2019年09月06日

これが本当に最後!? 八月納涼歌舞伎 「東海道中膝栗毛」


2019noryo yajikita.jpg「またお会いする日まで」と終わった昨年で大団円だったはずの「弥次喜多」がまさかの4回目の登場。
今度こそ本当に(笑)最後ということで、第二部全部つかって初めての一本立て上演です。


八月納涼歌舞伎 第二部
「東海道中膝栗毛」
松本幸四郎 市川猿之助 宙乗り相勤め申し候
原作: 十返舎一九
構成: 杉原邦生
脚本: 戸部和久
脚本・演出: 石川耕士/市川猿之助
出演: 市川猿之助  中村七之助  市川中車  
坂東巳之助  坂東新悟  中村隼人  中村児太郎  
中村虎之介  中村鷹之資  片岡千之助  市川染五郎  市川團子  中村鶴松  
市川寿猿  市川笑三郎  市川笑也  市川猿弥  市川門之助  松本幸四郎 ほか

2019年8月18日(日) 3:00pm 歌舞伎座 1階4列センター
(上演時間: 2時間40分/幕間 20分)



東海道中膝栗毛 アーカイブス
2016年2017年2018年


楽しかった!
こう言っては失礼ながら、すごく「ちゃんとした」つくりになっていました。
ラスベガスに行ったりしないし、歌舞伎座で探偵まがいに犯人探ししたりもしない。
原点回帰とでも言いますか、「弥次さん喜多さんがお伊勢参りの旅をする」がベースにあって、その上でこれでもか、とたくさんのお遊びを盛り込む趣向。

弥次さん喜多さんとそっくりの大盗賊の獅子戸乱武(トランプ)と黒船風珍(プーチン)を登場させて二人の早替りを見せるのをはじめ、いつもながらベテランから若手までたくさんの役者さんに場を与え、名作歌舞伎の演目を随所に盛り込み、楽屋落ちネタありドリフみ満載のお笑いあり、本水の立ち廻りあり宙乗りありと、本当に盛りだくさんで楽しい演目に仕上がっていました。

歌舞伎演目のパロディは私が気づいただけでも、「鈴ヶ森」「切られ与三」「女殺油地獄」「一本刀土俵入」「瞼の母」「滝の白糸」「一谷嫩軍記」・・・とありましたが、台詞だけならもっとかも?
そうそう、喜多さんがキスしようとした弥次さんに「ロシア式の挨拶はやめてくれよ」と三谷かぶき「月光露針路日本」の台詞を言っていました。
「女殺油地獄」の場面なんて、舞台装置出てきた時からそれとわかるもんね(中身は油じゃなくてとろろだけど)。
隼人くん与三郎と新悟くんお富の二人同時の転び方がまんま幸四郎さんと猿之助さんの「女殺油地獄」で、習ったんだなぁと思ったり。
それにあのすべり台・・・あれ絶対幸四郎さんがやりかったヤツ(笑)。


冒頭、でこれまで3年分のダイジェスト映像が流れると懐かしさに泣きそうになりました。
そこから、これまでの3回分は全部夢だったと、夢オチで始まります。
(1回目のラスベガスの時もおぼれているところを助けられた後、「夢だった」設定だったよねー。)
二人が寝ていたのはひまわり畑の中にある家の屋根の上。
一面のひまわり畑とそれに重なる哀愁を帯びたメロディがね~・・・映画「ひまわり」のテーマではなくなぜか「太陽がい
っぱい」だったけど。


この4年間を観ていると、とりわけ染五郎くん、團子くんの成長に感嘆。
10代前半って男の子が格段に成長する時期だと思いますが、二人とも背がスラリと伸びて顔つきが子どもから少年、若者へと変貌したのはもちろん、最初のころたどたどしかった所作もすっかり落ち着き、発声も台詞の口跡もとてもよくなっているのがありありと感じられます。
それに伴って物語の中での存在感も増し、この物語をまわす影の主役と言ってもいいくらい。
いやはや、若武者の成長とどまるところを知らずという感じです。

毎年場を与えられている若手の皆さんの活躍も言わずもがな。
隼人くんの美しさと一瞬見せる色気、そしてお笑いもこなせる胆力
新悟くんのお芝居の柔軟性と可愛らしさ色っぽさ
巳之助くん、児太郎くんの達者ぶり
巳之助くんのあの「ヅラが取れる」事案は、「毎回やってる仕込みかな?」と一瞬頭をかすめたのですが、その場にいた他の5人(幸四郎さん、猿之助さん、児太郎くん、染五郎くん、團子くん)全員下向いて肩ふるわせているのにすっかりダマされてアクシデントだと信じてしまいました。
かなり本気で笑ってもいたようですが、客席も爆笑の中、しっかり台詞言う児太郎くんお千代ちゃんエライッ!
このあたりの人たちはここではもうレギュラーの風格です。

相変わらずどこにいても目を引く森の石松 鷹之資くん
お蔦という大役をオチも含めて立派にこなした鶴松くん
そして、虎之介くん、千之助くんも目立つ役を振られて、期待に応える活躍ぶりでした。

中車さんをはじめ、猿弥さん、笑三郎さん、笑也さん、門之助さん、弘太郎さんとそれぞれ個性輝く澤瀉屋一門。

七之助さんは「七化けお七」で、ある時は女スリ、またある時は・・・とちょこちょこ出てきますが、やはりこの若い座組の中では際立った役者ぶり。どの役も短い出ながらくっきりと爪痕を遺していました。
「七化けって六つしかやってねぇじゃねぇかよ」とツッコまれて、「この後第三部にも出ますので七役」とシレっと言ってのけ、「兄はいだてん出演中~!」とテーマ曲に合わせて花道全力疾走して客席からやんやの大喝采浴びていました。


そして、幸四郎さんと猿之助さん。
華も実もある二人が惜しみなく体を使い、常に全力で芝居を引っ張る姿に胸熱です。
脚本・演出を兼ねる猿之助さんが話を回す立場なのはもちろん、これ幸四郎さんのアイデアだよね、と思う場面も随所に見られ、二人が存分に話し合ってつくり上げたと感じられる舞台。
本水の場面で自ら水に突っ込んでいく幸四郎さんを観ていて「役者バカ」という言葉が改めて心に浮かびました。

そして何より、楽しそう。
だから観ている私たちまで幸せな気分になります。

ラスト宙乗り。
クールで冷静な表情の猿之助さんの横でぐるんぐるんと回転する幸四郎さん。
ずっと「二人でやりたいね」と話していて、それが実現して、4年も続いた「弥次喜多」。
二人でやるこんな盛大なおふざけ(褒めています)はもう二度とみられない、ああ、こうして二人一緒の宙乗りを観るのもこれが本当に最後かもしれない、とまたまた胸がいっぱいになりました。



とはいえ、二人の共演はこれからもずっと続くはず。
その日を楽しみに、「またお会いする日まで」 のごくらく度 (total 2099 vs 2100 )


posted by スキップ at 22:48| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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