
前回(2017年)に続いて、高麗屋親子二代のご登壇。
襲名前だった前回は松本幸四郎さんと市川染五郎さん、今回は松本白鸚さんと松本幸四郎さんとして襲名後初の歌舞伎サロンご出演です。
創業百二十周年記念
第二十九回 六盛 歌舞伎サロン
「高麗屋、三代同時襲名」
ゲスト: 松本白鸚 松本幸四郎
聞き手: 鈴木治彦
2019年2月23日(土) 5:00pm 京都岡崎 六盛
前回のレポはこちら
第1回目からずっと司会を勤めていらっしゃる鈴木治彦さんは今年何と90歳なのだとか。
少し痩せられて、さすがにお歳は召されましたが、明るくお元気なご様子、トークの質問コーナーではマイクを持って会場内を質問者のところへ回って走り寄っていらっしゃいました。
お歳のせいかいく分マイペースになられたようで、元よりマイペースの白鸚さんと治彦さん お二人を向こうに回して、こちらも本来はマイペースのはずの幸四郎さんがあれこれ気を遣って、「20分経ったら席を交代するんですよね?」と言ったりするの、何だか可愛くておかしかったです。
トークは前半は治彦さんがお二人に質問しながら進行、後半は客席の質問にお二人が答える形でした。以下は印象に残った応答の備忘メモ。
■ 六盛歌舞伎サロンと京都
白鸚さん: 京都は旧くから観ていただいているお客様がたくさんいらっしゃる、私の父、祖父の時代からも。今日もそんなお客様がたくさんいらしていただいて、とても有り難いことです。
父の先代白鸚は京都ではよくもてましてねぇ。
幸四郎さん: 日帰りで終わるのを反省してほしい。イベントが1日で完結してしまう。まずは前日打ち合わせをして、当日も終わったら新幹線に間に合わない時間で帰れない、というくらいにしてほしい(笑)。
■ 襲名
白鸚さん: 70年以上役者をやっていますが、襲名してまた新しいことを一から学び挑戦していくつもり。
先月 一條大蔵卿をやりましたが、あれは37年前、先代の勘三郎さんに習って・・・
・・・ここで幸四郎さんから、「47年前じゃないですか?37年前は襲名だから」
あ、47年前?57年前かな?
芝居はお客様の目をくらますこと。肩でゼイゼイ息をしていても涼しい顔をして、歳も感じさせず、これからも目をくらませていきたい。
幸四郎さん: 去年の1月から始まった襲名披露興行は本当に夢のような配役でこの上ない喜びでした。
金太郎から染五郎になった時は、金太郎より染五郎の方がカッコいい名前だなと思いましたが、幸四郎になった時は、幸四郎だな、と。
・・・ここで白鸚さんが、「自分の名前を譲るのは決死の覚悟なのに幸四郎だなぁとは不本意」とクレーム。
いや本当は眠れないくらい嬉しかったですよ、と笑って言い直す幸四郎さん。
親子漫才のようなやり取りが展開されました。
襲名で変わったことは?という質問に幸四郎さんご自身は、「幸四郎になって何が変わったんだろう?とお客様が観に来ていただいている感じ。私自身は何も変わっていません」とキッパリ。「これまで通りやるべきことをやっていくし挑戦しようと計画していたことには挑戦していきます」
白鸚さん: 襲名はセレモニーだけにして終わりたくなかった。もっと人の心が通った人間的なものにしたかったのですが、裏方さんやスタッフ一丸となってそれをやってくれました。
■ 染五郎くん
幸四郎さん: 倅の初お目見えの時は、とにかく毎日、同じ時間に舞台に出ることができるか、それだけでした。
ちょうど毎日の昼寝の時間だったので、スリリングな毎日でした。
白鸚さん: 染五郎の初お目見えの時は私が手を引いて花道を歩きました。初舞台の時は揚幕から、行ってきなさいと背中を押しました。これからは彼は一人で歩いて行くでしょう。
■ 三月歌舞伎座 弁天小僧菊之助
幸四郎さん: 弁天をダブルキャストでやるのは前代未聞のこと。
私は中村屋のおにいさん(勘三郎さん)に教えていただいて、猿之助さんは猿翁のおじさまにあれほど細かく教えてもらった役はないというほど教えてもらったそうです。型が違うのはもちろん、ポスターやチラシでもわかるように鬘や襦袢、煙管の形も違います。その違いも楽しんでいただきたい。
「これが最後の弁天」ときっぱりおっしゃっていましたが、最後なの?
■ 六月 三谷歌舞伎
幸四郎さん:舞台は漂流する船の中とロシア日本は出てきません。今発表されている出演者はこれまで三谷さんと仕事をしたことがある人ばかり。中でも父が一番多い。
父の役はエカテリーナの愛人 ポチョムキン。今のところこの役だけが史実にない100%三谷さん創作の役です。
白鸚さん: とても不安です。名前もポチョムキンて。
幸四郎さん: 猿之助さんの愛人をやられる松本白鸚さんでしたw
5月はまる1ヵ月、歌舞伎座と同じ広さの稽古場でお稽古。
夜の部全部を使って新作歌舞伎というのも珍しいということで、ますます楽しみです。
■ 南座
幸四郎さん: 南座は改修されたのに昔と全く変わらない姿になってね(笑)。
音響という意味では日本一の劇場だと思います。鉄筋でつくるとコンクリートが乾くのに10年かかるんです。それまでは音の響きがよくない。歌舞伎座もまだそこまで行っていません。その点、南座はすばらしい。
■ 勧進帳
「本人がいないから言いますけど」とやおら切りだす白鸚さん。
十一月の弁慶はよくやっていました。楷書で。滝流しもつけてね。
とお隣の幸四郎さんを一瞥もせずおっしゃいました。
それを聴く幸四郎さんの表情がもう何とも言えなくて。
何という親子で何という師弟なんだと胸がいっぱいになってウルウル。
会場を移した立食パーティでは、テーブルに本麒麟の缶がたくさん並べられていました。
乾杯の本麒麟をひと口飲んで「うまいっ!」とCMを再現してくれる幸四郎さん。
でも、「これは新本麒麟で、今度のCMには江口さんと私は出ていないんです。また出られるようがんばります」ですって。
そしてこれまでと変わらず白鸚さんと幸四郎さんがそれぞれに各テーブルを回ってツーショット撮影に応じてくださったり、質問に答えてくださったりしました。
白鸚さんには紀子夫人も寄り添っていらしたので、今回はスリーショットをお願いしちゃいました。撮影後にちゃんと目を見て握手してくださるのも前回と同じ。本当に白鸚さんって、恐れ多いけど接するたびに好きになる感じです。
いつにも増してご機嫌だった幸四郎さん。
抽選会でもハイテンションで場を盛り上げていらっしゃいました(友人たちも私も何も当たらなかったけど)。
六盛のお料理は相変わらずおいしくて、鮑や白子やお肉やと高級食材バンバン出てくるし(そして出てきたそばからすぐなくなります)、楽しくおいしい夜でした。
自分の前回のレポ読みなおしていて、「幸四郎さん」「幸四郎さん」と書いているのが白鸚さんのことで、当代の幸四郎さんのことと勘違いしそうになる自分に気づいてハッとなりました。それくらい、たった1年の間に染五郎さんは完全に十代目松本幸四郎さんになったのだなぁ、と。


ポスター画像は2年前と同じw
左が今回、右が2017年5月に撮った画像です。
幸四郎さん 京都ではいつもゴキゲン のごくらく度


