2019年09月04日

八月納涼歌舞伎 第一部


2019noryo.jpg「納涼歌舞伎の意義とは・・・」なんてことも取り沙汰された今年の八月納涼歌舞伎。
古典あり新作あり、若手花形が大役に挑む義太夫狂言や夏らしく肩のこらない演目、そして気鋭の新演出まで、バラエティに富んだ内容で三部までたっぷり楽しみました。


八月納涼歌舞伎 第一部
2019年8月18日(日) 11:00am 歌舞伎座 1階5列下手


一、 伽羅先代萩
   御殿/床下
監修: 坂東玉三郎
出演: 中村七之助  松本幸四郎  中村児太郎  中村勘太郎  中村長三郎  
中村歌女之丞  坂東巳之助  中村扇雀 ほか
(上演時間 1時間40分)



七之助さんが初役で女形の大役 政岡に挑む「先代萩」。
ご自身は元より、勘太郎くん、長三郎くんまで玉三郎さんに教えていただいたのだとか。
「竹の間」はなくて、「飯炊き」がついた「御殿」と「床下」での上演です。

「政岡ってやっぱり難しい役だなぁ」というのが最初の印象。
七之助さんは初役とは思えないほどよく演じていらして、強い忠義心を持ち、わが子が殺されても表情一つ変えない凛とした「乳人」と、一人になって否応なく情が全身から漏れ出る愛情深い「母」との対比も鮮やか。

茶道のお点前に則ってご飯を炊く「飯炊き」はいささか手順に追われている感がありましたが、茶道具に向かいながらも、常に背中に二人のことを気遣っているように感じられるなど、台詞もほとんどない場面であれだけ場を持たせ、引きつけられるのはすごい。
八汐に眼の前でわが子 千松を殺されながら、鶴千代君を護って顔色ひとつ変えず身じろぎもしないで凛と立つ姿もよかったですが、花道で栄御前を見送って、死んだわが子と二人きりになった時の慟哭、クドキが「もっとー」と思ってしまいました。


ここはねー。
関西の歌舞伎ファンなら多分誰もが藤十郎さんの政岡を思い起こすと思います。
千松をかき抱いての愁嘆場、藤十郎さんは涙をぼたぼたこぼしながら「でかしゃった、でかしゃった」と情愛を爆発させているように観ていたのですが、実はきちんと型をふまえ、義太夫に乗せていたんだなと改めて思いました。その上で迸る感情。だからこそ届く悲しみ。あの政岡がもう一度観たくなったよ。

千松の勘太郎くん、鶴千代の長三郎くんは声がよく通り、台詞もお行儀もしっかり
若君様然とした長三郎くんも立派でしたが、勘太郎くんの千松が、実生活ではお兄ちゃんなのにちゃんと鶴千代君を立てて、あくまでも鶴千代君に仕える立場だということをきちんとしたお辞儀など一つひとつの所作で見せていて感心。

幸四郎さんも八汐は初役です。
憎々しさと大きさがあって、悪の効いた八汐、とてもよかったです。
いやもう、あの表情ね。あんなに口まげて悪役顔してたら絶対こいつが悪者ってわかりますよね(誉めています)。
子どもに対するとは思えぬ血も涙もない仕打ち、怖ろしさ、底意地の悪さ。
これまで私が観た中では仁左衛門さんと双璧となる八汐でした。

仁木弾正はもう、これが観たくて一等席取ったようなものですから、花横のチケットが届いた時には狂喜乱舞したよね。
スッポンから煙とともに仁木弾正が現れてから、面明かりに照らされながらゆらりゆらりと空中浮遊するように揚幕に消えていくまで、客席もその妖術に呑み込まれたように静まり返っていましたが、多分ワタシ、一瞬たりとも見逃すまじきとまばたきひとつせずに凝視していたと思います。
凄味があって妖しげで色気滲み出る仁木弾正、最高でした。

口跡よく声も良く通り、勢いも力感もある男之助 巳之助くん。
政岡より位が上の品格がきちんと出て聡明な印象の沖の井 児太郎くん。
憎らしさの中に品位の高さを感じさせる栄御前 扇雀さん。
脇も揃って、見応えのある一幕となりました。


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二、 闇梅百物語 (やみのうめひゃくものがたり)
作: 三世河竹新七
振付: 藤間勘祖
補綴: 松岡亮
出演: 松本幸四郎  中村歌昇  坂東新悟  中村種之助  
中村虎之介  中村鶴松  坂東彌十郎  中村扇雀 ほか
(上演時間: 1時間)



2015年 南座の「三月花形歌舞伎」で観た演目です(感想はこちら)。

あの時、すごく楽しかった記憶があるのですが、今回はそれほどでもなかった(^^ゞ
まぁ、あの時は若手花形が河童とか傘一本足とか凝りに凝った拵えで、それ観ているだけでも楽しかったからなぁ。

配役をちゃんと把握していなかったのですが、「何あの傘一本足、前髪ぱっつんカワイイ」とよく観たら歌昇くんだったり、「お、種之助くん、前は白狐だったけど今回は河童かぁ」とヘラヘラ観ていたら、やがて出てきた骸骨(全く顔がわからない拵え)がやたら踊りが上手くて惹きつけられる・・・「え?この骸骨ってもしかして、幸四郎さん?!」と踊りだけでわかった自分を褒めたい(←)。

その後の読売→白狐でやっとご本人とわかった訳ですが、美しいお顔とキレのある踊りを堪能。
白狐と花四天の立ち廻り観ていたら、幸四郎さんで「四の切」も観てみたいと思いましたが、幸四郎さんは以前に「狐(忠信)はやりません」とキッパリおっしゃっていたしなぁ・・・。



何なら「竹の間」もつけて第一部一本ものでもよろしくてよ のごくらく地獄度 (total 2098 vs 2100 )


posted by スキップ at 23:07| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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