いろんな表情を丁寧に演じたお芝居も大健闘。
私が観た日はすぐ後ろの席に澄輝さやとさん、蒼羽りくさんといった前公演で退団したばかりの宙組の先輩たちが観にいらしていたのですが、瑠風さんが2幕の客席降りで歌いながら蒼羽さんの顔を見て、本当にうれしそうにニコッと笑ったのが印象的でした。
キスミンは夢白あやさん。
103期ですが早くから何かと話題の娘役さんなので、「え?初主演なの?」という感じです。
お嬢様で物おじしない少しタカビ~な雰囲気と、世間を全く知らない純粋な透明感がうまくミックス。
ビジュアルも歌もお芝居も穴がなくて、この年代の娘役としてほぼ完成されている印象でした。
パーシーの鷹翔千空さん。
ある意味、ジョンより印象に残る役かもしれません。
楽園を受け継ぎ、その秘密とともに守り抜く責任を負ったパーシーの、自分の運命を受け容れた諦念と、ジョンに対する憧れや妬みといった陰陽混ざり合った感情が、その翳りある表情によく表れていました。
ジョンを遠くからじっと見つめる表情に潜む狂気。
「君は僕の憧れだったんだ。この夏だけでも君を独り占めにしたかったんだ!」とジョンの脚にしがみついて涙ながらに訴える切なさ。
歌もうまい鷹翔さん、龍真咲さんに面差しが似てるなぁと感じました。
まるでルイ16世とマリー・アントワネットのようなコスチュームのパーシーの父アレキサンドル(悠真倫)と母クレメンタイン(美風舞良)の芸達者ぶり、そして歌のうまさ。
ただ忠実な召使いではなく、ちょっとブラック味もある常に3人で行動するトム(松風輝)・ジム(実羚淳)・サム(水香依千)。
幽閉された飛行士の中に美形がいる!と目が吸い寄せられていたら、代表して脱出する役に指名されたユージン 亜音有星さんでした。
おー、「オーシャンズ11」の新人公演でベネディクトに抜擢された子か、さすがに華あるなと後で知りました。宙組で見るの楽しみな若手がまた一人増えたワ。
フィナーレ。
照明が暗い中、背中からスポットライト浴びて立つ黒燕尾のシルエット=瑠風さんの超絶カッコよさ。
男役の黒燕尾群舞もピシリと決まり、夢白さんとのデュエットダンスもとても綺麗でした。
宙組若手 これからも楽しみ のごくらく度


