
今年は、バーンスタインのミュージカル「オン・ザ・タウン」です。
昨年から生誕100周年記念コンサートで世界各地で指揮をされてきた佐渡さんが、「その集大成にはぜひ兵庫で彼の作品を上演したい」という思いがあったのだそうです。
原語歌唱、フルオーケストラによる本格的な舞台上演は、日本国内では今回が初めてなのだとか。
4月に同じ兵芸で開催された「バーンスタイン生誕100年 佐渡 裕 音楽の贈りもの ~We love L.B.」でも、この「オン・ザ・タウン」から4曲披露されて、とてもよかったので、本番を楽しみにしていました。
佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2019
ミュージカル 「オン・ザ・タウン」 ON THE TOWN
音楽: レナード・バーンスタイン
指揮: 佐渡裕
演出/装置・衣装デザイン: アントニー・マクドナルド
ムーヴメント・ディレクター: ルーシー・バージ
振付: アンシュリー・ペイジ
出演: チャールズ・ライス アレックス・オッターバーン ダン・シェルヴィ
ケイティ・ディーコン ジェシカ・ウォーカー イーファ・ミスケリー
スティーヴン・リチャードソン ラリー・サマーズ アンナ・デニス ランソワ・テストリー ほか
合唱: ひょうごプロデュースオペラ合唱団
管弦楽: 兵庫芸術文化センター管弦楽団
2019年7月14日(日) 2:00pm 兵庫県立芸術文化センター
KOBELCO大ホール 2階2LB列
(上演時間: 2時間40分/休憩 25分)
舞台は1940年代のニューヨーク。
ブルックリン海軍造船所に停泊する軍船から休暇で憧れの大都会ニューヨークの街へ繰り出した3人の水兵たち。
許された休暇は24時間。そのまる1日の物語。
ゲイビーは地下鉄で見かけた「ミス改札口」のポスターの美女 アイヴィに一目ぼれ。
他の2人も協力して、3人は別行動でアイヴィを探すことにします。
チップはタクシーの女性運転手 ヒルディと、オジーは自然史博物館で文化人類学者のクレアに出会い、それぞれひとときのアヴァンチュールを楽しみ、ゲイビーはカーネギー・ホールのスタジオでついにアイヴィを見つけますが・・・。
1944年に初演されたミュージカル。
ドタバタコメディなのですが、いかにも古き良き時代のアメリカな雰囲気で、屈託なく明るく開放的な作品です。
ポップな色調の舞台装置で次々展開する場面。
躍動的でジャジーな楽曲。
コニー・アイランドでのアイヴィのベリーダンスなど、ショーアップされたダンスシーンやバレエ・シークエンスもふんだんに織り込まれて、目にも耳にも楽しい。
いろいろありつつ、最後にはゲイビーもアイヴィと結ばれてハッピーエンド・・・なのだけど、24時間という限りある時間には終わりがあって、1940年代というと第二次世界大戦中で、彼らが船へと帰って行く向こうには「戦場」があるのかと思うと・・・。
ラスト少し前の場面で、チップ、ヒルディ、オジー、クレアが “Some Other Time” いつかきっと と歌いますが、そのいつかは来ないかもしれない・・・それまでのハチャメチャぶりを忘れたかのように、「髭を剃るのも見られなかった」「素顔の寝顔も見られなかった」と寂しげに歌う4人が何とも切ない。逆に言えば、光と影、戦争という背景があって、あの享楽的、刹那的なバカ騒ぎなのかなという思いも。
印象的な場面は、タクシードライバーのヒルディとチップ。
小さなYellow Cabをヒルディが運転しながら、チップがガイドブックを見て行きたいという観光名所がどれも昔のもので、Come Up to My Place 坊や、わたしの部屋においでよ と誘う強気なヒルディが何ともアグレッシブで肉食系(笑)。
そうそう、佐渡さん、最初のカーテンコールでは ヒルディのこの黄色いタクシーを自ら運転して登場されました。
もう一人 クレアの婚約者 ピトキン判事(スティーヴン・リチャードソン)。
とても包容力があるというか寛容というか、クレアとオジーのいる店に追いついては「ここの勘定よろしくね」とクレアに言われて去られるという繰り返しの挙句に、I understand わかっているよ と歌って、最後に「わからんぞ!」と言い放つところで客席から拍手喝采。
カーテンコールでもキャストの中でイチバンの拍手を受けていました。
ミュージカルですが、メインの男性キャスト3人と女性2人はオペラ歌手。
チャールズ・ライス(ゲイビー)とアレックス・オッターバーン(チップ)がバリトンでダン・シェルヴィ(オジー)がテノール。よい声が大ホールに響き渡ります。
ジェシカ・ウォーカー(ヒルディ)はメゾ・ソプラノ、イーファ・ミスケリー(クレア)はソプラノで、ケイティ・ディーコン(アイヴィ)だけが「俳優/ダンサー」とプログラムに記載されていました。もちろんダンスがお見事で綺麗な倒立も披露されていましたが、そういえばあまり歌っていなかったかな?と後になって気づきました。
クオリティの高いキャスト、明るくキャッチーな演出と舞台装置、演奏はもちろん兵芸が誇るフルオーケストラ、ゲスト・コンサートマスターはベルリン・ドイツ交響楽団第1コンマスのベルンハルト・ハルトーク、そして指揮・佐渡裕。
ミュージカル・オペラ・クラシックがとても幸せに融合した舞台でした。

佐渡さんオペラ観る時の私の定位置からの眺め。
オーケストラピットの指揮者席が見えることが第一なのです。

そしてこちらも佐渡さんオペラ観る時のお約束。
今年は英国王室御用達メゾンのボランジェ スペシャル・キュヴェ・ブリュットでした。
後ろに立てているのは無料配布のプログラム。
いつもながらA5判 40ページくらいある内容充実のプログラムです。ありがたーい。
キャストのこともっと知っていたらさらに楽しめたかも のごくらく地獄度



