
博多座組と分かれているとはいえ、芹香さん+数人を除いてはとてもフレッシュな顔ぶれとなりました。
東京のお友だちに手配していただいたチケット、当日受け取ったら最前列で、「オケボックスのないドラマシティで最前列なんて・・・」と同行した友人と開演前からテンション上がりました。
宝塚歌劇宙組公演
ミュージカル 「群盗-Die Räuber-」
-フリードリッヒ・フォン・シラー作「群盗」より-
脚本・演出:小柳 奈穂子
出演: 芹香斗亜 花音舞 凛城きら 秋奈るい 穂稀せり 瑠風輝 華妃まいあ 希峰かなた 天彩峰里 愛海ひかる 鷹翔千空 雪輝れんや なつ颯都 ほか
2019年2月16日(土) 4:00pm シアター・ドラマシティ 1列センター
(上演時間: 2時間30分/休憩 25分)
1781年にドイツの作家 シラーの戯曲処女作として出版され、翌年に舞台化された作品でヴェルディ作曲によるオペラや、日本でも何度も翻案上演されているそうですが、読んだことも観たことも全くなくて初見。
舞台は18世紀のドイツ。
フランケン地方の領主 モール伯爵(凛城きら)の嫡男 カール(碧咲伊織→芹香斗亜)は従姉妹のアマーリア(陽雪アリス→天彩峰里)とともに穏やかな日々を過ごす中、異母弟フランツ(真白悠希→瑠風輝)がアマーリアの父でモール伯爵の弟ヘルマン(希峰かなた)に連れられてくるところから物語は始まります。
成長したカールは父の反対を押し切ってライプチヒの大学に進学しますが、伯爵家嫡子の地位とアマーリアを狙うフランツの策略によって父から理不尽に勘当されたことで人生に絶望し、大学の仲間たちに祭り上げられるまま義賊の首領となります。彼らは貴族から金品を奪い、貧しい人々を救う「群盗」と自ら名乗り暗躍しますが・・・。
ベートーヴェンの「月光」で始まる物語。
自由を求めて生きていこうとする若者と封建的で保守的な父との葛藤と断絶、そして和解と背中合わせの悲劇という、重厚で骨太な作品です。
シンプルながら凝ったセット、衣装も照明も美しく、小劇場作品として上々の仕上がりでした。
カールをはじめ大学の仲間たちがいきなり「俺たちは群盗だ!」となっちゃう唐突感とかありつつもおもしろく観ていましたが、死んだと思っていた父のモール伯爵が生きていて、心を取り戻してカールとも理解し合い、フランツやヘルマンの悪事も露見する中、この人たちがバタバタと死んでいき、アマーリアまでも「私はここで死にます。私を殺してください」というのは理解できなかったなぁ。
でも、カールにはそれが理解できたのね?だからアマーリアの願いを聞いて、苦しみながらも自分の手でアマーリアを殺したのね?
そんなカールも、自分のやり方では世間を正せなかったと、捕えられ処刑される道を選ぶ・・・全滅じゃん

カールの生きざまもさることながら、カールに対するフランツ、モール伯爵に対するヘルマンの、それぞれ屈折した思いが印象的でした。
同じモール伯爵の息子でありながら、嫡子のカールに対して、水車小屋の娘から生まれて父親の愛情も知らずに育ったフランツ。
領主である兄 モール伯爵の影で家督を相続することもできず、なぜ自分は後に生まれてしまったのか、なぜ自分の足は曲がってしまったのかと屈折した思いを抱えるヘルマン。
この二人の「弟」が物語を色濃くしていました。
ヘルマンがモール伯爵に斬りかかった時、咄嗟に間に入りモール伯爵をかばって斬られるフランツ。
憎しみながらも心の底では父親の愛を渇望していたフランツが切ない。
カール差しのべた手に最後まで応えることはせず、「生まれ変わったらその手をとるとしましょう」と言って逝くフランツが哀しい。
とはいえ、芹香斗亜さんは堂々たる主演。
何不自由なく育ち、明るく華やかで人を惹きつける魅力にあふれた貴族の青年 カール。
今まで見たことがない新しい世界で新しい思想にふれて心酔してしまうのもいかにも世間知らずのおぼっちゃま。その彼が翳りを纏うラストは圧巻でした。
芹香さん、立ち姿が凛々しく美しく、長身に衣装もよく映えてステキ。お芝居はもちろん、歌もダンスも、穴がありませんね。
カールの陽に対して陰の役どころの瑠風輝さん。
野心家でカールを陥れるけれど、陰謀に隠された心は哀しいフランツ。
瑠風さん、歌は相変わらず高値安定ですがお芝居もとてもよかったです。笑顔を封印した暗い瞳も印象的。
アマーリアの天彩峰里さんはお得意の歌はもちろんお芝居も安定。品もあって可愛いし、いかにもしっかり者の貴族のお嬢様でした。
ストーリーテラーを兼ねたライプツィヒの役人 ヴァールハイトの鷹翔千空さんが下級生ながらさすが101期首席の力量を見せ、あのモール伯爵の人 お芝居も上手いしお顔は綺麗~と思っていたら凛きらだったという・・・そりゃ上手かろう。
フランツの少年時代を演じた真白悠希さんが研1なのをはじめ、今回台詞を言うのも初めてというキャストも多かったと聞きます。そんな若手をまとめる芹香さんのリーダーシップにも、懸命に稽古してすばらしい舞台へと昇華したメンバーにも、心から拍手を贈りたいと思います。
フィナーレの男役群舞もカッコよかったです。
芹香さんの隣で踊るイケメンは誰?と目をこらしたらまたもや凛きらだったという・・・。
役のカツラをとって素の男役に戻った鷹翔さんのダンスも目を引きました。
宙組の若手 男役も娘役もまだまだ知らない人がたくさん のごくらく地獄度



