2019年08月27日

タカラヅカはいつも私に刺激を与えてくれる 月組 「チェ・ゲバラ」


cheguevara.jpg原田諒先生 x 轟悠さんといえば昨年「ドクトル・ジバゴ」がありましたが、何と言っても印象に残っているのは、「For the people —リンカーン 自由を求めた男—」(2016)。
あの時、ポスター画像見て、「リンカーンやん!」と思いましたが(感想にもそう書いている)、今回もこれ見て思ったよねー。
「ゲバラやん!」


宝塚歌劇 月組公演
ミュージカル 「チェ・ゲバラ」
作・演出: 原田諒
作曲・編曲: 玉麻尚一
装置: 松井るみ
衣装: 有村淳
出演: 轟悠  光月るう  千海華蘭  輝月ゆうま  晴音アキ  
蓮つかさ  佳城葵  風間柚乃  天紫珠李  礼華はる  きよら羽龍 ほか

2019年8月12日(月) 12:00pm シアター・ドラマシティ 2列センター
(上演時間: 2時間30分/休憩 25分)



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キューバの地図が一面に広がった舞台。
開演前からラテンのパーカッションがリズムを刻み、その音がだんだん大きくなって開幕です。


舞台はバティスタ大統領独裁政権の下、民衆たちが貧困に喘ぐ1950年代のキューバ。
アルゼンチン生まれの医師 エルネスト・ゲバラ(轟悠)がメキシコで弁護士のフィデル・カストロ(風間柚乃)と出会い、反政府軍として共に闘い、キューバ革命を勝利へと導いたものの、国家のあり方と自らの存在意義に苦悩してキューバを離れ、新たな革命に身を投じた後ボリビアの山中で捕えられ、処刑されるまでを描いています。

ほぼ史実通りに物語は進み、とても骨太で重厚なドラマ。
キャバレーのショーなど華やかな場面も挿入されていますが、基本的に歌や踊りは控えめで、ゲリラ戦が展開される山中の場面が多く、衣装も戦闘服がほとんどでかなり写実的。

ゲバラがどのようにして革命に身を投じるようになったのか、カストロとの魂の結びつき、共感と確執、仲間たちとの連帯、妻となるアレイダへの愛・・・もちろんゲバラを中心に物語は進む一方、サイドストーリーも充実。

憎々しいバティスタ大統領(光月るう)の動向
その部下の将校ルイス(礼華はる)とキャバレーの踊り子 レイナ(晴音アキ)の悲恋
レイナの兄でゲバラに反発しながらも最後まで共に闘うミゲル(蓮つかさ)
ゲバラに妻を助けられたことから意気に感じ、これも最後まで行動を共にする農民ギレルモ(輝月ゆうま)とその弟エリセオ(きよら羽龍)
そしてゲバラの友人でゲバラに触発されて故郷の独立運動に身を投じ、非業の死を遂げるエル・パトホ(千海華蘭)
・・・一人ひとりの物語がこの作品に深みを与え、より重層的なものにしていました。


一幕ラスト。
キューバ革命が成功した喝采の中、ゲバラやカストロが民衆とともに勝利の喜びを爆発させている高揚感の一方で、バティスタ大統領に撃たれたルイスがレイナの腕の中で息絶える場面は、革命の光と影が際立っていてとりわけ印象的でした。


チェ・ゲバラの轟悠さん。
学年にして30年近く離れているであろう月組の若手の中に混じっても違和感のない若々しさ。
自分の理想と信念を愚直なまでに追い求め、ゲリラ戦の中で生涯を閉じたゲバラの孤高がどこか轟さんと重なる部分もあります。
自分を銃殺しようとする兵士に対してゲバラが放った有名な言葉「落ち着け、そしてよく狙え。お前はこれから一人の人間を殺すのだ・・・」は本当にあんなふうに言ったのではないかと思えましたし、ラストにスクリーンに流れる「もし私たちが空想家のようだといわれるならば・・・」は頭の中で轟さんの声で聞こえてくるほどでした。

驚いたのはフィデル・カストロを演じた風間柚乃さんです。
月組の「エリザベート」や「夢現無双」の代役での武勇伝はつとに響き渡っていますが、今回も月城かなとさん休演のための代打とはとても思えない堂々とした演技。
轟悠さん 71期、風間柚乃さん 100期。
学年差をもろともせず、轟さんに対して一歩のひかないどころか、重厚で仲間の中にあっても存在感を放つカストロのカリスマ性まで描き出していて見事という他ありません。風間さんのカストロを観ていると、カストロは政治家で、ゲバラは革命家だったということがよくわかります。政治家であるがゆえにゲバラとの友情の狭間で苦しむ姿にも共感。定評のある歌声も相変わらずのびやかでした。

ヒロインとなるアレイダは天紫珠李さん。
学生ながら単身山奥に潜むゲバラたちに軍資金を届ける、強気で意志の強い女性像がよくハマっていました。
ゲバラをドン・キホーテに見立てて、自分をドルシネア姫ではなくサンチョ・パンサに喩えるのがおもしろかったな。
元男役で長身の美人さん。まだ不安定さが残る歌が課題かな。

最後まで気持ちいいくらいクソッたれな(誉めてます)バティスタ大統領の光月るうさん、ひょうきんな明るさがかえってその後彼が辿る運命の哀しさを際立たせるエル・パトホの千海華蘭さん、笑わない影のある演技がクールな美貌に映えたミゲルの蓮つかささん、お得意の歌ばかりでなくダンスでも魅せてくれたレイナの晴音アキさん、ラテン民族の土着の明るさ、たくましさを体現したギレルモの輝月ゆうまさん(きよら羽龍ちゃんエリセオを肩車してたよ オドロキ)、口跡に少し甘さが残るものの、長身に軍服が映え抜擢に応えたルイスの礼華はるさん・・・などナド、本当に皆さん適役好演だったなぁ。


これまでゲバラやカストロについて詳しく調べたことも書物を読んだこともなく、史実として「ぼんやりと」知っていたことがこの作品を観ていろいろ繋がって、「もっと知りたい」と思いました。
宝塚や夢のような世界でもありますが、時折こうして、知らなかった世界の扉を開いてくれて、私の知的好奇心を刺激してくれる存在だなと改めて思いました。



雪組「壬生義士伝」観て以来、新選組熱再燃で関連本あれこれ再読してるのにゲバラやカストロの物語も読みたくなってコマル のごくらく地獄度 (total 2093 vs 2096 )


posted by スキップ at 22:41| Comment(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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