
グロリア・エステファン&エミリオ・エステファン夫妻の半生と音楽を基にしたジュークボックス・ミュージカル。
2015年にシカゴとブロードウェイで初演され、今回が日本初上陸です。
グロリア・エステファンといえば「Conga」や「1- 2- 3」、アトランタオリンピックのテーマソングにもなった「Reach」くらいしか知りませんでしたが、グロリアを演じる朝夏まなとさんを観てみたくて。
ミュージカル 「オン・ユア・フィート!」
脚本: アレクサンダー・ディネラリス
音楽・歌詞・編曲: グロリア・エステファン エミリオ・エステファン
翻訳・訳詞・演出: 上田一豪
振付: TAKAHIRO 藤林美沙 金光進陪
出演: 朝夏まなと 渡辺大輔 青野紗穂
栗原英雄 久野綾希子 一路真輝 ほか
2019年1月17日(木) 6:00pm シアター・ドラマシティ 8列センター
(上演時間: 2時間45分/休憩 20分)
キューバ移民の両親のもとアメリカのマイアミで暮らすグロリア一家。
グロリアは心理学を専攻し語学も堪能な優秀な大学生でしたが、ベトナム戦争で重い障害を負った父(栗原英雄)の代わりに働く母(一路真輝)を助けて父や妹の世話に追われ、大好きな歌の才能を発揮できずにいました。そんなある日、グロリアは祖母(久野綾希子)の後押しでエミリオ・エステファン(渡辺大輔)のバンド マイアミ・ラテン・ボーイズに加わることになります。仕事上のパートナーとしてだけでなく、人間同士としても次第に惹かれ合うグロリアとエミリオ。一方、グロリアが音楽の道に進むことに反対していた母は娘と絶縁。そんな時、グロリアは交通事故で脊髄付近の複雑骨折という重傷を負い、もう歩けないかもしれないという危機にさらされます・・・。
会場に入ったら、ペンライト売場に長蛇の列ができていて(しかもその時点で正規の8色のものは完売していて簡易ペンライトが売られていた模様)、「え?!ペンライト?・・・これってもしかして私の苦手なヤツ?」といやな予感が漂う・・・そこで思い出しました。そうだこういうの、ジュークボックス・ミュージカルっていうんだった(←遅っ)。
それでも、客席も一緒になってペンライト振ってノリノリ、というのはフィナーレだけで恐れていたほどのことはなく、ドラマの中にライブシーンやダンスをバランスよく散りばめられ、ラテンミュージックに乗って楽しい作品に仕上がっていました。
ジュークボックスミュージカルといえば既存の曲を各場面にはめ込むスタイルですが、この作品も全編にグロリア・エステファンのナンバーが散りばめられていて、かつ、各ナンバーがそのために書き下ろされたかのようにハマっていました。
「1- 2- 3」がダンスレッスンでテンポをとるシーン(ダンスお得意の朝夏さんが下手に踊るシーンがまた・・(^^)で流れてほほぅとなったり。
結婚を決めたグロリアにお父さんが歌う曲が ストーリーに本当にぴったりで、この曲だけはこのミュージカルのオリジナルなのかな?と思っていたら、やはりこれもグロリアの「When Someone Comes Into Your Life」だと後で知りました。
そして極めつけは、交通事故の怪我から立ち直れることができないとグロリア自身が自暴自棄になった時、舞台一面にファンからのたくさんの手紙が現れ、その中の何通かがファンによって読み上げられ、そのファンたちが歌う「Reach」
生まれ変われる
翼があれば
強くなれる
どこまでもいける
もし届くなら
If I could reach
If I could reach, higher
本当に感動的な場面、そしてその場面にぴったりの曲でした。
が、全体的な感触としては、同じュークボックス・ミュージカルである「ジャージー・ボーイズ」の劣化版という印象・・・「劣化版」という言い方がよくなければ「スケール小さい版」かな。
キューバ革命に翻弄され、ベトナム戦争で身体を蝕まれる父
自分が諦めた夢を叶えていく娘に複雑な感情を抱く母
グロリア自身にも音楽の世界へ飛び込むことへの躊躇があったと思われる葛藤や、母との確執など、重いテーマやエピソードは盛り込まれているものの、サラサラ流れていく感じでドラマとして印象が浅い。
ミュージシャンとしてはともかく、グロリアとエミリオがお互いどういうところに惹かれて愛し合い結婚に至ったかもあまり描かれていませんでしたし、件の交通事故についても、グロリアが「休みたい」と言ったのにツアーを強行したエミリオのせいでこうなったという発言があったにもかかわらず、そこから派生する夫婦間の軋轢などには触れられず・・・実際この夫婦に軋轢などはなかったのかもしれませんが。
グロリアの朝夏まなとさんは、宝塚時代「宙組の太陽」と言われたキャラクターが活きて、明るくポジティブな主人公を真っ直ぐに演じていて好感。
相変わらずのびやかな歌声で、台詞も歌声も男役時代とそれほど変わっていない印象なのにちゃんと女優さん。ロングヘアも違和感なく似合って、少女時代も可愛いしスターになってからのオーラも輝くばかり。ダンスはもともとお得意ですし、手足が長くて動きがとても綺麗なのも現役時代と変わらず。
エミリオは当初 渡辺大輔さんと相葉裕樹さんのダブルキャストの予定で、「大輔くんの方が観たい」とこの日を選んだのにシングルキャストになっちゃいました。
英語があまり上手くないという役で、訛りがあってちょっととぼけた雰囲気で、あまり敏腕プロデューサーという感じではありませんでしたが、革命で愛する祖国と家族から引き離された哀しみを抱えつつ 陽気にふるまうエミリオの誠実さや温かさはよく伝わってきました。大輔くん、あの赤い短パン?には驚きましたが、やっぱりいいオトコでいい声。
母の一路真輝さん、父の栗原英雄さん、おばあちゃんの久野綾希子さん、そして妹 レベッカの青野紗穂さんとグロリア一家は超歌うまさん揃いだし、リトルグロリアとグロリアの子ども ナイーブを演じた子役ちゃん二人(ダブルキャストでこの日はリチャーズ恵莉ちゃんと宏田力くん)も本当に歌が上手で耳福。
そのメンバーがラストにそれぞれナンバーを歌い継ぐ「MEGAMIX」は会場大盛り上がりでした。
グロリアの曲もっと知ってたらより楽しめたかなぁ の地獄度


