
観る前に原作読もうか少し迷いましたが、白紙の状態で観ることにしました。
宝塚歌劇 雪組公演
かんぽ生命 ドリームシアター
幕末ロマン 「壬生義士伝」
原作: 浅田次郎 「壬生義士伝」
脚本・演出: 石田昌也
出演: 望海風斗 真彩希帆 彩風咲奈 舞咲りん 奏乃はると
透真かずき 彩凪翔 真那春人 久城あす 煌羽レオ 朝美絢
朝月希和 永久輝せあ 綾凰華 彩みちる 縣千 彩海せら/
梨花ますみ 凪七瑠海 ほか
2019年6月23日(日) 3:00pm 宝塚大劇場 1階22列センター/
6月27日(木) 3:00pm 1階10列センター/
7月4日(木) 11:00am 1階16列センター
(上演時間: 1時間35分)
物語: 南部藩の下級武士 吉村貫一郎(望海風斗)は、貧困にあえぐ家族を救う為に妻・しづ(真彩希帆)と子どもたちを残して脱藩し、京へ上って新選組隊士となります。朴訥な人柄でありながらも北辰一刀流免許皆伝の腕前を持つ貫一郎は、妻子への仕送りのため守銭奴と蔑まれても、危険な任務も厭わず人を斬り続けました。やがて時代は大政奉還を迎え、鳥羽伏見の戦いで敗走し深手を負った貫一郎は故郷へ帰りたい一心で大坂の南部藩蔵屋敷へ向かいます。そこにいたのは、貫一郎の幼なじみの親友で、今は南部藩蔵屋敷差配役となった大野次郎右衛門(彩風咲奈)でした・・・。
幕開きは、西南戦争から8年、明治維新から18年が過ぎた鹿鳴館。
かつて江戸幕府の御典医であり現 大日本帝国陸軍軍医総監の松本良順(凪七瑠海)や元 新選組三番隊組長で今は明治政府の警察官となった斎藤一(朝美絢)、大野次郎右衛門の息子で医師となった大野千秋(綾凰華)、その妻で吉村貫一郎の娘 みつ(朝月希和)が回想するところから始まります。
この出だしはいいとして、この人たち(他にもビショップ夫人とか良順の奥様とか)、折に触れて出て来てプチ解説するのですが、これはいらなかったんじゃない?(あ、でもそれだと凪七さんの役がなくなっちゃうのか・・)
原作を読んでいませんので、どれくらい脚色されているのかわかりませんが、初めて観る人でもわかりやすく物語世界に入り込めたと思います。
吉村貫一郎がどうしてあれほど「義の人」なのか、とか、新選組のエピソードも油小路の伊藤甲子太郎(と、そのどさくさに谷三十郎)暗殺くらいしか描かれていませんが、ま、上演時間の制約もあって盛り込めない部分も多かったのかな。
東に遠く 早池峰山
南にそびえる 南昌山
西のお山は 岩手山
北のお山は 姫神山
吉村貫一郎が最初に登場して歌う、美しい故郷の景色が目に浮かぶようなこの歌がとても印象的で(貫一郎は後で初対面の斎藤一にも同じことを言って故郷自慢していた)、貫一郎が故郷を愛する気持ちがよく伝わってくるので、その後、彼と彼の家族が辿らなければならない運命がやり切れない。
新選組の行く末は知っていますので、悲しい結末は予想がつくのですが、その上をいく切なさでした。
家族の暮らしを守るため、「必ず帰る」と約束をして単身故郷を後にする貫一郎。
新選組では、朴訥とした人となりと相反するような剣の腕前、誰にもやさしく接し、守銭奴と呼ばれながら稼いだ金のほぼすべてを故郷の家族へ仕送りする姿に、近藤勇をもってして「あいつを死なせちゃならねぇ」と言わしめる貫一郎。
大政奉還が成り、官軍の手に錦旗があがり、敗色濃厚となりながら鳥羽伏見の戦い、淀川決戦へと進む貫一郎と新選組を見送る八木源之丞やみよ、そして大野次郎右衛門や佐助などが歌う
親である幕府がなくなった
新選組は天下のみなし子になった
みたいな歌詞が、貫一郎はもちろん、私の新選組への思いとも重なって、何とも切ない気持ちになって、涙。
この場面の重層的なコーラス、よかったなぁ。
さらには、「一旦大坂城に入って態勢を立て直そう」という土方の言葉に耳を貸さず、
錦の御旗に向かって
「新選組隊士 吉村貫一郎、徳川の殿軍ばお務め申す。
一天万乗の天皇様に弓引くつもりはござらねども、
拙者は義のため戦ばせねばなり申さん。お相手いたす!」
と、両手に刀を握り締めて斬り込んで行く姿にまた涙。
深手を負い、大坂の南部藩蔵屋敷に逃げ込み、故郷への帰参を願うも大野次郎右衛門から切腹を命じられた貫一郎の最期の時、「ひい ふう みー、これで嘉一郎の袴、みつの雛飾り、しづの帯、抱くこともできねかったわらしの肌着・・・何とか足りるかなぁ」と買ってやるものをつぶやきながらお金を数えるに至ってはほぼ号泣です。3回観て3回とも。
その後の死に様がまた・・・。
大野次郎右衛門が使えと言ったよくキレる名刀は使わず、歯こぼれして錆びた自分の刀を床に立てて自分の体を預ける貫一郎・・・もう泣くしかありません。
吉村貫一郎は、新選組の中でセンターに立つ人物ではないし、地味でお国訛りが抜けない田舎者ですが、新選組隊士をはじめ、大野次郎右衛門や配下の佐助、おみつや八木源之丞など周りの人々を惹きつけてやまない魅力ある人物。
望海風斗さんがとても説得力ある演技でそんな貫一郎を造形していてすばらしい。
あの南部訛りがとても自然で、やっぱり歌が上手い人は耳がいいから訛りもうまいのね~と感心。
普段の穏やかさから、一旦刀を手にするとスッと人が変わったようになる佇まいも、重心低く構えた殺陣もとても素敵でした。
谷三十郎殺しを斎藤一の仕業と冷静に分析して問い詰め、20両をねだるギャップも可愛かったです。
貫一郎の妻しづと京都の両替商のわがまま娘で貫一郎を婿にと願うみよの二役演じ分けが鮮やかな真彩希帆さん。
どちらかといえばみよの方がニンかなぁという気もしましたが、薄幸なしづもよかったです。
今回は歌い上げる楽曲はなかったけれど、つぶやくように歌う時も透明感ある綺麗に通る歌唱はさすがでした。
吉村家の子どもたち・・・嘉一郎の彩海せらさんとみつの彩みちるさんもとてもよかったな。
彩海せらさんは新人公演の主役にも抜擢されて、期待の若手ですね。
彩みちるちゃんみつの泣き顔、泣きの演技がほんとかわいくてね~。
江戸に旅立つ貫一郎を「とと~」と泣きながら呼ぶ声が耳から離れません。
大野次郎右衛門はどちらかといえば辛抱役なのですが、彩風咲奈さん、こんな役もできるようになったのねーと胸熱でした。
脱藩する貫一郎に自らの切腹を覚悟して通行手形を工面してやったり、大坂の蔵屋敷に逃げ込んできた手負いの貫一郎に、藩を守るために「壬生浪一匹と南部藩をはかりにかけることなどできぬ」と言い放ち、心を鬼にして切腹を命じる厳しさを見せるかたわら、錆びついた刀では痛かろうと自分の刀を差し出したり、火鉢やにぎりめしを差し入れる温かさも。
歌も驚くくらい声量があってよく通ってすばらしかったです。
新選組では、斎藤一の朝美絢さんが目立つ役で、いかにもクールなキレ者といった眼光鋭いビジュアルに、吉村貫一郎を認めながらも屈折した思いを抱く役で好演。
斎藤を「はじめくん」と呼び、彼が唯一心を許しているらしい沖田総司は永久輝せあさん。
谷三十郎を「斬っちゃいましょうか」と明るく笑って言いながら醒めた目とか、「どこへ行っても私たちの行きつく先は地獄ですよ」という言葉が印象的でした。
やわらかで綺麗で品があって、でもどこか孤独の影がつきまとい、少し毒も持っている・・・沖田総司大好きで採点厳しいワタシ的にも合格!の魅力的な総司でした。
土方歳三の彩凪翔さんも素敵でした。
ちゃんと斎藤や沖田、その他の隊士の上に立つ存在で、でも少し斜にも構えていて。
新選組全員で記念撮影する時の土方の立ち方が超クールでツボでした。
「吉村は新選組の良心だった」と回想する斎藤一。
「吉村は英雄(ヒーロー)ではなく、新選組の『良心』という位置づけです」とパンフレットの石田昌也先生。
「君主に対する『忠義』とは違い、吉村貫一郎は家族を守るために『決して死なないこと』を己の義としました。吉村にとっての君主は朝廷でも幕府でもなく『妻・しづと家族』でしたと。
それなら、あの淀川決戦の時の、「義のため戦ばせねばなり申さん」はどういう心情だったのかな。
あの場面で斬り込んだら、生きて帰れないことは覚悟しているように思えますし、それは「決して死なないこと」とは相反するような気がしますが。
答えは原作の中にあるでしょうか。
こうして感想書いていても泣きそうですが、ショーにつづく
もしかしたら東京で見られるチャンスあり?という事態になって、きっとダメなんだけどもまだ期待も持ってる、という状況です。これはスキップさまのご感想を読んでみなくては、と。
壬生義士伝は連載時に半分くらいは読んでたかなー、というところですが、それと私にはほぼ無縁の宝塚が、全く結びつかなくて……。だって美しいイメージ皆無でしたし。
そのうち(壬生義士伝でなくても)、見ましたというご報告ができるといいな。
ほんとだ!思わぬところに(笑)。
「壬生義士伝」私は原作を半分くらい読み終えたところです。
よくもあの原作を1時間35分にまとめたな、しかも歌も踊りも
まじえて、というのが今の率直な感想です。
宝塚の舞台は、多分、ドラマや映画とはイメージが違う作品に
なっていると思いますが、吉村貫一郎という人の魅力は十分
伝わってきました。
きびだんごさまが首尾よくご覧になれたら、ご感想が楽しみで
楽しみで仕方ありません(^^ゞ
今回はダメでもそのうちいつか、お待ちいたしております。
わぁ~ あいらぶけろちゃんさまもご覧になるのですね!
ヅカ版なのでいろいろと勝手が違うと思いますが、
ご感想伺うのがとても楽しみです(^^ゞ