昨年の七月松竹座は高麗屋さんの襲名披露でよく通ったなぁと思い返すと1年って本当に早いと改めて実感。
松竹座に歌舞伎の夏が今年もまたやってきました。
今年は我當さん、秀太郎さん、仁左衛門さんの松嶋屋三ご兄弟が揃われるのをはじめ、東西の成駒屋さん、萬屋さんに音羽屋の菊之助さんと、顔見世のようなにぎやかな座組となりました。
冒頭の画像は「義経千本桜」の特別ポスター2枚を1枚に収めたチラシ。
何と言う贅沢でしょう(裏は白紙)。
早速フレームに入れて自室に飾っちゃった!
関西・歌舞伎を愛する会 結成四十周年記念
七月大歌舞伎 昼の部
2019年7月11日(木) 11:00am 松竹座 3階2列下手
一、色気噺お伊勢帰り
作: 香川登枝緒
補鉄: 米田 亘
演出: わかぎゑふ
出演: 中村鴈治郎 中村扇雀 中村芝翫 中村梅枝
中村壱太郎 中村隼人 中村寿治郎 上村吉弥
市川猿弥 坂東彌十郎 片岡秀太郎 ほか
(上演時間: 1時間)
間の抜けた左官の喜六(鴈治郎)と二枚目の大工清八(芝翫)は、お伊勢参りから大坂への帰り道に、古市の油屋で廓遊びをしてから家路に着きます。清八は美しい遊女お紺(梅枝)、喜六の相手はお鹿(猿弥)でしたが、日頃から女房お安(扇雀)の尻に敷かれている喜六は、お安にやきもちを焼かせるため、清八に「喜六が油屋一番の遊女お紺に惚れられて困っていた」とお安に伝えてほしいと頼みます。二人が長屋に帰ると、お紺が清八を追って現れて・・・。
香川登枝緒さんが松竹新喜劇のために書かれた作品をわかぎゑふさんが歌舞伎の演目として演出。
鴈治郎さんの喜六、芝翫さんの清八、扇雀さんのお安はじめ皆さんあて書きのように役にハマっていて楽しく拝見しました。
ころんとしていて愛嬌たっぷりの鴈治郎さん喜六と、上背があってお顔も所作もシュッとしている芝翫さん清八とのコンビ感が絶妙で、二人のやり取りを聴いているだけでも楽しい。
二人それぞれの女房も、かかあ殿下で男まさりの扇雀さんお安と、女らしくて可愛くて、清六さんを思い過ぎてやきもち焼きという壱太郎くんお咲と好対照。
さらには、油屋一の器量よしで色っぽい(けど悪女?)の梅枝くんお紺と、太っていて醜女だけど気だてのいい猿弥さんお鹿。
この3組それぞれ対照感がありつつ個々のキャラクターが立っていて、さすが香川登枝緒先生と感心しました。
・・・香川先生 私が小さいころはよくテレビにも出てはったなぁとちょっぴりしんみり。
一途に清八を思って追ってきたはずなのに実はお金目当てのとんでもない悪女だったお紺。
お世話になったはずの油屋の女将さんにまで悪態をつく、こんな気合いの入った悪女は大好き。
とはいえ、大店の息子という清八の出まかせの嘘をまんまと信じてやってきた訳なので、案外いい人なのかも?
梅枝くん、綺麗だし色っぽいし、悪女でもギリギリのところで品を落とさず、さすがの上手さです。
「何ぬかしてけつかるねん!」のイントネーションはちょっと苦戦していたようでしたが、何でもできる梅枝くんにも苦手があったか、とかえって安心。
お紺の間夫でうわばみの権九郎の隼人くん。
黒い着物で出て来た瞬間、「仮名手本忠臣蔵の定九郎か!」と喜六に言われていましたが、負のオーラぷんぷん放って色っぽくてカッコいい・・・のに「そーだ」ばかり繰り返して笑い取るあたり、その間合い含めて成長したなぁと思いました(←どんな上から?)
最後に出てきてこの場を収める油屋の女将さん 秀太郎さんがさすがの風格。
この日は先斗町総見で桟敷席は芸妓さん、舞妓さんで華やかだったのですが、秀太郎さん、鴈治郎さん喜六さんに「また油屋へもお越しておくれやす。先斗町ばかり行ってんと」とおっしゃっていました(笑)。
二、厳島招檜扇 (いつくしままねくひおうぎ)
出演: 片岡我當 片岡進之介 中村萬太郎 中村壱太郎
中村福之助 片岡松之助 中村時蔵 ほか
(上演時間: 25分)
栄華を極めた平清盛が、西海に入ろうとする落日を檜扇で呼び戻すと夕日が昇り始めたいう故事に由来する舞踊劇。
2014年の南座顔見世以来、口上に列座される以外は舞台に立たれなかった片岡我當さんが5年ぶりに芝居復帰。
ずっと座ったままで、動きは片腕だけ、口跡も、かつてのあの朗々としたお声も望むべくもありませんが、最後に扇を掲げて夕日を招き上げるべく立ち上がった姿は威厳ある立派な立ち姿で、それだけで胸がいっぱいになりました。
このところ舞台で観る機会が少なくなった進之介くんが宗盛で平家の公達として品のある舞台姿を見せていて、お父様の復帰に華を添えていました。
あー、それなのに、私ってば。
我當さんの訥々とした台詞を聴いていたら、何だか意識が遠くへ行ってしまって(←)💦
「時蔵さん踊ってるなぁ」と思っていたら意識が途切れ、舞台観たら時蔵さん縛られていて「!!」となり、どういう顛末なのか台詞をしっかり聴かなければ、と思っていたらまた意識をなくし、次に気づいた時には時蔵さんは舞台にいなくて、一緒に踊っていた壱太郎くんは残っていて「!?!」となったのでございました。大反省。
三、義経千本桜 渡海屋/大物浦
出演: 片岡仁左衛門 片岡孝太郎 尾上菊之助
市川猿弥 坂東彌十郎 中村鴈治郎 ほか
(上演時間: 1時間50分)
私が初めて仁左衛門さんの知盛を観たのは、平成19年(2007)松竹座の七月大歌舞伎。
「義経千本桜で一番お気に入りの演目は『大物浦』、一番好きな登場人物は新中納言知盛」と日頃から公言していて、阪神電車で大物駅を通りすぎるたびに泣きそうになる私の「碇知盛」好きは、この時の仁左衛門さんの舞台で形成されたものです。
感想はこちら・・・やっぱり昔の感想はコンパクトだわね。
海老蔵さんが怪我で休演されて仁左衛門さんが「女殺油地獄」の与兵衛をされた年だったのか、もう12年も前なのね、と感慨深い。
仁左衛門さんがインタビューで「大阪松竹座で12年ぶりに『義経千本桜 渡海屋・大物浦』の知盛を勤めます」とおっしゃっていて、あー、あの時以来なのか、ということで、私が仁左衛門さんの知盛を拝見するのも12年ぶりです。
「関西ではもう今回が最後になるかもしれない」ともおっしゃっていましたが、関西どころか、もしかしたら一世一代じゃない?と思うくらい気迫に満ちた知盛を見せていただきました。
気迫というか、鬼気迫る仁左衛門さんの知盛。
勇壮で、度量があって、怨念も哀しみも繊細さも併せ持ち、口跡明瞭で緩急自在な台詞、外見がぴたりハマるのはもちろんのこと。
敗色濃厚となった大物浦。
満身創痍、体のあちこちに矢が刺さり、白い装束を赤い血に染めて、「天皇はいづくにまします、お乳の人、典侍の局」と呼びかける重厚かつ悲愴な声。
自分の体に突き刺さった矢を抜いて血を舐める姿に、「あー、そうだった。12年前に観た時もここでとても驚いて、二世實川延若の型を仁左衛門さんが復活させたということを後で番附で読んだのだった」と当時の記憶が鮮やかに蘇りました。
「大物の沖にて判官に仇をなせしは知盛が怨霊なりと伝へよや」という言葉を遺し、碇綱を自らの体に巻きつけ、渾身の力を振り絞って碇を持ち上げ海に投げ入れ、するする海へと流れ落ちて行く綱とともに、一顧だにせず背中から大きく海へと没して行く知盛。
勇将の豪胆もプライドも、激情も恨みも哀しみも、すべて海が呑み込むところまで、息をするのを忘れたかのように見入りました。
菊之助さんの義経もとてもよかったです。
ひと目で高貴な人と知れる凛とした気品と美しさ、この人なら安徳帝を任せることができると思わせる情、そして、まるで知盛に自分の前途を重ね合わせているかのような哀愁を帯びた表情。
すべてが終わった幕外で陰影を残した表情でほら貝を聴かせた弁慶は坂東彌十郎さん。
「ほら貝の穴を下向きに吹く伏せ貝は死者への鎮魂」と以前何かで読んだことがあって、弁慶が下向きに吹いているのを観て「知盛への鎮魂なのね」とまた胸がきゅっと苦しくなりました。
二度目に吹く時は自らを鼓舞するように穴を上に向けていた弁慶。その道の先も決して洋々としたものではないと感じられる切ない響きが心に残ります。
昼の部とても楽しかったけれど途中記憶なくしたからマイナス30点 のごくらく地獄度




久しぶりに松竹座に座ってみて 歌舞伎にはこれくらいの大きさの空間がぴったりだと改めて感じました。(歌舞伎座も国立劇場もだだっ広すぎ)前の男性ががたいがよくて舞台の中心がすっぽり頭で涙でした😭傾斜はもう少し必要かしらん。
弥十郎さんの法螺貝の音色も良くて♪あの場面が好きなので、スカスカの法螺貝に余韻を根こそぎぶち壊された恨みが…(^_^;)
厳島は、食後という時間がいけませんよね(笑)私も時蔵さんが縛られるまでは観てたのですがふと気がつくと幕切れでした( ̄∇ ̄*)ゞ
お隣のお姉さん方が「台詞が聞こえなかったね」「お年だから仕方ないのかしら」とおしゃべりしてましたが、違うの~、ご病気だったからなの!お元気な時はそれはそれは張りのあるお声だったんだから!と心の中で言ってた小心者です(^_^;)
遠征されたのですね~。
仁左衛門さんの鬼気迫る知盛、すばらしかったですね。
本当に壮絶で、気力体力の消耗はいかばかりかと。
まだまだ何度も拝見したいところではありますが。
ラストのほら貝については私もかつて(-"-)となった経験が
ありますが、今回の
彌十郎さんはよかったですね。
厳島はあいらぶけろちゃんさまもそうでしたかと少しほっとしました。
いや、我當さんや皆さまには申し訳ないのですが。
確かに以前のあのお声が聞けないのはさびしいですが
お歳を考えるとよくぞここまで回復されたと胸がいっぱいです。