2019年08月11日

広いこの世界で 君と巡り合えた奇跡 月組 「ON THE TOWN」


onthetownmoon.jpg今年1月、月組新トップコンビ 珠城りょう・美園さくらのお披露目公演として東京国際フォーラムで上演された作品。
その時点で梅芸公演も発表されていましたので、東京はガマンして楽しみに待っていました。一部キャストを変更しての上演です。
この公演に先立って佐渡裕さんプロデュース版も観て、私にしては珍しく予習もしっかり。


宝塚歌劇月組公演
ブロードウェイ・ミュージカル
「ON THE TOWN」(オン・ザ・タウン)

Music by LEONARD BERNSTEIN
Book and Lyrics by BETTY COMDEN and ADOLPH GREEN
Based on a Concept by JEROME ROBBINS
潤色・演出: 野口幸作
出演: 珠城りょう  美園さくら  鳳月杏  暁千星  夏月都  紫門ゆりや  白雪さち花  夢奈瑠音  海乃美月  楓ゆき  英かおと  結愛かれん/英真なおき ほか

2019年8月8日(木) 12:00pm 梅田芸術劇場メインホール 1階4列(最前列)下手
(上演時間: 3時間/休憩 30分)



1944年初演のブロードウェイ・ミュージカル。
24時間の上陸許可を得た海軍水兵のゲイビー(珠城りょう)は、仲間のオジー(鳳月杏)、チップ(暁千星)と共にニューヨークの波止場に降り立ちます。ゲイビーは、地下鉄の中で“ミス・サブウェイ”のポスターの美女・アイヴィ・スミス(美園さくら)に一目惚れ。必ず彼女を探し出してデートをすると意気込むゲイビーにオジーとチップも協力を約束し、3人で手分けして彼女を探すことにします。アイヴィを探すうち、チップはタクシー運転手のヒルディ(夢奈瑠音)に迫られ、オジーは人類学者のクレア(海乃美月)と出会い、それぞれ恋の花を咲かせます。そんな中、ゲイビーはカーネギー・ホールのレッスンスタジオでついにアイヴィを見つけますが・・・。


梅芸での宝塚公演には珍しくオーケストラピットが設けてあり、4列というチケットを持っていたのですが、客席に着いてみるとまさかの最前列。しかも、下手側だけにしかない舞台からオケピに架けられた縦の銀橋みたいな通路とそれに続く客席降りの階段のすぐ横という席で、同行の友人とともに「えっ?!ここ?!!」と開演前からテンションあがりました。
たくさんある客席降りも客席からの登場も全部この階段を使いますし、この通路の先端に立ち止まるということも多く、目も心も幸せすぎる席でした。

チケットの売れ行きに苦戦しているとも聞きましたが、舞台はとても楽しかったです。
「これなら私、もう1回観てもいいな」と思ったくらい・・・8月12日の千秋楽までに予定が取れず残念でしたが。


版権関係の制約が厳しいと思われ、先日観た佐渡裕さんプロデュース版とほぼ同じで、楽曲はもちろん、場面展開や演出もオリジナルからさほど潤色が加えられていない印象でした。
逆に言えば、宝塚的スターシステムに合わせた演出とはなっていなくて、ゲイビー&アイヴィのカップルだけが突出しているのではなく、3組それぞれ見せ場があって群像劇のような展開。娘役さんにソロ曲がたくさんあるのも特徴的でした。

でもやっぱり、キャストのことを知らないで観た佐渡版より、演じている人の顔が見える宝塚版が断然楽しい!
加えて、ドリーム・バレエやクラブのショーの場面などは、これぞタカラヅカ、な華やかさでショーアップされていたのもとてもよかったです。


ニューヨークで24時間しか与えられていない若者たちがそれぞれに恋の相手をみつけ、ひとときの夢を叶えて船に戻る、その向こうには戦争が、というコンセプトも同じですが、ゲイビー演じる珠城りょうさんのキャラクターのせいか、宝塚というエッセンスのおかげか、ゲイビーの一途さがより際立っていて、2人の恋がより純愛に感じられました。

もう二度と会えないかもしれない2人だけど、
「Lucky to Be Me (神様の奇跡)」という曲でゲイビーが歌ったように、

広いこの世界で 君と巡り合えた 
神様が 奇跡起こした

と思う相手がいることは、戦地にあってもきっと希望や生きるエネルギーに繋がるのだろうなと思いました。


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生真面目で一途なゲイビー 珠城りょう
野性的で女性にも慣れた遊び人風のオジー 鳳月杏
育ちのよい甘えん坊のお坊ちゃんなチップ 暁千星

3人3様の個性がピタリとハマって、わちゃわちゃ楽しそう。
いかにも「3人でつるんでる」という雰囲気のバディ感があって、やり取りを観ているだけでも楽しい。
3人とも揃って長身で足も長いので水兵さんのセーラー服がキマるキマる。

オジーがゲイビーにこうやればいいんだと鼓舞するところ、アドリブ場面となっているようですが、この日のオジー
エアギターで、両指を立てて
「フゥ~ッ  ゲイビー様のぉ~」
腕をぐるぐる回してギターをジャン!とやって 「お通りだあぁぁ~」

で、これをゲイビーがやろうとして、「チップのも見たいよ」と言い出し
「え?」となるチップ。
「でも」とか「いや、無理だよ」とかさんざんゴネた後、「一緒にやろうよ」とゲイビーに甘えるチップ。
「一人でやれ!」と一括するオジー。

意を決してやったチップはきっちりキメていて、
それを見ながら、「ジャン!ってやったらいいんだ~」と笑顔を見せるゲイビー。
暁千星くんの下級生感満載なのだけど、3人とも可愛すぎか。


ゲイビーは、どちらかといえば他の2人ほど濃いキャラクターではないし、先述したように原作が宝塚のスターシステムに合わせたあて書きではないので、とりわけカッコいい役でも突出して出番が多い訳でもないのに、それでも、「この人が主演」と感じられる華と真ん中に立つ存在感で舞台を牽引する珠城りょうさん。

日頃のご本人からも感じられる生真面目なキャラクターがゲイビーによくマッチしていました。
フィナーレ群舞のカッコよさとデュエットダンスの包容力も相変わらずすばらしい。
オジー、チップとはもちろん、アイヴィの美園さんとも相性がよく、とてもバランスのとれたカップルでした。

美園さくらさんは大劇場でのトップお披露目公演を経て、一段と輝きが増した印象。
歌えて踊れてスタイルよくて華のある娘役さん。
ド ドレド~♪ のレッスンシーン。佐渡さん版観た時、アイヴィ役の人が倒立して歌っていて驚いたのですが、美園さんもちゃんとやっていてさらにオドロキ。私の席からは前すぎてお顔が見えなかったのが残念。

オジーの鳳月杏さん。
ようこそ月組へお帰りなさい、ですね。
浅黒い肌に黒髪、ちょいワルで肉食系で色っぽい。鳳月さんの大人のオトコの魅力炸裂です。
クレアをお姫様だっことか、鳳月さんファンたまらないのでは?
歌唱もダンスも高値安定。「ちなっちゃんの歌声 やっぱり好きだ~」と思いました。

珠城・鳳月コンビといえばあの名作「月雲の皇子」がありますが、これからまた月組で、2人がどんな化学反応を見せてくれるか楽しみです。

チップの暁千星さん。
「ありちゃんのバブみ」とよく言われていますが、弟キャラで大型犬のようにかわいいバブみと突然オトコになるバランスが絶妙。
オジーに観光を我慢しろと言われて、「ええ~っ!すーっごく楽しみにしてたんだよおぉ~」と半泣きになるところ、可愛さの極み。そんなチップが急にオトコの顔してヒルディに「こっちに来て」と誘うとか、もう、何なのでしょうか。
歌もますます力強くなっていますが、何と言ってものびやかなダンスが目をひきます。バレエが基礎になっているところ、長身でのびやかで力強いダンス、と柚希礼音さんと重なる部分が多く、下級生の頃からずっと注目しているありちゃんです。

今回、ヒルディ、クレア、ルーシーの3人が役替りで、この日はBパターン
ヒルディ: 夢奈瑠音
クレア: 海乃美月
ルーシー: 白雪さち花
という布陣でした。

夢奈瑠音さんのヒルディ とてもよかった。
コケティッシュでキュートな美人さんだし、勝気なヒルディに男役の部分がうまくマッチしていて、チップよりちょっと年上感があるのもいい感じ。歌もパンチがあって上手いなぁ。
フィナーレは男役に戻って踊っていましたが、顔色が一人だけ白かった・・・花組「CASANOVA」でも鳳月杏さん 顔白かったよなぁと思い出しました。

もちろん海乃美月さんも白雪さち花さんも素敵だったし、マダム・ディリーの夏月都さんもさすがでした。
他に娘役では結愛かれんさんが台詞はほとんどないけれどダンス場面でいつもいいポジションにいて、可愛らしさがひと際目立っていました。


フィナーレは宝塚オリジナル。
暁千星ソロ+娘役 「お料理が得意」→ 美園さくらと娘役 「カーネギー・ホール舞曲」→ 鳳月杏+男役 「みんながいる」 → 珠城りょう+娘役 「孤独な街」 → 男役群舞 「タイムズスクエア・バレエ」 → 珠城・美園 デュエットダンス 「神様の奇跡」という流れ。
やっぱり宝塚のフィナーレはいいな♪

暁千星くんのフライパンをフライパン返しでカンコン打ちながら歌って踊るナンバー 可愛くて楽しかったな。
男役群舞は鳳月杏さん、暁千星さんがそれぞれチームを率いて左右を固め、センターに珠城りょうさんでとても華やかでカッコイイ。
前回の東京公演中に腰を痛めて一時リフトをやめていたという珠城さん。心配していましたが、回数多くないながらも綺麗なリフトを見せてくださいました。

ラストは盛大な客席降り。
鳳月杏さんや暁千星くんは目の前の階段を下りて1回の後ろの方まで走り去ってしまいましたが、私たちの目の前にはラジャー・ビーミーの颯希有翔さんが笑顔で歌いながらハイタッチしてくださいました。
後でプログラム調べたら、オープニングの労働者の歌ソロも、珠城・美園デュエダンのカゲソロも颯希有翔さん。のびやかな美声でした。


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入場時に配られたメッセージカードは10人のキャストの中から暁千星くんのが当たってラッキーでした




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梅芸正面の柱に巨大パネル サイン入り。リキ入っています。




やっぱりいい席で観ると作品全体の印象もよいものになる のごくらく度 (total 2088 vs 2090 )



posted by スキップ at 21:15| Comment(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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