

フライヤーの表裏。マリーの表情も微妙に違うのね。
2006年初演のミュージカル。
アナウンスでも必ず入るほど「新演出版」が強調されていますが、初演を観ていませんのでどのあたりが新演出なのかはわからず。
遠藤周作さんの小説が原作だということも今回初めて知りました。
でも、クンツェ&リーヴァイの作品だということは知っていたの(←)。
私が観劇した日、シルヴェスター・リーヴァイさんが客席通路を後方から歩いていらして、写真で見るとおりの人だったのでちょっと笑ってしまいました。オケピまで行って指揮の塩田先生と何やらお話され、座席に戻る時に客席から拍手が巻き起こると両手を振って応えていらっしゃいました。カワイイ♪
ミュージカル 「マリー・アントワネット」
脚本・歌詞: ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲: シルヴェスター・リーヴァイ
演出:ロバート・ヨハンソン
翻訳・訳詞: 竜真知子
音楽監督: 甲斐正人
美術: 松井るみ
指揮: 塩田明弘
出演: 花總まり 昆夏美 古川雄大 吉原光夫 古川雄大
佐藤隆紀 駒田一 彩吹真央 坂元健児 彩乃かなみ ほか
2019年1月6日(日) 1:00pm 梅田芸術劇場メインホール 1階8列(5列目)下手
(上演時間: 3時間/休憩 25分)

何役かダブルキャストになっていますが、ワタシ的にはこの組合せ一択。
笹本玲奈さんも好きですが、初見なのでアントワネットは絶対花總まりさんで観たかったし、ソニンさんのマルグリットは何となく想像つくのでここは昆夏美さんでしょう。
そして、ルイ16世はぜひとも佐藤隆紀さんで。
ストーリーはほぼ史実に基づいていますが、貧しい生まれで地面を這いつくばるように生き、王族や貴族を憎むマルグリット・アルノーという架空の少女を登場させて、二人の「MA」と対比させる形。
冒頭、フェルゼン伯爵がアントワネット処刑の報せを受け、彼女の生涯と二人の出会いを歌で回想しますが、物語に入ってからは、ルイ16世とアントワネットの周りはオルレアン公のように王座を狙う者、国王夫妻を利用しようとする者、貴族を憎む民衆たちの気運の高まりなど、かなり厳しい状況に入ってからが描かれ、一幕の中心は有名な「首飾り事件」、そして二幕は革命の勃発から夫妻の処刑までという展開。
特に後半は「ベルサイユのばら」で描かれるような綺麗ごとは排除された厳しい内容で、アントワネットの結末ももちろんわかっているので、無防備なままどんどん追い詰められていくのを観ているのが辛くなるほど。
実際、ベルサイユ宮に革命の民衆が攻め入ってきた時は「マリー・アントワネットはフランスの女王なのですから」なんて啖呵を切る余裕などなく、あんなふうにうろたえ怯え、ただ子どもたちを守るのが精一杯だったことでしょう。
その子どもにしても、ルイ16世が処刑された後、母親から引き離されたルイ・シャルルがその後どんな悲惨な扱いを受けたか知っているだけに・・・。
国外逃亡を図ったヴァレンヌ事件も描かれていましたが、ワキが甘いとはいえ色んなことがうまく回らなかったのは、やはりそれが神様の思し召しだったのかという気持ちにもなりました。
裁判にかけられ、息子とのいわれなき疑いをかけられたマリー・アントワネットが、まるで能面のような表情で、「いいえ。答える価値もありません」と言い、つーっと涙を流しながら歌う場面では思わず落涙。マリーが最期まで毅然としているだけに一層切なさがつのりました。
マルグリットがアントワネットの異母妹という設定はフィクションにしてもいささか出来過ぎかなぁという気もしますが、処刑台に向かうアントワネットに膝をつくマルグリットのとても丁寧で綺麗な一礼と、その後の彼女のオルレアン公を告発する行動には拍手を贈りたいほどでした。
どうすれば変えられる この世界を
その答えを出すのは我ら
と、「どうすれば世界は」という客席への問いかけの歌で幕を下ろす物語。
革命で名をあげたジャコバン党のその後も知っている私たちは、何が正義で何が不義か、善と悪とは何か、歴史の大きなうねりの中で変わっていく価値観を改めて突きつけられた思いです。
花總まりさんのアントワネットは期待どおりすばらしかったです。
革命前の圧倒的な華やかさと美しさ。
捕えられ、髪も白くなった後の喪失感とそれでも失わない誇り。
「エリザベート」の時、まるで舞台の上で年を取っているようと感じたことアゲイン。とても緻密で繊細な演技なのでしょうけれどそれを感じさせないところが凄い。
ドレスの着こなしや裾さばきやヘアスタイルや所作や、もう完璧すぎて見とれます。
薔薇の花を散りばめた白いドレスがあんなに似合う人、他にいる?
昆夏美さんのマルグリットもとてもよかった。
あの小さな身体のどこにこれほどのパワーが?と思うくらい力強い歌唱で、群衆を率いるカリスマ性を持つマルグリット。アントワネットに敵意むき出しでまるで怒りのかたまりのよう。
でも捕らわれたアントワネットと過ごすうちに、少しずつ心が溶けて、気持ちが揺らぐのがきちんと見えました。
フェルゼン伯爵の古川雄大さんはとにかくカッコいい・・・のは知っていましたが、歌唱も以前に比べてとても安定しているように聞こえました。やっぱり「モーツァルト!」やった経験が活きているのかな。
アントワネットをとても愛しているけれど冷静で、どちらかといえばグイグイくる感じのアントワネットをなだめて自分は遠ざかるべきと考えている思慮深い人物像でした。
ルイ16世の佐藤隆紀さんは、本当にルイってこんな人だったんじゃないかなという雰囲気。
佐藤さんといえば「歌うまい人」という印象が強いですが、演技もきちんとできる人だと再認識しました。
革命が起こって真っ先にアントワネットを見捨てて海外へ逃げたポリニャック伯爵夫人と違って、最後までアントワネットのそばを離れずつくしたランバル公爵夫人はただでさえ印象いいのに、演じる彩乃かなみさんがまたとてもよくて。
たおやかで品があって、やさしく慎み深く・・・そんな彼女だからこそ悲惨な最期に胸が痛みます。
「マリー・アントワネット」は2006年初演ですが、梅田芸術劇場公演は2007年の2月。
当時、市村正親さん主演の「スウィニー・トッド」をシアターBARAVA!へ観に行った時、休演日か何かで「マリー・アントワネット」出演者ご一行様が観にいらしていて、幕間にフツーにロビーで談笑されていたのですが、その中にぴっかー

ダブルキャストだとやはりもう一方も観たくなってコマル のごくらく地獄度



