
兵芸での公演は2012年から。
ほぼ毎年楽しみに拝見していますが、今年が LAST HANAGATA。
2016年に正邦さんが千五郎を、昨年は童司さん千之丞を襲名したこともあって、若手という意味合いも含む「花形」という名前での活動は一旦終了、ということのようです。
でも、この日に新しいユニット名発表だったの~。
花形狂言2019 THE LAST HANAGATA
出演: 茂山千五郎 茂山宗彦 茂山茂 茂山逸平 茂山千之丞/
島田洋海 中村壱太郎 (友情出演)
2019年8月24日(土) 5:00pm 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
1階E列センター (上演時間: 2時間/休憩 15分)
「BLACK & WHITE」 ~歌舞伎十八番 「鳴神」より~
歌舞伎でおなじみ 「鳴神」の後日談。
白雲坊(千之丞)と黒雲坊(逸平)が空を見上げては「やまぬな~」と話しています。
雲の絶間姫が結界のしめ縄を切って竜神を解き放ち、やっと雨が降り始めたのはよかったものの、それから3ヵ月間ずっと雨続き。上人は引きこもりになり、下界への道は雨のため閉ざされ、備蓄の食糧も底をついて明日の食べ物にも事欠くほどになっているのでした。そこへ、しめ縄を結びなおしに雲の絶間姫がやってきて・・・。
この演目は2013年にも観ていて、その時、雲の絶間姫を演じたわかぎゑふさんがかなり強烈なインパクトだったのですが、今回の絶間姫はなーんと中村壱太郎くん!壱太郎くんのご出演は事前に知りませんでしたので、とてもびっくり&喜

狂言の拵えでお化粧はナシだったのですが、台詞は女形の声で所作も何とも色っぽい。
苦心して岩場を上っては何度もしめ縄を結ぼうと奮闘する→やっと結べてドヤ顔→でもやっぱりまた雨が降ってきて、「なぜじゃ なぜしゃ~」と泣きながら退散する・・・というところまでを、芝居心たっぷりに色濃く見せてくれました。
カーテンコールのご挨拶でも、「童司さん(千之丞さん)とはこれまでにも何度か共演したことがありますが、今回はまるで一人芝居のようでした。私の一人芝居にお付き合いいただいて、ありがとうございます」とおっしゃっていました。
途中、花形狂言といえばお約束の千五郎さんトトロ(山の神)がパチンコ帰りに景品の紙袋抱えて登場するのも前回通り。
何も解決することなく、白雲坊、黒雲坊の二人はさほど切迫した様子もなく、「やまぬな~」とため息をついて幕。
「寄せ笑い」 スペシャル Ver..
これは2015年に観た演目。
狂言の伝統的手法「寄せ笑い」を現代風にアレンジしたもので、真っ黒の舞台に顔ハメパネルのような穴からのぞく顔・・・。
前回は二人だったのですが、今回はスペシャル Ver. ということで五人全員。
顔だけしか見えていなくて、「あ~い~う~え~お~」とか、特に意味のない会話が続くのですが、なぜかおかしい。
ラストは全員で、♪あ・の・こ・ろ・は~ ハーッ!と和田アキ子さんの「古い日記」になって爆笑。
「狸山伏」
強力を連れた法印が森にさしかかると、行く手になにやら怪しげなものがやってきて・・・という狂言の「蟹山伏」のパロディ。
そのあやしげな狸のようなものはトトロ(千五郎)でフキの葉を傘がわりに持っています。
千五郎さんトトロのキャラクター炸裂。ボックスステップ踏むトトロって・・・(笑)。
休憩をはさんで後半は新作2作。
「ふじのくに」
「ふじ」は「富士山」ではなく、「藤」。
名前に「藤」がつく人が中心になって「日本を変えよう!」と主張する三人(千五郎・宗彦・千之丞)の熱さと、その中心に祀り上げられ、高い位置で何ともやる気のない藤原家の末裔(逸平)の対比が何ともおかしい。
今の社会状況を憂え、クイーンの “We will Rock You” に乗せて意気軒高な三人と、ひたすらゆったり鷹揚にお餅を食べ続ける藤原家末裔。
社会風刺も効いた作品でしたが、ラストにみんなが去ってしまった後、一人残されて、「はよ おろして」という藤原某の言葉がユーモラスでかわいくて、ちょっぴりシニカル。
「踊りのおしょさん」 ~ウジェーヌ・イヨネスコ「授業」より~
ある男が異国の先生の舞踊教室で踊りを習うお話。
言葉も怪しい先生が宗彦さん、習う方が茂さんで、繰り返される踊りの振りが本当にすごくて、狂言師さんたちの身体能力の高さを実感しました。
それと、舞踊教室の管理者役の島田洋海さんが岡山弁丸出しでいい味出していらっしゃいました。
(岡山観光大使目指しているんですって(^^ゞ)
結末はなかなかブラックで、コワくて不条理劇な雰囲気。
後で調べたところ、原案の「授業」の作者 ウジェーヌ・イヨネスコさんは「不条理演劇」の代表として知られている方なのだそうです。
ラストは全員でまた♪あの頃は〜と「古い日記」の曲に合わせて総踊り。
途中から出てきた壱太郎くん@雲の絶間姫のキレッキレの踊りに目が釘付けでした。
「GOEMON」の出雲の阿国や、古くは「大當り伏見の富くじ」で米吉くんと花道で踊った♪ぽいぽいぽいぽぽい 思い出しました。
そして最後に 新しいユニット名発表!
決まるまでの過程(五人でうだうだ話し合っている様子)を寸劇風に舞台上で再現して、何度話し合っても全然決まらないからくじ引きにしよう!と、ここからは映像。
それぞれの案を1つずつ箱に入れて、1枚だけ引いてそれに決めるというものです。
決まったもの以外の4枚は後で遺恨を遺さないためにその場でシュレッダーするという徹底ぶり。
こちら ↓ でその映像が見られます。
新ユニット名は

命名は茂さん。
曰く「最先端」という意味だそうです。
来年からも最先端をいく尖った狂言、楽しみにしています。
終演後は恒例のお見送り。
カレンダー発売ということで、買った方は皆さん並んでサインしていただいていました。

カレンダー販促するご陽気なお二人(宗彦さん・茂さん)
の横でひたすらサインする千之丞さん。


千五郎さんトトロと、逸平くんは藤原の拵えかな。
花形観てると伝統的な狂言がまた観たくなります のごくらく地獄度



