
「音楽活劇」というワードには苦手意識漂うのですが、早乙女太一=弁天小僧菊之助 なんて、もう観る!としか言いようがないですよね(誰に同意を求めている?)
音楽活劇 「SHIRANAMI」
脚本・演出: G2
ショー演出: 市川訓由
音楽監督: 佐藤史朗
美術: 松井るみ
映像: 田中伸二 土橋慶
出演: 早乙女太一 龍真咲 伊礼彼方 喜矢武豊 松尾貴史
鈴木壮麻 加納幸和 小澤廉 入来茉里 小林大介 谷山知宏
谷水力 安田桃太郎 有川マコト ほか
2019年1月12日(土) 5時30分pm 新国立劇場中劇場 1階6列上手
(上演時間: 2時間40分/休憩 15分)
物語の舞台は尊皇攘夷に揺れる幕末。
古くから天皇家に仕えていた八瀬童子の菊霧(早乙女太一)は、徳川家茂(小澤廉)に嫁ぐこととなった皇女和宮(入来茉里 )のお守役として江戸に下り、弁天小僧菊之助と名を変えて「ある密書を手に入れる」という密命を受けていました。同じ頃、奉公所の同心・南郷力丸(伊礼彼方)は、ある事情で姿を消した許嫁 小夜(龍真咲)の行方を追いながら、幕府を守るために密書を探していました。一方、武家屋敷ばかりを狙う泥棒・日本駄右衛門(松尾貴史)が江戸の町を騒がせていましたが、ひょんなことから家茂の御庭番の忠信利平(喜矢武豊)と相まみえることになります。それぞれの忠義、思いを抱えていた五人が、やがて「この国を盗もうとしている」連中の企みを阻止するために力を合わせることに・・・。
弁天小僧の早乙女太一くんと、小夜が男装して赤星十三郎を名乗る龍真咲さん以外はそれぞれ役名が「弁天娘女男白浪」のままですが、お話はもちろん別物。松尾さん@日本駄右衛門なんて、め組の辰五郎親分でねずみ小僧だったりするし。
いろいろとツッコミどころはありつつも、物語はきちんとできていて、ちゃんと「五人男」で5人がそれぞれの大義に生きる爽快な幕末群像劇に仕上がっていました。
BGMはジャズ。
シンプルな舞台装置と大画面LEDパネルのポップでリアルな映像。
横浜のホテルの場面ではレビューのような洋装の歌とダンス。
出演者もスタッフもかなり“異業種交流”といった趣きですが、その凸凹感含めて楽しかったです。
客席には若い女性が多いようにお見受けしましたが、瓦版売りが「白浪五人男」を現代語で解説するという親切設計で知らない人にもわかりやすかったのではないかしら。もちろん知っている者にも楽しめる書き換えや引用がある上級者設計も。
弁天小僧の見顕しは武家娘ではなく、花魁から。
ジャズが流れる中、それはそれは美しく妖艶な花魁を見せてくれた早乙女太一くん。
その打ち掛けをパァーッと翻しての見顕しの鮮やかなこと。
あの場面観られただけでもそれまでのツッコミどころすべて許す!という気分になりました。
太一くんの女形を観るのは3年前に劇団朱雀が解散して以来ですが、後でインタビューを読んだところによると、朱雀時代含めて花魁で台詞を言うのは今回が初めてなのだとか。全然違和感なく色っぽかったし、できればこれからもやっていただきたい。
そしていつかぜひ、太一くんの正調「弁天娘女男白浪」の弁天小僧が観てみたいです。
太一くんは基本 菊霧でいることが多いのですが、これがまたポニーテールでね(笑)。
“太一のポニテ”にヨワイ私の心はくすぐられっぱなしな訳です。和宮様への秘めたる思いを隠しているっていうところもね。
殺陣は相変わらずキレッキレですが、今回「相手を殺さない」設定なので逆刃で、「髑髏城」の捨之介思い出したり。
そのために手負いになって、どんどん追い詰められていく姿も悲壮感たっぷり。
悲劇が似合うオトコよ←
いや~、それにつけても安田桃太郎さんとの立ち回りは迫力満点でした。
驚いたのは喜矢武豊さんで、ゴールデンボンバーの人くらいの認識だったのですが、声よくて台詞はきちんと届くし動けるし(綺麗な連続側転も披露してた)美形だし、お見それしました、という感じです。
花組芝居の加納幸和さんが三役を演じ分けていらしたのですが、それぞれくっきり違う人物像が立ちあがっていてさすがの存在感。
特に天璋院よかったな。毅然としていて、いかにも大奥背負っている感じがして。嫁である和宮に辛くあたるところも、後で手を取り合うところも、いかにも天璋院で篤姫でした。
花組芝居からは小林大介さんと谷山知宏さんも何役も兼ねて出演されていましたが、着物の着こなしや武士の所作がやはり他の役者さんとは一線を画していて、江戸の世界観を醸し出していらして、ほんと、花組芝居さすがとしか。
龍真咲さんの小夜が可憐で凛としていて鬘も着物もお似合いで台詞も普通に武家娘でやるじゃん!と思っていたところ、赤星十三郎になるとまさお節復活なのはどうしたことでしょう。男役だとあの話し方じゃないといけないという思いがあるのかな。それと、「さすが元宝塚の男役らしく龍真咲さんのダンスはキレッキレ」というコメントを見かけましたが、一度宝塚歌劇をご覧になっていただいて、ホンモノのキレッキレのダンスはどういうものかぜひ実感していただきたいところはあります。
オープニングの場面とシンクロするエピローグ。
まんま「稲瀬川勢揃いの場」のように、プロジェクションマッピングの大白浪を背にして並ぶ五人男の名乗りのツラネ・・・からの、沖を行く家茂の船を見送り、取り囲む捕り手の中に斬り込んでいく姿は、「明日に向かって撃て!」のラストとも「髑髏城の七人」とも重なって、清々しくも切なかったです。



壁一面にずらりと並んだ祝花
新国立劇場中劇場でこんなにたくさんお花を見たのは初めてです。
率直に言うと歌もダンスもいらないんだけど のごくらく地獄度



