2019年08月24日

第五回あべの歌舞伎 晴の会 「肥後駒下駄」


soranokai2019.jpg上方歌舞伎塾第一期生で松嶋屋ご一門の片岡松十郎さん、千壽さん、千次郎さんが中心となって2015年に始められた「晴の会」。今年でもう5年目です。
毎年8月のこの時期恒例のお楽しみの一つとなりました。

昨年、一昨年と鶴屋南北の戯曲がつづきましたが、今年は上方作者 勝諺蔵の作品を67年ぶりに復活。
晴の会としては初めて義太夫も入れての上演です。


第五回あべの歌舞伎 晴の会
「肥後駒下駄」 (ひごのこまげた)
作: 勝諺蔵    改訂:亀屋東斎
監修: 片岡仁左衛門  片岡秀太郎
演出: 山村友五郎
出演: 片岡千次郎  片岡松十郎  片岡千壽  
片岡當吉郎  片岡佑次郎  片岡りき彌  片岡當史弥  
中村翫政  片岡當十郎  飯田優真(子役)

2019年8月4日(日) 4:00pm 近鉄アート館 Bブロック4列
(上演時間: 3時間10分/幕間 10分・30分)



物語: 播州姫路の元藩士、向井善九郎(千次郎)は、武者修業の為に諸国を巡り、肥後熊本の松山家に「駒平」という名で中間奉公しています。松山家の息女 お縫(千壽)は、許嫁の松田新蔵(翫政)と、数日後に祝言を控えていますが、隣屋敷に住む八坂源次兵衛(松十郎)がお縫に横恋慕しお縫をさらおうとした時、駒平に助けられます。その駒平に、中老 中川縫之助(松十郎二役)は、「下郎たる身分を弁えぬ無礼者」と叱りつけ、駒下駄で額を打ち割ります。「ひとかどの武士になれば、相手になってやる」という縫之助の言葉に、いつか必ず仕官し、仕返しをする事を心に誓う駒平でしたが・・・。


お話はこの後、肥後を追放された源次兵衛が逆恨みからお縫の父を殺害→新蔵と結婚したお縫は弟の秀之助と3人で仇討ちの旅に出る→旅の疲れから新蔵が眼病を患って失明→そこに現れたニセ医者は実は源次兵衛の変装→家計のため伏見の遊郭に出たお縫は駒平と再会→肥後に戻った駒平こと善九郎は熊本藩の家老 月岡刑部の娘 松枝の婿にと乞われる→その松枝の姉 お沢の夫こそ、自分の額を割ったあの縫之助だった
という怒涛の展開。

おもしろかった~。

とてもスピーディに展開しますが、折々に作者の亀屋東斎さんこと千次郎さんが登場して状況を説明してくださるので混乱することもなく、とてもわかりやすく楽しむことができます。

仇討ちに恋に家族愛、さらには「ええ~?」な展開と盛り沢山。
藤棚の上下を使った大立ち廻りや、客席通路を使った出入り、役者さんたちの熱が舞台に弾力を生んで相変わらず素晴らしい舞台でした。

毎年こうして復活狂言が上演されるたびに、「こんなおもしろいものが埋もれていたのか」と驚いて、掘り出してくる役者さんに感心して、脈々と受け継ぐ家の力を尊び、そして、歌舞伎の懐の深さに感じ入る次第です。


駒平こと善九郎は千次郎さん。
これまで、戯作者として舞台では脇にまわりがちだった千次郎さんですが今年は大活躍。
一本気な若侍を熱演。口跡よい台詞は元より所作も殺陣もキビキビ。

色悪の八坂源次兵衛と中川縫之助の二役は松十郎さん。
源次兵衛が変装した怪しげな町医者 玄龍も加えると実質三役(笑)。
相変わらず美丈夫で、善悪どちらをやっても色っぽい。
ラストで源次兵衛があっさりいなくなってしまうのは、二役という演出上仕方ないとはいえ、盛り上がり的にもちょっともったいなかったかなー。

千壽さんもお縫と松枝の母 梅野の二役。
美しい武家のお嬢様から浪々の身となった夫を支える薄幸の若妻への変遷、そしてどっしり構えた中に茶目っけもある武家の奥方様と三態を変幻自在の演技で見せてくれました。

源次兵衛の悪事の手先となる弟の源内と中間只助の當吉郎)さん、佑次郎さん。
ちょっと頼りないコミカルな悪人ぶりにほっこり。
善九郎をチラッと見かけただけでひと目ぼれして4年間も思いつめる松枝のりき彌さんがとても可憐で可愛くて、婿になってくれると聞いた途端に元気になって出てくる姿に爆笑してしまいました。

他の出演者も全員穴がなく、上方歌舞伎のお弟子さんたちは本当に力量のある人揃い。
そんな中、子役の飯田優真くん(お縫の弟秀之助)ハキハキした台詞でがんばってました。4年経っても全然大きくならないのがちょっとツボでした(←)。



日曜日の公演にもかかわらず客席全部埋まっていませんでした。
千次郎さんもご挨拶で「来年もできますように」といったことおっしゃっていましたが、来年以降も絶対続きますように のごくらく地獄度 (total 2091 vs 2095 )


posted by スキップ at 22:32| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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